11月13日の午後11時過ぎ、アレックス・マロイ氏は自宅に帰るためにニューヨークのマンハッタンでタクシーを拾った。
タクシーに乗り込むと、運転手が「ありがとう」と話しかけてきた。一瞬マロイ氏は何を感謝されているのかわからなかった。
23歳のマロイ氏とほぼ同じくらいの年齢の運転手は、この2時間でマロイ氏が最初の客だったので感謝したと説明した。運転手はイスラム教徒だったため、パリ同時多発テロの後に人々が彼のタクシーを避けていると感じていた。
マロイ氏は運転手に同情し、コロンバスサークルからワシントンハイツまでの25分の間、ずっと彼を励まし続けた。この出来事にとても心を動かされたため、運転手に名前を訊ねるのを忘れてしまった、とマロイ氏は話している。
タクシーを降りた後、マロイ氏はイスラム恐怖症に反対するメッセージを伝えたいと思った。そこで、その夜の出来事をTwitterとFacebookでシェアすることにした。
今夜、家に帰る時に乗ったタクシーの中で、とても悲しい経験をしました。宗教で全てを判断するのは間違っています。
「アパートに着くまで彼はずっと泣いていました。私も一緒に泣きました。彼は『私の神アラーは、こんなことをお許しにならない! イスラム教徒というだけで、人は私をテロリストのように思っている。だけど私はテロリストじゃない。私が怖いから、誰も私の運転する車に乗りたくないんだ。仕事をすることもできない』と言い続けていました」とマロイ氏は書いている。
イスラム教徒を全て悪だと非難する声に反対するため、マロイ氏は続けて次のような文章を綴った。
「イスラム教徒を問題視するのをやめましょう。彼らは問題を起こす人ではありません。不当な苦しみを受けていると感じていて、日々の暮らしに怯えています。私たちと彼らはきょうだいです。見た目は違っても同じ人間です。尊敬や配慮を受けるに値する存在なのです。彼らは私たちの保護を必要としています。この美しい人たちを敵視するのはやめましょう。彼らは敵ではないのですから」
メッセージが25回もリツイートされていることに満足し、マロイ氏は眠りについた。
彼は出来るだけ多くの人にメッセージが届いて欲しいと願っていたが、目覚めた彼を待っていたのは予想をはるかに上回るリツイートやリプライだった。14日の午後4時30分時点でリツイート数は約3万回にも達した。
「とても感動的で誠実なリプライでした。イスラム教徒からだけではなくありとあらゆる人がリプライしてくれました。パリの事件の後というタイミングに、アメリカだけでなく世界中の人が私のメッセージ同意し、一つにまとまって『これはとても大切な問題だ』と言ってくれた。涙がこぼれました」
おはよう。うわっ...メンションがすごいことになってる。でもみんなからの前向きなリプライでとても幸せな気分だ。すごい!
私はイスラム教徒です。パリのために祈りを捧げています — 2015年11月14日
少数ではあるが、否定的なリプライもあった。その中には、本当はタクシーに乗らなかったんじゃないのかと疑うメッセージもある。マロイ氏は、こういったメッセージはブロックするようにしている。
「他の人間を無視するメッセージを読むと、本当な嫌な気分になります。そんな悲しいメッセージは見たくありません」
マロイ氏は4年前にフロリダ州セントピーターズバーグからニューヨークシティに引っ越してきた。現在、マンハッタンのローワーイーストサイドでヘアサロンを経営している。
彼はクリスチャンの家庭で育ち、プロテスタント系の私立小学校に通ったが、特定の宗教には属していないという。
「大きな力の存在は信じています。他の人たちと共に生きるために、私は自分自身の道徳的価値観を判断の基準にしています」と、マロイ氏は説明してくれた。
この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。
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