世界記憶遺産にシベリア抑留記録など登録 南京大虐殺の文書も

日中政府間で意見の対立が表面化していた。
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歴史的価値の高い文書や絵画などを対象にしたユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界記憶遺産」の新規登録分が10月10日、発表され、日本から「東寺百合文書」と、「舞鶴への生還―1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録―」が登録されることになった。

また、中国が申請していた、日中戦争時の「南京大虐殺に関する文書」も含まれたが、旧日本軍の従軍慰安婦に関する資料は入らなかった。韓国からは、朝鮮王朝(李朝)時代の儒教に関する木版のほか、KBSテレビが制作した、南北朝鮮の離散家族を巡るテレビ番組が入った。

東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)は、京都の東寺に残された、8世紀から18世紀までの古文書約2万5000通。加賀藩の第5代藩主・前田綱紀が寄贈した100個の桐箱に収められていたため保存状態がよく、史料的価値も高いため1997年に国宝に指定された。

「舞鶴への生還」は、第2次世界大戦で日本国外に取り残された660万人以上と言われる軍人や一般人の引き揚げ事業で、京都・舞鶴港に引き上げたシベリア抑留者らの記録約570点。戦争による過酷な歴史を扱っているが、国内選考では「舞鶴市と姉妹都市であるロシア・ナホトカ市の理解と協力があるなど、広い視点から世界的な重要性が説明されている」と評価された

一方、南京大虐殺の登録を巡っては、日中政府間で対立が表面化していた。

時事ドットコムによると、日本政府は10日、川村泰久外務報道官の談話を発表し、「中立・公平であるべき国際機関として問題であり、極めて遺憾だ」と強く非難した。

川村報道官は談話で、(1)南京事件をめぐっては日中間で見解の相違がある(2)中国の一方的主張に基づく申請で、資料の真正性に問題がある-と指摘。その上で、「重要なユネスコの事業が政治利用されることがないよう、本件事業の制度改革を求めていく」と表明した。

時事ドットコム:南京登録「中立性欠く」=記憶遺産事業の見直し要求-日本政府より 2015/10/10 08:45)

南京大虐殺を巡っては、中国側が「30万人以上が日本軍によって殺害された」とするのに対し、日本側が「諸説あり人数を認定するのは困難」としていた。2014年6月10日に中国外交部の華春瑩報道官が「歴史を銘記し、平和を惜しみ、人類の尊厳を守るためだ」と登録の方針を明らかにして以来、日本政府が取り下げを求めていたが、中国は拒否していた。菅義偉官房長官は10月2日の記者会見で、「日中間の過去の一時期における負の遺産をいたずらに強調しようとする」と反対の方針を改めて表明していた。