【名護市長選】稲嶺進氏が再選 普天間基地の辺野古移設に反対、市長権限で阻止できるか

沖縄県の名護市長選挙が1月19日投開票され、現職の稲嶺進氏が再選した。アメリカ軍の普天間基地を名護市辺野古に移設する問題が最大の争点だったが、「移設阻止」を主張した稲嶺氏の当確で、名護市は辺野古移設反対の構えを死守する方向となった。
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時事通信社

沖縄県の名護市長選挙が1月19日投開票され、現職の稲嶺進氏が再選した。アメリカ軍の普天間基地を名護市辺野古に移設する問題が最大の争点だったが、「移設阻止」を主張した稲嶺氏の当選で、名護市は辺野古移設反対の構えを死守する方向となった。

開票率100.00%

スエマツ 文信 15,684

稲嶺 ススム 19,839 当選

(名護市役所「名護市長選挙開票状況」より)

※23:05更新

辺野古移設はどうなるのか——。名護市長が持つ権限は、辺野古埋め立てにどう影響するのか。これまでの普天間基地移設の経緯とともに振り返る。

■普天間基地移設、辺野古移設の問題とは

住宅地に隣接している、普天間基地(宜野湾市)。1995年の少女暴行事件や、2004年の沖縄国際大学構内への米軍海兵隊ヘリ墜落事件などの発生により、沖縄県民による早期移設・返還の要望が高まっていた

日米両政府は1996年、県外移設を条件に普天間基地の返還を決定。2006年に発表した「再編実施のための日米のロードマップ」では、辺野古沿岸部へ代替施設を建設し、2014年までに完成させるとしていた。

2009年7月の衆院選で「最低でも県外」と唱えた民主党政権が誕生し、普天間基地の辺野古への移設は一旦白紙となった。これを機に県外でも注目されることになったが、1年も経たないうちに県外移設は頓挫。2010年5月、辺野古移設を受け入れ、自公政権時代の案に戻った。

この経緯によって、沖縄県民の辺野古移設への反発は強まり、沖縄県の41市町村すべてが県内移設に反対を表明。条件付きで移設に賛成していた仲井真弘多(ひろかず)知事も反対に転じ、2013年7月の参院選では、自民党の立候補者さえも、党の方針であった「辺野古移設」とは異なる「県外移設」を主張して戦っていた。

■2013年12月、仲井真知事が辺野古移設を承認

しかし2013年12月1日、自民党の沖縄県連所属国会議員らが、名護市辺野古への県内移設を容認する姿勢に転向。「受け入れ先が決まらないまま県外移設を進めようとすれば、普天間基地の固定化が続く」ということが理由とされた。

その後、同月27日、市民が県庁前で「県内移設反対」の抗議を行うなか、仲井真知事が、辺野古へ移設するために政府が提出していた埋め立て申請を承認。1996年の日米合意から17年にわたる普天間移設問題が、大きな節目を迎えることになった。

沖縄県の仲井真弘多知事は12月27日記者会見し、宜野湾市にある米軍普天間飛行場を名護市辺野古へ移設するために、政府が提出していた埋め立て申請を承認したと発表した。

(ハフポスト日本版「辺野古埋め立て、仲井真知事が正式承認【沖縄・普天間移設問題】」より 2014/12/27 19:02)

■辺野古埋め立て承認、那覇市議会や県民らが抗議

仲井真知事が埋め立て承認したことについて、那覇市議会や県民らが反対の姿勢を表明している。

那覇市議会は1月6日、普天間基地の移設先となる名護市辺野古の埋め立て申請を仲井真知事が承認したことに抗議する意見書を、賛成多数で可決した。

那覇市議会は6日、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先となる名護市辺野古の埋め立て申請を仲井真弘多(ひろかず)知事が承認したことに抗議する意見書を、賛成多数で可決した。知事に対し、「これまでの公約や議会答弁と、承認は全く矛盾する」と批判した。同県内の市町村議会が知事承認に抗議するのは初めて。

(朝日新聞デジタル「辺野古埋め立て承認、那覇市議会が仲井真知事に抗議 「県民の落胆は計り知れない」」より 2014/01/06 16:31)

県民らも、県を相手に訴訟を起こす事態となっている。1月15日、194人の県民らが、県を相手に承認の取り消しを求めて那覇地裁に提訴した。訴状では、辺野古の埋め立ては環境保全など定めた「公有水面埋立法」に違反するとしている。

訴状では「埋め立てが環境保全および災害防止に十分配慮したものであること」と定めた公有水面埋立法4条1項2号について、飛行場建設によって騒音被害が増大し、ジュゴンやウミガメの保全措置も「実効性に乏しい」として違反していると指摘する。「国土利用上適正かつ合理的」であることを条件とする同1号には「国は普天間飛行場の危険性除去を新基地建設のための駆け引きの道具にしているに過ぎない」などとして、埋め立ての必要性はないと主張している。

(琉球新報「辺野古埋め立て、承認取り消し求め提訴」より 2014/01/16)

「公有水面埋立法」は、公共に用いられる河川や海などの埋め立てに関する法律で、埋立地の用途が適正かどうかや、環境の保全に十分配慮がされているかなどを、慎重に審査しなくてはならないと定めている

仲井真知事は12月の会見で、現段階で取り得ると考えられる環境保全の措置などが講じられていると述べたが、米軍基地へ立ち入り環境調査は、日米両政府で対応することになるため、調査が可能かどうかまだわからない状態だ。

■辺野古移設、名護市長の権限が及ぼす影響とは

今後、辺野古移設には名護市長の権限が大きな影響を持つことになる。辺野古の埋め立て工事には、市の決定や許認可が必要なものがあり、市長の判断によっては計画の進展に関わってくるという。

市の権限が及ぶ工事は、市や県の幹部によれば、10項目近くに上るようだ。

 政府の埋め立て申請書などによると、基地建設に伴う市長の許可や協議が必要な主な手続きは(1)作業ヤード設置のための漁港使用許可(2)シュワブ内への水道敷設(3)資材搬入のための道路使用許可(4)飛行場施設への燃料タンク設置-などだとみられる。政府は埋め立てに向け仮設道路や海上ヤード設置、辺野古ダム周辺からの土砂採取、美謝川の水路切り替え工事を始めるが、資材などを置くための作業ヤードの設置や作業船を出すため、辺野古漁港を管理する市長の許可が必要だ。

(琉球新報「辺野古移設、市長権限で作業停滞も 政府、予防線に必死」より 2013/01/15)

再選した稲嶺市長は1月7日の集会で、仲井真知事が承認した後も工事は阻止できると主張していた。

「埋め立てに関して、市長が持っている権限がある。知事が承認をしたからそのままいくわけではない。私が勝つことによって止められる」

(朝日新聞デジタル「辺野古移設に権限、注目の名護市長選 12日告示」より 2013/01/15)

一方、自民党推薦の末松文信氏は1月15日、「市長の権限は(阻止に)及ばない」として移設を認めざるを得ないとの意向を示していた。

末松氏は「県知事の埋め立て承認と同じで行政手続き上、法令や条例に合致すれば認めざるを得ず、市長の権限は(阻止まで)及ばない」と指摘。埋め立てが必要な漁港は名護市が管理しているが、「市長が政治的に利用し私物化することはあってはならない」と強調した。

(MSN産経ニュース「「とんでもない話」と末松氏 稲嶺名護市長の辺野古阻止発言を批判」より 2014/01/15 21:37)

※名護市長選で稲嶺進氏が当選確実となりました。辺野古移設にどのような影響があると思いますか? あなたの声をお聞かせください。

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