研究室の1コマ:顕微鏡とスマホ

良い解析方法を確立して、かけた時間に比例するデータが出るフェーズに入った学生さん。コンフォーカル顕微鏡でZスタックかけて1枚の画像を得るのに6分かかる。

良い解析方法を確立して、かけた時間に比例するデータが出るフェーズに入った学生さん。コンフォーカル顕微鏡でZスタックかけて1枚の画像を得るのに6分かかる。それを何十枚もひたすら繰り返すとのこと。ちょうど毎週の進捗状況報告ミーティングでそんな話になり……。

私:ところで、その6分の間、スマホとか見てないよね?ww

学生さん:(ギクッ)

助教さん:あれ? 電話かけたら繋がるよね……?ww

学生さん:あ、いや、そんなには……(ごにょごにょ)

私:どこかの大学で、授業中にスマホをいじらなかったらポイントがたまる、というアプリを利用しているって聞いたことがあるけど……。

講師さん:共通機器室に行くときにスマホを大隅先生のところに置いていって、触らなかったご褒美に先生からコーヒーチケット出すっていうのはどう?

学生さん;それは嬉しいですが(笑)……いえ、そんなことをしなくても、大丈夫ですっ!

(あくまでブログネタとお考え下さいww)

私が大学院生の頃は、まだ顕微鏡撮影はディジタル化されていませんでした。暗室で蛍光顕微鏡のフィルム撮影をするのに、何種類か露光時間を変えて、長いときには10分以上、息を潜めていたことを思い出します。その間、暗い中でいろいろなことを考えました。うまく撮影できているかな、このデータの次には何を撮ろうかな……など。

19世紀の解剖学者のカハールは、生涯に260本もの論文(ほとんど単著)を書いた方ですが、当時は写真として撮影するのではなく、標本を単眼の光学顕微鏡で見ながらスケッチしたものを図として添えていました。カハールは美しい顕微鏡スケッチを何枚も描きながら、神経組織の成り立ちに思いを馳せていたことでしょう。そのときに考えたことが、そのまま論文のテキストにもなったかもしれません。

スマホは便利な道具です。私の生活は、もはやスマホ無しでは成り立ちません。スケジュール確認もすぐできないし、乗換えを調べることもできません。地図アプリを便りに訪問先までアクセスするのは日常的。Googleさんに問いかければ何でも教えてくれるし、Facebookにアクセスすれば、友人の今日の様子を垣間見ることができます。

でもきっと、スマホが利用できない、利用しない時間も大事にしなければならないのでしょうね。一日は誰にとっても24時間しかないので。

(2015年 03月 27日「大隅典子の仙台通信」より転載)