アメリカの次期副大統領マイク・ペンス氏を支持する男性が12月、法廷審問にかけられる。警察によると、男性はニューヨーク市の軽食レストランにいた中国系アメリカ人の女性客2人を差別的呼称で呼んだほか、女性たちを擁護した男性客に催涙スプレーを浴びせた。
ニューヨークの地元ニュースメディア「ゴッサミスト」によると、フランク・カミーノ(56)被告は、傷害目的の暴行罪、暴行未遂、第2級傷害及び侮辱罪に問われており、12月19日法廷に出頭する予定だという。
カミーノ被告は11月20日未明、軽食レストランで逮捕された。「ゴッサミスト」によると、彼は中国系アメリカ女性2人のことを「クソアマ」「ビッチ」と呼び、「東京に帰れ」と叫んだという。さらに目撃者の証言によるとカミーノ被告は、「人種差別は許さない」と女性たちを擁護した男性に催涙スプレーを浴びせたという。「ゴッサミスト」はカミーノ被告にコメントを求めたが、返答はなかった。
被害にあった女性客の一人、サリー・ウェン・マオ(29)さんがカミーノ被告に対し、もう少し静かにしてくれるよう頼んだところ、カミーノ被告は怒りを露わにして騒ぎ出し、マオさんと友人に激しい暴言を浴びせ始めたという。
マオさんは中国系アメリカ人の詩人で、ニューヨーク市立大学でアジアン・アメリカン研究の講師を務める。マオさんによると、カミーノ被告はブロードウェイのヒットミュージカル「ハミルトン」の出演者が、次期副大統領のマイク・ペンス氏に対して「アメリカの価値観を守ってほしい」と表明したメッセージが「ムカつくし、人種差別だ」と、不満げに話していたという。
「ハミルトン」はアメリカ建国の父の1人、アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描いたミュージカルで、白人のキャストが少なく、ヒップホップの音楽とダンスで構成されている。2016年のトニー賞では作品賞など最多の11部門を受賞した人気ミュージカルだ。
昨晩、私はイーストビレッジのダイナーにいました。ある男性客が腹を立てている様子で、ハミルトンについて、大声で文句を言っていました。キャストがペンス氏に対してどれだけ不快で「人種差別的」だったかということを。
彼は私の真後ろにいて、ダイナーの支配人に話しかけていました。そして、いわゆるマイノリティの人たちについての不満を、大声でべらべらと話し始めました。
そのうち不快な人種差別発言を聞いているのが耐えられなくなり、「声を小さくしてもらえますか、食事中なんです」と彼に声をかけて、私たちは席を移りました。
報道によるとカミーノ被告は午前0時過ぎに「ロウアー・イーストサイド・コーヒーショップ」をひとりで訪れ、マオさんと友人の後ろの席に座った。2人はアジア系アメリカ人のイベントに参加した直後だった。
マオさんはハフィントンポストUS版の取材に「レストランにいたとき、友人と私はアメリカの外国人嫌悪や白人男性が抱えている怒りについて、それが自分たちに、私たち自らの人間性にどれだけ影響を与えるかということを、率直に話していました」と語った。
間違いなくトランプ支持者と思われるこの男性は攻撃的になり、私たちに対し「東京へ帰れ」と口にし、それから私たちを「クソアマ」「ビッチども」と呼びました。
マオさんは立ち上がり、男性の顔にコップの水を浴びせた。
「意地が悪く、悪意に満ちていて、でかい声で叫び続けるものだから、私たちも腹が立ったのです」と、マオさんは言った。「あんなふうに攻撃されるなんて我慢できませんでした。あのとき、私は本当に、毅然とした態度をとらないといけませんでした」
人種差別と女性嫌悪に我慢の限界を超え、私はコップの水を彼の顔に浴びせかけました。
すると彼はエスカレートしました。文句を言い、「お前らは逮捕されろ」と言って警察に電話しました。その間もずっと、私たちを侮辱する暴言を言い続けていました。
騒ぎに居合わせ、目撃談をコラムにまとめたニュースサイト「Mic.com」のマリー・ソーリス記者によると、カミーノ被告は彼女たちを逮捕すると脅し、警察に電話すると、だれもその場を離れられないようレストランの出入り口をふさいだ。
「私たちは、マオさんたちに自分たちと一緒に座るよう声をかけた。明らかに腹を立てて、危険な状態のこの男性が彼女たちに危害を加えるのではないかと、居合わせた人々みなが心底不安に思っていたからだ」と、ソーリス記者は記している。
カミーノ被告は差別的な言葉をわめき続けたので、マオさんは彼に2杯目の水を浴びせた。
間もなくして警察が到着し、当事者それぞれから証言をとった。警察官はマオさんに、あなたは何の罪にも問われないと告げ、彼女と友人の帰宅を許可した。ソーリス記者によると、警察官が店の外に出た後で、別の男性客がカミーノ被告に近づいていき、「人種差別は許さない」と言った。
ソーリス記者はコラムの中で、カミーノ被告の反応を以下のように記している。
この男は男性客の言葉をまともに取り合わなかった。「俺は人種差別なんかしてない」。彼はそう言い張った。「東京に帰れと言っただけだ」。
事態が悪化する予感がした...
しかしその瞬間に、さまざまなことが目まぐるしく起こった。叫び声が聞こえて振り向くと、男が立ち上がってポケットに手を入れ、催涙スプレーを取り出すのが見えた。男はそのスプレーを、女性らを擁護し自分の差別発言をとがめた男性客の目めがけて直に噴射した。マオさんは後になって、催涙スプレーで攻撃されたこの男性が病院で治療を受けたと知ったという。
マオさんはFacebookへの投稿の中でトランプ政権について触れ「このような人々の際限のない怒りと悪意は、先の選挙で誕生する政権が招いたものです」と書いた。
「こういったことは以前から存在していました」と、マオさんは付け加えた。「しかし今ではこの男性のような人の多くが、自分の怒りを周囲にぶつけたいと感じるようになっているのです。たとえそれが公共の場であっても」
【追記 2016/12/4 14:15】翻訳を一部修正しました。
ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。
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