北方領土を日本に引き渡すことに反対するロシア人たちの集会が1月20日、モスクワ中心部で開かれた。
主催者たちは北方領土はロシア領だとして、主権を訴える日本に反発するだけでなく、交渉に臨むプーチン大統領自体も批判している。
「我々のクリル(北方領土のロシア側呼称)は渡さない!」「ロシアを切り売りするのはもうたくさんだ!」「クリルから手を引け!」。この日午後、モスクワの日本大使館近くにある広場に集まった多数の人々が気勢を上げた。
主催したのは、セルゲイ・ウダリツォフ氏(41)が率いる政治団体「左翼戦線」など。ロシアがソ連のような社会主義に戻ることを目指しており、愛国主義的でもある。
ウダリツォフ氏はTwitterで集会の様子を投稿、「集会の参加者は、日本との交渉をストップし、クリルの主権問題について終止符を打つことを要求した」と記した。
一方でウダリツォフ氏は、こうも述べた。
「日本人よ、クリルのことは忘れろ。その代わり、プーチンと統一ロシア(プーチン政権の与党)を引き渡そう」
ウダリツォフ氏はプーチン政権に反対する勢力として知られる。2012年、プーチン氏が大統領復帰を決める選挙の直前には「反プーチン集会」を企画するなどした。集会は北方領土問題を利用して、プーチン政権を批判する意図もあったとみられる。
モスクワでは22日、ロシアを訪問する安倍晋三首相とプーチン大統領の間で会談が予定されており、平和条約交渉について協議する。
北方領土をめぐっては、日本は第2次世界大戦時にソ連に不法占拠されたとし、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の4島一括返還を求めてきた。
ところが安倍首相は2018年11月、色丹、歯舞の引き渡しだけが記載されている日ソ共同宣言(1956年)を基礎に交渉を加速化させることでプーチン大統領と合意した。交渉方針を、事実上の2島先行返還とすることにかじを切った。
プーチン大統領も共同宣言が交渉の出発点としているが、色丹、歯舞の引き渡しについて「どちらの国の主権のもとに引き渡すかなどは書かれていない」などと独自の解釈を主張している。
交渉の実務担当者であるラブロフ外相も「日本がまず、第2次世界大戦の結果、合法的にソ連に移り、それをロシアが継承したことを認めることが不可欠だ」などとしており、交渉の行方はなお不透明だ。