「パラダイス鎖国」に生きるミレニアル世代・Z世代。世界とは「ちょっとズレた」キャリア・人生観とは?

日本のミレニアル世代・Z世代を対象とした意識調査が発表された。
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Westend61 via Getty Images

「現在の勤務先を2年以内に辞める」と考えるミレニアル世代は約5割、Z世代は約6割。人生の目標は「高収入を得ること」。

 日本のミレニアル世代・Z世代を対象とした意識調査が5月末、発表された

 調査からは、終身雇用など伝統的な働き方とは一線を画するミレニアル世代・Z世代のキャリア観や、世界と比較して日本のミレニアル世代が持つ特有の人生観が明らかになった。

 調査の対象は、1983年〜1994年に生まれたミレニアル世代319人と、1995 年~2002 年生まれのZ世代301人。同じ調査は、日本だけではなく、世界42カ国(Z世代は10カ国)で一斉に行われた。

 「とりあえず3年」の価値観は終わり。1つの企業に長く勤める人はもはやマイノリティー

 調査からは、日本・世界ともに約5割のミレニアル世代が「2年以内の退職」を考えていることがわかった。Z世代に関してはこの割合が6割以上とさらに高かった。

 「現在の勤務先を2年以内に辞める」との回答

ミレニアル世代

日本:49%

世界:49%

Z世代

日本:64%

世界:61%

さらに、「今の勤務先に5年以上勤続する」と答えた日本のミレニアル世代は25%、Z世代に至ってはわずか10%だった。世界平均はそれぞれの世代で28%と19%のため、日本のミレニアル世代・Z世代が短期離職を考える傾向は、世界平均と比べても高いことがわかった。

 「辛くてもとりあえず3年は勤めよう」「3年以内に会社を辞める若手は根性がない」など、誰もが一度は聞いたことがあるであろう「とりあえず3年」の価値観も、ミレニアル世代・Z世代では、もはや消えつつあることが明らかだ。

 こうしたミレニアル世代・Z世代のキャリア観の背景には、どのような社会の変化があるのだろうか。今回の調査を行ったデロイト トーマツ コンサルティング執行役員・キャメル・ヤマモトさん、シニアマネジャー・澤田修一さんにお話を聞いた。

ヤマモトさんによると、①海外では主流である「特定の分野で専門性を極める働き方」が日本にも浸透し始めたこと ②労働人口減少の影響で転職市場が売り手であり、中途入社の障壁が以前と比べてかなり低くなったこと、などが主な要因として考えられるという。

 ヤマモトさんは、「専門性を武器にした働き方が増えたことで、実力が上がるに応じて、更なるスキルアップと収入アップを求めて転職する人が増えています」と話す。

 「パラダイス鎖国」に生きるミレニアル世代の「内向き」志向

 ミレニアル世代に「人生の目標」を問う項目では、日本のミレニアル世代が持つ特有の人生観が明らかになった。世界では「世界を旅する」との回答が最も多かったが、日本では「高収入を得ること」と答えた人が最も多かった。

 調査は「次のような目標がありますか」という問いに対して、7つの選択肢と「わからない」から当てはまるもの全てを選ぶという形式。日本のミレニアル世代の上位と最下位の回答は以下の通り。

日本のミレニアル世代の人生の目標トップ3

1. 高収入を得る 59%

2. 世界を旅する 36%

3. 子供/家庭を持つ 32%

ワースト 社会に影響力をもたらす 18%

 これを世界のミレニアル世代の結果と比較してみる。世界でのトップは、「世界を旅する」(57%)。また、「社会に影響力をもたらす」が46%で、日本の18%を大きく上回った。その他にも「幹部になる」「自分のビジネスを始める」と答えた割合は、日本より約10%ほど高い。

 こうした結果から、日本のミレニアル世代が世界の同世代に比べて、「海外への関心が低い」「経験にそれほど価値を置いていない」「出世欲が少ない」など、全体的に「内向き」傾向であることが読み取れる。

 澤田さんは、こうした内向き傾向について、「海外に目を向けたり、成長するために経験を積んだりしなくとも生き延びられる『日本社会の豊かさ・労働市場での競争の低さ』が背景にある」と指摘する。

 「中国・インド・ブラジルなどの新興国では、優秀な人材ほど、高収入の仕事を求めて海外に出て行きます。他方、彼らの受け皿である欧米諸国では、外国人から『仕事を奪われる』危機感がある。一方で、日本は裕福であると同時に、人口減少の影響もあり、海外に目を向けなくとも国内で好待遇の仕事に就くことができる状況があります」

ヤマモトさんによると、こんな日本の状況はパラダイス鎖国と表現されることもあるという。

しかし、「こうした状況も長くは続かないだろう」とヤマモトさんは指摘する。すでに、日本の大手企業は優秀な人材を求めて海外に進出し始めており、一部の企業・業界では「外国人との仕事の奪い合い」が起きているという。

「今後、こうした潮流はますます加速するでしょう。いままでのように『内向き』では、海外の優秀な人材に太刀打ちできない時代がやってきます」ヤマモトさんはこう述べ、ミレニアル世代の「内向き」志向が岐路に立つ時代が近くやってくることを示唆した。

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調査は、デロイト トーマツ グループが2018 年 12 月~2019 月 1 月に行ったもの。世界 42 カ国13,416人のミレニアル世代、10 カ国 3009人のZ世代が対象。調査は各世代の全体傾向を反映するため、調査対象者の男女比はほぼ1:1で、雇用状況や教育レベル・職位などは偏りのないよう調整されている。