疑いなく、世界のトップクラスの人たちの毎日は極めて忙しい。
特にビジネスや、社会、経済、時代の最先端を走りながら、多くの価値を生み出し続けるリーダーたちなら尚更だ。
彼らに課されるのは単に成果を生み出すことだけではない。常に、人々の期待を上回る驚きと感動、そしてイノベーションをも成果と共に提供し続けなければならない。
限られた時間の中で、最大のパフォーマンスを打ち出す。
このために出来ることは少なくない。
自身に良質のインプットを継続的に課す。不確実性や先の見通せない中でリスクを取れる分析力と勇気を持つ。逆境に耐え得る力、そして窮地においても人々にビジョンを示し、先導出来る強さを身に着ける―。
精神力だけでない、彼らには肉体的な強靭さも求められる。
間違いなく、彼らは「超人」である。
少なくとも、凡人の私達には「超人」に見える。
私はそんな超人たちにお会いする度に伺ってみた。
「あなたたちを超人たらしめているものは何なのか」、と。
彼らの答えは一つだった。
それは、エクササイズやトレーニング、ましてや、成功願望や、地位や名誉、権威欲でも金の力でもない。
「瞑想」、である。
瞑想といえば、日本の経営者に絶大な影響を与えた思想家で実業家の中村天風、ソニー創業者の一人、井深大や、松下幸之助が生活の一部として取り入れていたことでも有名だ。
日本において、「瞑想」は仏教の思想を強く受けている。
仏教においての瞑想は、「止観」とも呼ばれ、文字通り「止」は心を静めること、そして、「観」は観察することを指す。
心の乱れを整えることによって煩悩から解放され、物や心を観察し、その本質を見極める智慧を磨く。
この作業が瞑想と説かれる。
また、いまや海外のトップリーダーにおいても瞑想を生活に取り入れる者は少なくない。
今は亡きスティーブ・ジョブズも毎朝瞑想をし、心を整え、アイディアの源にしていたという。また、世界で最も影響力のある100人の一人に選ばれたアリアナ・ハフィントンもサードメトリック(The Third Metric)の中で瞑想の重要性について触れている。
個人だけではない。いまやGoogleやIntelなどの大手企業などでも研修として採用されているほどだ。
何故いま「瞑想」なのか。
そもそも瞑想には集中力を高めたり、記憶力を向上させたり、頭が整理されたりする効果があると指摘されている。
情報過多、複雑化する社会の中で、物事の解決処理を担うトップリーダーたちにとって、論理的思考の限界を感じることもままあるだろう。
その先にある見地・境地が「直感」であり、その内なる声を引き出すのが「瞑想」であるのではないか。
しかし、瞑想というと、つい難しいものと構えてしまう。
だが、彼らは皆、瞑想をもっと気楽に考えればいいという。
実際、先人たちの瞑想への考え方・取り組み方も異なる。
先に挙げた松下幸之助は、毎日2回以上、万物を存在せしめる宇宙根源の力への感謝をこめて瞑想していたという。
中村天風は、瞑想を「何も考えない、何も思っていない」心の状態を感得する方法だといい、黒い丸い点やローソクの灯を凝視し、集中力を得ることで瞑想に入るコツを説いている。
一方、この瞑想を科学的に見ていたのは、ソニー創業者の井深大だ。後に瞑想の研究所も立ち上げている。人々の潜在意識がどう成功につながるのかを研究させていたという。
すなわち、瞑想は一様ではない。
場所も時間も決めなくていい。座禅を組む必要もない、座ることさえしなくてもいい。あなたの好きな時に、好きなようにやればいいとトップリーダーたちはいう。瞑想時間も思うまま、感じるに任せてやればいいと。だから、3分でも1分でもいい。ただ、呼吸を整えてみればいいのだと。呼吸に意識を向けることで、緊張が解け、心の乱れが整っていくのがわかるから、という。
時に、瞑想は万能なパワーチャージのように語られるが、彼らはそれも違うという。
瞑想は、この現代社会を生きていく上で、誰にでも簡単にできる「精神」と「身体」のデトックス法だ。
誰もが持っているその「才能」や「潜在性」は社会通念や規則、環境や固定概念、社会秩序や習慣といったノイズによって見失われがちだ。
だからこそ、世界のトップリーダーたちは、そのノイズを取り払うため、真の自分に向き合うため、自分の底力を引き出すために瞑想を使う。
誰もが自身の才能を持ち合わせているならば、それを存分に引き出したい。
その手段として瞑想が有効だとトップリーダーたちが証明するのなら、それを使わない手はないのではないか。