アメリカ・オハイオ州クリーブランドで行われている共和党全国大会で、大統領候補に指名された実業家のドナルド・トランプ氏の夫人、メラニア氏のスピーチが、大統領夫人のミシェル・オバマ氏が2008年のスピーチを盗用したのではないかという疑惑が波紋を広げている。
トランプ陣営の責任者や支持者たちが、盗用疑惑を解消しようと矛盾する説明を繰り返したことで、状況はさらに悪化している。
彼らが用意した「言い訳」は次のようなものだ。
1. 盗作はないと言い張る。
選対責任者のポール・マナフォート氏は、メラニア氏とミシェル氏のスピーチが酷似しているという該当部分について、「盗用はない」と公式に否定した。しかし、2人のスピーチシーンを同時に再生するとほぼ一致する。
「ミシェル氏のスピーチを盗用したものではない。これらの言葉はよく使われる一般的な言葉だし、メラニアが自分の家族とかそういったものを大切にする意味を言い表したものだ」と、マナフォート氏は19日朝、CNNに語った。「彼女がミシェル・オバマの言葉を盗用してるなんてバカバカしい」
2. メラニア氏のミスにする。
MSNBCの朝のトーク番組「モーニング・ジョー」によると、マナフォート氏に近い選対幹部は、メラニア氏を切り捨てたという。「記者のレポートによると、マナフォート氏本人、またはマナフォート氏に近い選対幹部たちが、ミシェル・オバマの言葉をスピーチに加えたのはメラニア・トランプ自身だと主張しているそうです」
3.ヒラリー・クリントン氏に責任をなすりつける。
「というかこれは、ヒラリー・クリントンがいかにして、自分を脅かしそうな存在になった女性を貶め、こき下ろそうとするかという、またとない例なんです」と、マナフォート氏は19日朝、CNNに語った。
4.メラニア氏は英語のネイティブスピーカーではない。
トランプの選対本部長を務めていたコーリー・ルワンドウスキ氏は19日朝、CNNで「メラニアは英語のネイティブスピーカーではない」と語った。「思い出してください、スロベニア出身のメラニア・トランプは4カ国語を話す、とても頭の良い人です。でも、英語は彼女の母語ではありません」と、ルワンドウスキ氏は言った。「彼女はスピーチ原稿の確認に他の人たちの手を借りました。彼女のスピーチも、党大会で発表される他のスピーチと同じチェックのプロセスを経ています」
5.ミシェル・オバマ夫人が英語を発明した訳ではない。
保守派の草の根運動団体「ティーパーティ」の活動家で、トランプ陣営のカタリーナ・ピアソン報道官も盗用を否定した。ピアソン氏は政治ニュースサイト「The Hill」に、「共和党には価値観があります。勤勉、決意、家族、奉仕と尊重。それがメラニア・トランプそのものなのです。メラニアは普遍的なことを言ったに過ぎません。ミシェル・オバマが英語を発明したなんて考えたら滑稽ですよね」と語った。
6. メラニア氏は、みんなが知っていると思われる言葉を使ってコミュニケーションを取ろうとした。
ピアソン氏はスカイニュースに、「メラニアはアメリカ人なら聞いたことがあるフレーズを使ってコミュニケーションを撮りたかったのだ」と話した。
7.スピーチの大部分はオリジナルだから、盗用なんて取るに足らない。
ニュージャージー州のクリス・クリスティー知事はスピーチ全体が盗作ではなかったという理由で、盗作疑惑を退けた。「スピーチの93パーセントはミシェル・オバマ夫人のスピーチと全く違うものです」と、クリスティー知事は語った。MSNBCのニュース番組「トゥデイ」で語った。「メラニア氏とミシェル氏は、普遍的な考えを表現したのです」
8.ミシェル氏への賛辞だった。
共和党のジョー・ウィルソン議員はハフポストUS版に、ミシェル氏は喜ぶべきだろうと言った。「私は、他のファーストレディ、そしてファーストレディとなる人物の言葉を引用するのは良いことだと思っています。出所を明らかにしないとしても、良いことなのです。きっとこれは、賛辞のつもりだったんです」
9.ライターたちが整理整頓していなかったために起きた事故だった。
トランプ陣営のスーパーPAC(政治資金管理団体)でストラテジストのアレックス・カステジャーノ氏は、スピーチ執筆のとき整理整頓しておくのは大変で、おそらくその辺に散らかりっぱなしになっていた原稿が間違ってスピーチに混じり込んでしまったのだろうと語った。
メモがその辺に散らばっている。2、3日もするとそれがどこから来たのか誰も分からない
気がついたらメモの内容はスピーチの中に含まれている。書き直しをするべきだったが、トランプ陣営は全く余裕がなかった。
10.トランプ陣営による入念な計画の一部だった。
ミシシッピ州のヘイリー・バーバー前知事は19日、CNNで「トランプ陣営がわざと盗用し、論争を巻き起こそうと計画し、メラニア氏のメッセージにより注意を引きつけようとしたのではないか」と語った。「私が興味深いと思うのは、陣営が本当にこれを狙ったのかと言う点です。メラニア氏とミシェル氏のスピーチが酷似した部分は、ミシェル氏が"バラク・オバマ大統領がきっと実現するだろう"と望んでいたのに、オバマ大統領が実現できなかった部分なのです」と、バーバー氏は語った。
11. で、結局……。
トランプ陣営のスピーチライター、メレディス・マクアイバー氏が20日、声明で、ミシェル氏の演説から盗用したことを事実上認め、謝罪した。原稿を作成している過程で、メラニア氏が電話で参考例としてミシェル氏のスピーチを読み上げ、マクアイバー氏が書き留めたものが最終稿まで残ってしまったという。
編注:ドナルド・トランプ氏は世界に16億人いるイスラム教徒をアメリカから締め出すと繰り返し発言してきた、嘘ばかりつき、極度に外国人を嫌い、人種差別主義者、ミソジニスト(女性蔑視の人たち)、バーサ―(オバマ大統領の出生地はアメリカではないと主張する人たち)として知られる人物である。
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