多くの病院では、入院患者さんの治療や検査などのスケジュールを表にまとめた「クリニカルパス」という計画書が導入されています。クリニカルパスの由来と意義とは?
僕は循環器医として実際の患者さんの診断・治療に関わるだけではなく、医療のマネジメントや医療の質という観点からアプローチすることも非常に重要だと考えています。
今回はその中でも実臨床をマネジメントに還元し、またその後に臨床に還元するようなアイデアをご紹介します。
みなさんクリニカルパスという言葉をご存じでしょうか?
もともとは医療業界ではなく、産業界において生まれた手法で、
1.ある目標を完了させるまでに必要な全ての活動の一覧
2.それぞれの活動にかかる時間
3.それぞれの活動の間の関係
を含むモデルやパターンを構築し、これらを効率化してゆく過程のことをクリティカルパス法といいます。(一番時間が長くかかるところを見つける目的ともされていますね。)
このクリティカルパス法が医療業界に導入されるときにクリニカルパスという表現を用いられるようになりました。
少し例を挙げて考えてみましょう。
実際にある診断(例えば心筋梗塞)で入院することになったとしましょう。
この過程が医師によって少しずつ違い、それが入院期間の違いになることが多くあります。例えば、歩行やリハビリテーションなどの身体を動かす治療は少し時間をおいてから開始しましょうとか、食事は数日食べられませんとか、医学的根拠に乏しい部分に関しては医師の個々の裁量で決まってきます。入院期間や入院中の生活の質にはこれが意外に重要なのですが、言い方が悪いかもしれませんが、「意外に適当に(悪い意味ではないです、そこまで重要視されていないということです)」に行われています。
これらの差を減らすために、
(1)施設での方針などをまとめて、一定の方向性を持って治療を行う。
(2)さらにその過程がうまく行かなかった場合にはなぜなのか?どのようにするのか?を検討する
ということで心筋梗塞治療におけるPDCAサイクルを回すことが可能となります。
我々の施設の循環器内科では全入院患者の約9割にクリニカルパスを適応し、一定の方針を持って治療を行っています。(例えば、急性心筋梗塞は重症度に合わせて基本的には3日間と7日間の入院期間としています。)
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