インテグラルによる「アデランスMBO」 ~ スティールパートナーズ、ユニゾンキャピタルを振り返る

日経によれば、東証1部上場のアデランスは14日、MBO(経営陣が参加する買収)に踏み切ると発表しました。

日経によれば、東証1部上場のアデランスは14日、MBO(経営陣が参加する買収)に踏み切ると発表しました。現経営陣が投資ファンドのインテグラルと組み、TOB(株式公開買い付け)で株式を取得する。アデランス株は2017年2月をメドに上場廃止になる見通しです。

アデランスがMBO上場廃止へ インテグラルが再生支援

アデランスの株は創業者の根本信男会長兼社長と津村佳宏副社長が50.1%を取得し、残りをインテグラルが保有します。

TOBは17日から11月29日まで実施し、1株あたり620円と14日終値(480円)より29%高い価格で買い付けます。

買収のレベル感を見てみましょう。

2016/8月で、現金119億円、長短借入22億円、予想EBITDA(今期営業利益見込+前期償却額)は-3.7億円+ 43億円=39.3億円です。

14日の株式時価総額は178億円。

全体で行くと

EV = 178×1.29(14日終値480の+29%) + 22 - 119= 132億円 

EV / EBITDA 倍率 = 132 ÷ 39.3 = 3.35倍

となります。

プレミアムは29%と平均的な水準ではありますが、キャッシュが100億円以上あることを勘案すると割安かもしれません。通常は5倍以上の買収水準となります。

ただ、インテグラルは過半数を取得しないことから、Change of Controlが効かないことを勘案すると、その分のディスカウントがあるのかもしれません。

さて、アデランスは以前から、ファンドからのアプローチが絶えない発行体でした。

それを少し振り返ってみます。

まだスティールパートナーズは27%の筆頭株主だった。〜 アデランス業績急回復で思うこと

アデランスは、2009年にユニゾン・キャピタルとスティール・パートナーズのファンドによる経営権の争奪戦が起き、株主総会でスティール・パートナーズ側が勝ち、スティールの主導のもとでの経営再建に合意しました。

その背景としては、アデランスには2008年にアクティビストファンドであるスティールパートナーズが29%を取得し、定時株主総会で取締役再任決議が否認されるわけですが、

これは株主提案でスティール・パートナーズが提示したわけではなく、

通常の任期満了に伴う総会普通決議が否決されたということなんですね。

当時、経常利益50%減で取締役再任否決か否かは株主が決めることなので、特に意見は持ちませんが、今回は29%を保有するスティールが、後ろで他の株主に働きかけたことによるものでした。

今まで考えにくかった一般株主の反乱(というより、全うだと思うのですが)が、現実のものとなりました。個人的には当時の採決は時代の流れの変化を捉える上で、エポックメイキングになったのではないか思っています。

そして翌2009年には、スティールが「上場廃止」を提案し、それに対して会社側が「上場維持」を目的としたホワイトナイトを募集し、応募した40社の中から、ユニゾンキャピタルが現ローソン会長の玉塚氏を担ぎ出し、選ばれれ、スティールとの間で、プロキシーファイト(委任状争奪)が行われた結果、スティールが勝ったのは、非常に象徴的でした。

当時、ユニゾンもTOB価格が低かったとの指摘はあるようですが、

いずれにしろ、当時の事態を招いたのはそもそもが業績不信に対する手当てが出来なかったことに尽きると考えており、それは紛れもなく経営責任です。そしてその責任を株主が問うただけの話であり、相手がスティールだから、ホワイトナイトを立てて感情論に矛先を向けたアデランスは、当時「ちょっと筋が違う」という印象受けました。

その後スティールは2012年頃もまだ株を保有しており、経営えの関与が奏功したのか、営業利益30億円、時価総額538億円まで上昇し、Exitして行きます。

その後、また業績が下降し、今回はついに非公開化ということになるわけですが、果たして今回はどうでしょうか?

先ずはインテグラルに期待したいと思います。

(2016年10月15日「田中博文オフィシャルブログ」より転載)