AV女優の三上悠亜、K-POPに再挑戦。韓国での逆風にもめげず

アイドルグループからAV女優へと転身。三上悠亜は今、5人組K-POPユニット「HONEY POPCORN」を率いている。
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5人組K-POPユニット「HONEY POPCORN」
(C)kyun create.inc

人気AV女優の三上悠亜が、韓国の歌謡界に再挑戦する。

7月5日、三上が率いる5人組K-POPユニット「HONEY POPCORN」(ハニーポップコーン)が、2枚目のミニアルバムを韓国で発売する。昨年にAV女優3人でK-POPデビューを果たしたが、現地ではアダルトビデオへの拒否感などから思わぬ逆風にさらされ、ほぼ宣伝ができずに終わった。

今回はメンバーを入れ替え、AV出身以外も含む5人組で再スタート。K-POPの活動が「人生の挑戦。いろんな活動の中でもいちばん刺激になる」と話す三上に、6月下旬、東京でインタビューした。

 

アイドル時代「スキャンダルで干された」

三上は2009年、オーディションで名古屋発の国民的アイドルグループに加入した。清純派が売りのそのグループには「恋愛禁止」の掟があったが、三上は2013年に男性アイドルとの熱愛場面を写真週刊誌に掲載され、翌年にグループを「卒業」。2015年にAVデビューし、ファンを驚かせた。

ーーアイドルから、なぜAVに転身したんですか?

20歳の区切りでアイドルやめたんですけど、スキャンダルとかあったので、清純派みたいな感じで売るのも難しいと思ったときに、お話を頂いて。AV女優だったらそういうのをすべてさらけ出すから、逆に私に向いてるかなと思いました。

ーー週刊誌に書かれたことが契機になったんですか?

そうですね、辞めるまでの1年ぐらい、ずっと干されてました。

ーー干されてた?

ステージには立てたんですけど、公演と握手会と、レギュラーのラジオとか、誰でもそこに(所属して)いたら絶対にできる最低限の仕事だけ。そのちょうど前に、グラビアのナンバーワン的なものを頂いて、そこからグラビア雑誌に大々的に出られる予定だったんですけど、(スキャンダルで)一気に全部なくなりました。

ーー「アイドルだって恋愛したっていいじゃない」と思ったりしませんか?

思わないですね。グループは(保守的な観念の強い)名古屋でしたし、「私はだめなことしてる」と思いました。AVに行くときは、「もうちょっとアイドルとしてちゃんとやればよかったな」とすごく思ったので、「AVでは絶対に1番を取る」と決めて頑張りました。

 

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Jun Tsuboike

 

「元々好きで、チャンスを頂いた」

AVで人気を得た三上は、テレビドラマ出演やキャンペーンモデル、服飾ブランドのプロデュースや、AVタレントによる日本のアイドルユニット「恵比寿マスカッツ」など、多方面に活動の場を広げていった。所属事務所の社長によれば「マルチな活動はタレントとしての寿命を伸ばすため。本人がK-POP好きなので、持ちかけてみた」という。

ーーAVで人気絶頂なのに、全く知らない世界に行こうと思った理由はなんですか?

三上:もともとK-POPがすごく好きで聴いてただけなんですけど、事務所の方にお話を頂いて、断るのはすごくもったいないと思ったので、チャンスを頂いたと思って受けました。

ーーどんな曲を聴くんですか?

三上:きっかけは、アイドルデビュー前の中学生(の時)ですね。少女時代さんが日本で人気絶頂の頃に「Mステ」とか見て、K-POPの見方がすごく変わりました。日本のアーティストと全然違うじゃないですか。なんかすごく刺激を受けて。

私がいた国民的アイドルグループは、どちらかと言うとみんなが育てていくグループだと思うんですけど、K-POPは、ステージに対するプロ意識がすごくて、それでハマりました。

その後、Apinkさんに凄くハマっていた友達から「こういうの好きだと思うよ」と送られてきたMVを見てハマって、ライブに行くようになって。TWICEさんはファンクラブに入って、(2019年の東京ドーム公演にも)チケットを自分で取って行きました。

ーー他のアイドルと違うなと思ったのはどんなところですか?

やっぱり、みんな背が高くて、足が長くて、スタイルとかも細くて、ちょっと人間離れしたような見た目が、ステージの迫力がすごく出るんだなと思って。スタイルが良くないと韓国のアイドルにはなれないんだなぁと思ったのを、ものすごく覚えてます。

ーー韓国デビューまでに、どんなことが大変でしたか?

うーん、やっぱり本業としてK-POPやってるわけじゃないので。(結成からデビューまで)半年もなかったかもしれないですね。ボイストレーニングもダンスレッスンも、毎日できる状況ではなかったし、韓国語もままならない状態だったので、「時間が足りないな」とすごく思いました。自分としては「もっと完成度を高めて表に立ちたい」という気持ちはあったんですけど。

でも韓国語の歌は、ずっと好きで聴いたり、耳コピで聴いてカラオケで歌ったりしてたので、特に言葉の壁っていうのをそんなに感じなかったかもしれません。

 

「本業も大事だし、消せないから」

しかし、三上の韓国デビューを、2種類の反対が待ち受けていた。

2018年3月、デビュー曲「ビビデバビデブー」のMVがYouTubeで公開されると、日本のK-POPファンとみられる多数の批判コメントが日本語でついた。

韓国大統領府の公式ホームページには、韓国で禁止されているAVのタレントだからという理由で「ハニーポップコーンのデビュー反対」の請願が投稿され、最大で約5万2592人が同意した。

成人ビデオ俳優のアイドルデビューという洗礼を作り、他の成人ビデオ俳優たちのデビューが続けば、他の女性アイドル、歌手も性的なものとして扱われ、消費される恐れがあります。

現在、#MeToo運動で性犯罪被害者たちの勇気ある告白が相次ぎ、男尊女卑的な権力構造をなくすために努力し戦っている多くの女性たちと国民の時局にも反することです。(韓国大統領府国民請願「日本の成人ビデオ俳優の韓国アイドルデビューに反対します」) 

批判を受け、3月14日にソウルで 予定されていたショーケース(一般ファンも参加するキャンペーンイベント)は当日に中止され、メディア関係者のみが参加する発表会に変更された。地上波やケーブルテレビの音楽番組にも出演できなかった。

ーー韓国での反応は予想していましたか?

うーん、日本人がK-POPをやることに対して批判があるというのはもともと、何となく知ってたので、「あんまり最初から受け入れてもらえない。特に私たちの職業柄、絶対にそうなる」ってのは、どこかではわかってました。

ーーYouTubeのコメントは、K-POP好きな日本の女性からの批判が多かった印象ですね。

そうですね。やっぱり男性アーティストのファンは、好きなグループに少しでも近づかれるのが嫌じゃないですか?

ーー誘惑されるかもしれないとか?

そういうつもりは全くないんですけど(笑)、誤解を生んでしまうのは職業柄、仕方ないことだったと思うんです。私も小学生とか中学生の時に、好きな男の子にセクシーな女の子が(近づいて)きたら、多分友達とすごい悪口言うかもしれないので。

ーー「何でこんな目にあわなきゃいけないの」とか、「職業に貴賎はないんだ」とか、「どうして同じスタートラインに立てないんだ」とか、思ったりしませんでしたか?

いや、全然ないですね。そういう意見があるのが普通なのかなと思います。

ーー意外にサバサバしていますね。

やっぱり私も本業があるので。そっちも大事だし、むしろそちらでお仕事もお金も頂いているので、それを消すことはできないから。

 

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Jun Tsuboike

 

 

「自分との戦い、人生の挑戦」

散々なK-POPデビューだったが、韓国での芸能体験は、とても大きな刺激になったという。

ーーダンスのレッスンは韓国でも受けたそうですね?

はい、やっぱり練習量も全然違うし、基礎練とか筋トレもすごくきついので、今まで私が好きだったK-POPの人たちは、こういうことをいつもやって過ごしているんだなぁ、こんな大変なことをしないとステージでは輝けないのかなと思いました。

私にとっては、自分との戦いっていうか。人生の挑戦になったし、頑張らなくちゃいけないなって、韓国に行くとすごく身が引き締まります。

ーー韓国のファンから反応はあったりしました?

韓国語のコメントも、ハニーポップコーンやってからすごく増えて。私のTwitterとかInstagramとか、YouTubeのコメントとかでも韓国の方たちが「次の活動はいつになるんですか」と言ってくれたり。K-POPが今、英語圏でも流行っているのもあって、英語のコメントも増えましたね。活動の場所が増えたのかもしれないですね。

 

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Jun Tsuboike

 

「批判を恐れてやってたら、逆によくない」

今後もAVを本業としながら、K-POPの活動も続けていくと話す三上。反対に遭っても、あきらめないのはなぜか。

ーー前回のような反応があって、それでもあえて再挑戦する心境は?

もともとファーストだけでやめるつもりもなかったし、「何か言われたからやめよう」みたいな軽い気持ちでやってたわけでもないので。また批判されるかもしれないし、注目すらされないのかもしれないですけど、やってみようと。

ーー今回は新メンバーも3人加わって、全然別のグループになる感じですね。

「元気に頑張ってる子たち」って思ってもらいたいですね。K-POPが好きで一生懸命だということが、少しでも伝わればと思ってます。

ーーK-POPって血のにじむような練習をして叩き上げた練習生の戦いの場でもありますけど、三上さんの「ハニーポップコーン」へのスタンスは国民的アイドルグループっぽいですね。

うーん、そこ(練習)に全力をかけることができたら変わってくるのかもしれないですけど、今の状態だと、時間がないし。練習時間も、勉強する時間も、限られた条件の中で、ある時にやろうって思ってます。

ーー前回の教訓を踏まえて取り組んだことってありますか?

今回はそういうの(批判)を恐れてやってたら、逆によくないかなぁって思って。K-POP自体、私の好きなことだし趣味だったので、それに自分自身が疲れちゃうと、好きなことが嫌いなことになっちゃうかもしれない。K-POPは好きでいたいので、あまり気負わず楽しみながらやれたらいいなと思ってます。

今回は衣装にもMVにも、私たちの意見をすごく取り入れてもらいました。韓国語が喋れると、韓国の方の見方も絶対に変わると思うので、ドラマとかも韓国字幕をつけて見たりしてますね。

もともと(K-POPが)好きで、それが普通の生活の中にあって、(韓国語も)喋りたいという気持ちもあったので。「勉強しなきゃ」とか「やらなきゃ」というよりは、好きでやってるところが大きいかもしれないですね。

ーー韓国だとやっぱり、AVって言う職業は簡単に理解されにくいと思いますけど、そういう部分にはどう対応していこうと思いますか?

うーん、今の三上悠亜(の知名度)を作ったのは多分AV女優としての私だと思うから、今さら(AVを)やめても過去は残るものだし、AVを踏み台にK-POPアイドルになりたかったわけでもない。自分のスタイルはあんまり曲げたくないので、自分のやりたいことをやって、K-POPでも少しでも評価されたらいいなと思っています。

ーー今回のプロモーションでやってみたいことは?

前回ほとんどプロモーション活動できてないので、もうちょっと活動の場が増えたらいいなと思います。韓国の野外のライブも、何かやれたらいいなと思います。

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Jun Tsuboike

2枚目のミニアルバムのタイトルは「De-aeseohsta」。「勇気を持って自分を愛する」という呪文として韓国では広く使われる。発売日の7月5日には、前回果たせなかったソウルでのショーケースも予定されている。魔法の呪文で、多くのファンをとりこにできるだろうか。

(文中敬称略)