日本ユネスコ国内委員会は6月12日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界記憶遺産」の2015年登録を目指す国内候補として、「東寺百合文書(とうじひゃくごうもんじょ)」(申請・政府)と「舞鶴への生還―1945~1956シベリア抑留等日本人の本国への引き揚げの記録―」(同・京都府舞鶴市)を推薦すると発表した。6月中にユネスコに通知する。登録の可否は2015年5月〜8月に審議されるという。朝日新聞デジタルなどが報じた。
選考から漏れたのは、「知覧からの手紙 知覧特攻遺書」(申請・鹿児島県南九州市)と「全国水平社創立宣言と関係資料」(同・奈良人権文化財団など)。
ユネスコには日本から計4件が登録申請をしたが、1国の審査上限が2件のため、国内委が絞り込み作業を進めていた。5月に歴史や文書保存の専門家らによる選考委員会を開催し、審査対象とする2件を選定。ただ、選考委のメンバーが東寺百合文書を政府申請案件とする作業にかかわっていたため、「選定の客観性、公平性を確保するため」として、選考委の判断とは関係なく、12日に国内委の文化活動小委員会で改めて審議し、2件を決めた。
(朝日新聞デジタル『記憶遺産候補に「東寺百合文書」「舞鶴引き揚げ記録」』より 2014/06/12 21:54)
世界記憶遺産の審査は2年に1回のみ。今回の国内選考で「東寺百合文書」と「舞鶴への生還」の2件が選ばれた理由を毎日新聞が次のように報じている。
東寺百合文書(申請者・政府)は1000年以上にわたって東寺に伝わる約2万5000点の文書で、仏教史や寺院史の研究上、貴重な史料。足利義満の直筆や織田信長の印が入った文書もある。保存性や日本文化の優れた点を示すことが評価された。「舞鶴への生還」(同・京都府舞鶴市)は抑留者がシラカバの皮につづった「白樺日誌」など570点。市文化財に指定され、世界的な重要性などが高評価を受けた。
(毎日新聞『世界記憶遺産:候補に「東寺百合文書」「抑留者引き揚げ」』より 2014/06/12 23:11)
知覧特攻平和会館が収蔵する特攻隊員の手紙や日記など333点を申請した「知覧からの手紙 知覧特攻遺書」は、「日本からの視点のみが説明されており、世界的な重要性の説明が望まれる」と指摘されたという。
ユネスコ国内委員会は、「知覧からの手紙 知覧特攻遺書」の評価について、「日本からの視点のみが説明されており、より多様な視点から世界的な重要性を説明することが望まれる」「特攻は沖縄戦の時期だけでないことも踏まえ、『唯一性』『完全性』の説明を補強することが望まれる」などと指摘した。
(朝日新聞デジタル『特攻隊員遺書「日本の視点のみ」 記憶遺産候補ならず』より 2014/06/13 00:05)
また、「全国水平社創立宣言」は、出版物のため希少性の説明を補強する必要があるとされた。
世界記憶遺産は、歴史的な絵画や文書などの保存と振興を目的にユネスコが1992年から実施している。過去に、フランスの「人権宣言」や、「現存する最古のコーラン」(ウズベキスタン)、「清朝時代の満州語による機密文書」(中国)などが登録されている。日本では、「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」(2011年登録、福岡県田川市など申請)、「御堂関白記」(2013年登録、政府申請)、「慶長遣欧使節関係資料」(2013年登録、政府申請)の3件が登録されている。
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