アトピー性皮膚炎の患者が、汗をかいたときにかゆみなどのアレルギー反応を引き起こすのは、カビ由来のたんぱく質が汗によって皮膚に溶け込むことが原因であることを、広島大学の秀道広教授(皮膚科学)らの研究グループが突き止め、6日発表した。共同通信などが伝えた。より効果的な治療方法やスキンケア商品の開発につながると期待される。
研究結果は5月31日、米医学専門誌電子版に掲載された。記事などによると、このたんぱく質は「MGL-1304」。人の皮膚に広く付着している「マラセチアグロボーザ」と呼ばれるカビの一種によって作り出され、たんぱく質が汗に溶け込んで体内に入ることでアレルギー反応を起こす。中国新聞が詳しいメカニズムを次のように報じている。
カビは「マラセチアグロボーザ」と呼ばれ、これに含まれるタンパク質が汗に溶け出して、皮膚に浸透する。体内に侵入した異物に反応するタンパク質「IgE」と結合した肥満細胞が、カビのタンパク質と結びつくと、ヒスタミンを放出。はれやかゆみなどが起こる。
(中国新聞 2013/6/7)
国内には約35万人のアトピー性皮膚炎の患者いるとされている(2008年、厚生労働省調べ)。
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返すかゆみを伴う湿疹を特徴とする病気。症状を悪化させる原因としては、ダニやほこり、気候、食事、体質、ストレスなど様々なものがあり、年齢や体質によって異なる。
アトピー性皮膚炎の患者のうち約8割が、汗によって症状を悪化させているとされる。これまでも最も重要な悪化原因として汗は着目されてきたが、共同通信によると、具体的な物質が特定されたのは初めてという。