絶対に走りたくないと思っていた人がマラソンにハマる理由

過酷な初マラソンからランニングにのめり込む人がいる。ランニングタウンのランナーリレーで紹介しているランナーから、どんなタイプがそうなるのか探ってみた。
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秋から始まるマラソンシーズンが、日本最大級のマラソン『東京マラソン』で最高の盛り上がりをみせる。2月22日に行われる東京マラソンの参加抽選倍率は、なんと10倍を超える。

東京マラソンの抽選結果の当落通知がされる頃、友人や職場の同僚同士で、「抽選どうかなあ」「どうだった? 私はダメだったぁ!」「俺は当選したぜ!」なんて会話があちこちで聞こえてくる。

他にも人気大会は多く、抽選のところもあれば、先着順で参加が決定されるところもある。1万人以上の枠がたった数分で定員に達する大会もあるほど。先着順に受け付ける人気大会のエントリーは『クリック合戦』と呼ばれ、集中するアクセスの隙間に入り込むために、エントリーボタンを何百回も押すというのだから恐れ入る。

「〇〇マラソンに当選しちゃったから、少しは練習しないと」という人が結構いる。でも、これってどうなの? こういう人は、フルマラソンの過酷さに打ちのめされて、2度と走ることがなかったりして...という懸念。実はこういうケースは非常に多い。

「こんなに辛いことは、もう懲り懲り」「もう走りたくない」というほどの苦行経験だけではなく、「1回走れば満足」「1度は走ってみたかった」という達成感を味わえることも理由の1つ。

しかし、中には過酷な初マラソンからランニングにのめり込む人がいる。ランニングタウンのランナーリレーで紹介しているランナーから、どんなタイプがそうなるのか探ってみた。

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1人目は伊藤あんな。ダイエットのためにスポーツジム通いをしている時に、皇居の5kmレースに職場の仲間に誘われる。練習もしていないのに、3位になったことで、妙な自信をつけて、東京マラソンにエントリーする即決行動派。

その初マラソンでは、脚の痛みと寒さに耐えてやっとの思いでゴール。完走メダルをかけてもらったことも、どうやって帰宅したかも覚えていないほどの意識朦朧状態になったという。「走るのはもう懲り懲り」と思いながら、友人にランニングクラブを紹介され「ダイエットと脚の痛みなく走るために」と入会してしまう楽観さがある。

トレーナーに「股関節がすぐに痛む」ことを相談し、身体の使い方を教わると、痛みが解消する過程で、「ランニングって全身を使うんですね。奥が深い」と単純に感動し、ランニングにハマっていくのだ。もう懲り懲りと思った東京マラソンから、ランニングが好きになるまでの期間が、たったの3ヶ月。もの凄く短い。

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2人目は佐熊康生。39歳の時に、スポーツクラブの仲間から、一緒にハーフマラソンに出ようと誘われる。断り続けたが、あまりにしつこいので断るのが面倒になり出場してみたのが始まり。その大会は、上り下りが激しいコースだったところが不幸なところ。

ヘビースモーカーだったために、上りは息ができないほど苦しみ、太っていたために、下りは着地の度に膝が痛んだ。ゴール後は「もう2度と走らない」と決め、その後の1週間生活に支障が出たために、「絶対に走らない」と心に誓う。

その数ヵ月後「抽選で倍率が高いから、どうせ当たらないよ」という誘い文句の乗せられて、東京マラソンにエントリー(こういう人が得てして当たりやすい...)。抽選に当たってしまうのだが、30歳代のメモリアルとして出場を決意する。しかし、ここでもフルマラソンの洗礼を受ける。苦しいし、膝は痛いしで、「もう2度と走らない」と再び心に誓うのだ。

そして、また同じ友人から「初めてのフルマラソンを大した練習もしないで3時間28分で走るのだから、凄い才能があるよ」とおだてられて、今度は72kmのマラソンに誘われる。固辞したが、ここでも友人がしつこいので、結局は「40歳のメモリアル」として出場を決意する。

しかし、この3度目が今までとは違った。出来ないことを受け入れることが嫌いな性格だったので、膝が痛む原因を整体に通って解消し、オーダーメイドのインナーソールを注文し、1週間に4回10kmの練習を行う徹底ぶり。結果、72kmというロングランをテレビ電話で友人と話しながら、余裕で完走してしまうのである。

そしてこの2人、今では、国際マラソンのエリートの部に出場するほどの(つまりものすごく速い)ランナーになっている。

2人のいきさつから、女性は『即決行動タイプ』『楽観タイプ』『感動タイプ』、男性は『誘いを断れないタイプ』『できない自分が許せないタイプ』がランニングにハマっていきやすいのではないかとするのは、ちょっと強引でしょうか。

また、ピックアップした2人が、偶然にも喫煙者だったというところが面白い事実。刺激を欲するタイプがハマりやすいのかも。

でも、最も必要なのは、「走るのはもう懲り懲り」と思っているのに、何度もしつこく誘ってくる友人の存在なのかもしれませんね。