2015年10月に38歳の若さで亡くなった声優・松来未祐(まつき・みゆ)さんの両親が、娘の死因となった「慢性活動性EBウイルス感染症」(CAEBV)の難病指定を求めている。
医師の間でもあまり知られておらず、松来さんは通院を繰り返して感染判明まで1年以上かかったからだ。松来さんの本名は松木美愛子(まつき・みえこ)。広島県内に住む父母、松木孝之さんと智子さんの言葉を2月3日、毎日新聞が報じた。
「東京の大きな病院をいくつも回ったのに、何で分からんかったんや」。孝之さん、智子さんは診断が遅れたことに疑問を持ち、CAEBVの難病指定を求めている。指定されれば、3万円ほどかかる自己負担の検査費用は軽減され、医師間に周知され、早期の発見・治療に結びつくと考えるからだ。
(人気声優の死:異常なしがEBV感染症…難病指定訴え - 毎日新聞 2016/02/03 11:02)
孝之さんは松来さんの友人らから、本人が闘病中に「元気になったら手記を発表してCAEBVを知ってもらい、一人でも多くの命を救いたい」と話していたことを聞き、2015年12月に病名を公表していた。
■根本的な治療をしない限り、発症から数年で致死率50%
CAEBVは、EBウイルスが慢性的に体内で活動・増殖を続ける珍しい病気だ。
大阪府立母子保健総合医療センターの解説によると、EBウイルスはほとんどの人に感染している。日本での感染率は3歳頃までに約7割、成人では9割以上に上る。通常は唾液などを介して、白血球の一種「リンパ球」のB細胞に感染するが、初感染時には長くても数週間で自然回復するという。
EBウイルスは体内から排除されることなく、生涯にわたって潜伏感染する。人には免疫力が備わっているため、通常であれば再び発症することはない。しかし、潜伏感染もしくは初感染したEBウイルスが、リンパ球のうちB細胞ではなく、T細胞やNK細胞に感染すると、重大な症状をもたらす。それがCAEBVだ。欧米よりも東アジアに多く、全年齢層で発症がみられる。
発熱、倦怠感、リンパ節腫脹などの症状が出て、最初は対症療法などで回復するケースもある。しかし根本的な治療をしない限り、何度も再発して白血病などを引き起こし、数年以内で約半数、十数年以内でほぼすべての人が亡くなるという。
発症メカニズムは不明で、治療法は確立されていない。現状では、炎症を抑えるステロイド剤や抗がん剤の投与、正常なリンパ球を増やすための骨髄移植などの治療が行われている。
CAEBVの感染が疑われる場合に備えて、SHAKEの公式サイトではチェックシートを公開している。
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