今回の #MeToo やセクハラ事件について、あなたに知ってもらいたいこと。

あなたは、もしかしたら「セクハラなんてひどいなぁ、でも俺(私)とは関係ないや」と思っているかもしれない。
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あなたに知ってもらいたいことがある。

今話題になっている、#MeTooやはあちゅう氏をはじめとするセクハラの件についてだ。

今回の件に関して、何よりまずは、実名を出して名乗り出ている人の勇気に対して、女性として本当に感謝したい。そして、メディアが今回のような内容を取り上げるようになったことに対しても、少しずつ日本社会が前進しているポジティブな証拠だと感じている。

ただ、これらの記事を読んで岸氏をはじめとするセクハラの加害者を批判するだけではなく、同時に、あなた自身のことについても振り返ってほしいと思った。

あなたは、もしかしたら「セクハラなんてひどいなぁ、でも俺(私)とは関係ないや」と思っているかもしれない。でも、それは本当だろうか。あなたは、他人を傷つけないで生活してきたと胸を張って言えるだろうか。知らない間に、気づかない間に多くの人を傷つけてしまってきた可能性はないだろうか。

そんな可能性があるかもしれない、ということを知って欲しいのだ。

セクハラはいじめと一緒だ。もちろん当事者が一番の悪だが、周りにいて、何も言わなかったり、止めなかったりするのも、悪だ。

日本という同一性を大切にする社会で、周りからのプレッシャーで、「本当はこれって言っちゃいけないことかも」と思いながらも、「皆が笑っているからいいか」「ここで指摘したら空気読めないよな」と思って、そういう行為や発言をした人に対しても、笑って流してしまったりしたことはないだろうか。

私はとてもラッキーなことに、セックスを上司やクライアントに強要されてきたり、体を触られたりしたことは、まだない。でも、これまでの職場で色んな発言を聞いてきた。「合コンの子たちは余裕だった。簡単にホームランを打てた(セックスできた)」という性的発言から、「可愛いから、とにかくお客さんの隣に座りなさい」「可愛い子は受付をやればいい」「可愛い子が飲み会にいると雰囲気違うよね」と容姿についてのコメントまで。

これは男性だけではない。女性もこんな発言をすることがある。どのコメントも職場に行けなくなったりするほどのものではないかもしれない。でも、そういう言葉を聞くたびに、嫌になって、悲しい気持ちになる。

その度に思う。女性は物ではない。アクセサリーでもない。構造的に男性に権力がまだまだあって、権力のない女性は、男性に物として扱われてしまうし、それに対して意見を言うこともできない。声を挙げたらどうなるだろうか。きっと面倒臭いやつ、として扱われる。

そして、これは常に男性が加害者で女性が被害者、という構造だけではない。パワーバランスによって、男性も被害者になりうる。

だから、男性も、女性も、自分の言動を振り返って見てほしいのだ。程度は様々だけれど、人を物として扱うような発言をしたことはないだろうか。

そして「あの人は仕事ができるから、、、」「あの人は世間的に有名な人だから、、、」「あの人は上司・クライアントだから、、、」といって、隣で傷ついている人を放って置いたりしなかったか。

仕事ができるからといって、パワーや権力があるからといって、人間として倫理観があるとは限らない。人を傷つけないとも限らない。頭が良い、権力がある、仕事ができる、お金持ち、だから正しいという理論は間違っている。この構造が変わらない限り、社会は変わらない。

私は被害者であるだけでなく、同時に加害者でもある。なぜなら、女性を物として扱うコメントなどを聞いて、何も行動しなかったからだ。世間的に賢いと言われている人だったり、有名な人だったり、もちろん上司やクライアントに対して、「その発言は間違っている、職場(プロフェッショナルな場)で話すべきことではない」ということができなかった。相手の顔色を伺って、何も言えずにヘラヘラと笑ってしまうことばかりだ。「こいつは空気が読めない」「こいつは一緒に働くと面倒臭い」そう思われるのが怖くて何も言えなかった。

だからこそ、今回の件を通して、身の回りに傷ついている人がたくさんいること、そして自分も傷つけてしまった可能性があること、に気づいて欲しい。これは決して電通だけの話でもないし、有名人だけの話でもない。有名な人であれば声をあげると、ニュースに取り上げられるかもしれない。でもあなたの周り・隣にいる人も声をあげられていないけど、ニュースにはならないけど、傷ついている人がいるのだ。

2016年の厚労省の調査によると、実に53.9%の人が「職場において容姿・身体的特徴・年齢について話題にされた」と答えており、「不必要に職場で身体を触られた」女性は40.1%にもなる。「卑猥な冗談や性生活など性的な話や質問をされた」と答えたのは38.2%、「性的関係を求められた・迫られた」人は16.8%。これは女性だけの数字で、男性でも卑猥な話や性的な話をされたくない人はいる。そうすると、この人数は倍の数に膨らむだろう。

もし、自分も他の人を傷つけてしまったことがあるかもしれないと思った人や、周りでセクハラの言動を見聞きしても無視してきたと思った人が、これからすぐにできることがある。それは、今回の一連の件について、もっともっといろんな人に話して、情報をシェアすることだ。

アメリカで起こっている#MeTooという現象が、日本でも大きな現象になりえるのだろうか。アメリカはジェンダーギャップ指数も49位と、114位の日本に比べて職場における女性の活躍も進んでいるし、企業のリーダーとしての女性や女性の政治家も多い。ジェンダーだけでなく、人種等含めたダイバーシティに理解のある人・企業も多い。そんな環境が整っている国と同じ風を吹かせることはできるのだろうか。そして、単なるモーメントではなく、ムーブメントに変わることは可能なのだろうか。

#MeTooが大きな動きになるためには、2つのポイントがあるように思う。一つは有名で声をあげられる人がどれくらい声を挙げるか。もう一つはどれだけ個々人がこの件について話をできるか、だ。

SNSの力を借りて#MeTooのムーブメントは始まった。ただ、SNSは見たい情報だけしか見れない。そして自分の存在している知人・友人や、自分が憧れている人の輪によってトレンドが異なる。つまり、はあちゅうさんを知らない人、岸さんを知らない人、セクハラ問題に興味がないと人、もっと言えばセクハラ問題に対して耳を塞ぎたい人には、この情報は入ってこない。逆に、この事件について批判的なコメントしか入ってこないかもしれない。

だからこそ、いろんな業界における声を持っている人が#MeTooを発信していくこと(アメリカでは女優・議員・実業家など多くの人が実名を出して訴えている)が大切なのだ。そして、それは女性だけが名乗り出るだけでは意味がない。男性で影響力のある人が、名乗りでた勇気ある女性に対して、声をあげてサポートをする必要がある。

そして、有名人や影響力のある人だけでなく、一般人の私たち個人個人が、この問題をシェアして、問題意識を共有し会うことで、セクハラ問題が横行していることを「当たり前」の問題意識として認識させることが重要だ。

だからこそ、今回は見て見ぬフリをするのではなく、この問題に直面して欲しい。

自分の過ちも振り返りながら、この件に対してもっと話し合ってほしい。

そして、間違っていることは間違っていると声をあげてほしい。

(2017年12月20日「LEAN IN TOKYO」より転載)