「家も農機具も失った。今後どうすれば...」 益城町の避難所、被災者につのる生活不安【熊本地震】

熊本地震で家を失った人らが避難している、熊本県益城町の総合体育館を4月23日、訪ねた。
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二度にわたり震度7を記録した熊本県益城町。一連の熊本地震で家を失った人らが避難している、熊本県益城町の総合体育館を4月23日、訪ねた。

アリーナが屋根の崩落の危険があって使えず、約850人の被災者は廊下や弓道場などの共用スペースに、段ボールなどで間仕切りをして寝泊まりしている。避難所も断水が続いて被災者は入浴も十分にできておらず、支援物資の食事なども入り交じって、所内は独特の匂いが漂う。

「ここは初めて? いろんな人がおると。くさいやろ?」

体育館外の入り口のベンチに座っていた松村忠則さん(66)と妻マキコさん(62)に声をかけられた。自宅が全壊し、14日夜から体育館に泊まっていたが、マキコさんは2日目に39度の高熱を出した。診察の結果、インフルエンザではなかったが、「共用スペースから出るように言われ」、夫婦で車中泊を続けている。

「ボランティアさんのおかげで、食べ物に不自由はしないけど、夜はなかなか寝られんですもんね。これが1年になるのか、2年になるのかと思うと、仮設住宅を造ってほしいけど、いつになるのか…」

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益城町総合体育館の入り口。

毎日新聞によると、熊本県内の避難所では、インフルエンザの患者が16人確認された。南阿蘇村では28人にノロウィルスの症状が出ている

医師を含め約120人を被災地に派遣している日本赤十字社によると「土足で歩く共用部分と寝床のスペースがとても近いことに加え、避難所も断水でトイレの水が出ず、手洗いも十分に出来ないこと」が背景にあるとみられる。

「トイレに行った後、そのままの手で、ボランティアらから配られた救援物資などの食糧をつかんで食べるなどの行動が、感染症を引き起こす原因になる。トイレの水も満足に出ない状況だが、屋外の手洗い支援スペースなどで十分に手洗い、消毒をしてほしい」と広報担当者は呼びかけている。

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マグニチュード7.3の本震から1週間。益城町の体育館では、救援物資を手渡すボランティアや、所内を巡回する医師の姿も目につく。物資は着々と届いているが、余震も続く中で、生活の再建に踏み出せない現状に不安を巡らせている。

橋本芳美さん(65)の家は会社員兼農業だ。長男一家5人と4世代8人で暮らしていたが、自宅が全壊したため、90歳の祖母と夫婦、それに犬を連れて、15日から体育館の廊下に約2メートル四方を間仕切りして暮らしている。

妻・アケミさん(62)に避難所生活について尋ねた。

「疲れはないですよ。ボランティアの方々から食事も物資も頂けていますから。うちの町内は隣近所みんな知った人同士で、もともとプライバシーも大してないようなもの。むしろ避難所は、知った人がみんな来ているから心強い」

と言うが、堰を切ったように話したのは今後のことだった。

人と犬は無事だったが、家だけでなくトラクターも乾燥機も育苗箱も全壊した。田んぼにも亀裂が入った。「65歳で収入源がなくなった。食べるものもない。次の種籾が届いても、植えることもできない。田んぼに水を入れても抜けるかもしれない。収入がないから新しい機械も買えない。コメが売れても、機械代に消えていくだけなら意味あるのか…」。命が助かった安堵感で持病の薬を持ち出すまで気が回らず、体調も気がかりだ。

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益城町総合体育館の外は、アスファルトが波打っていた。

1回目の地震のあと「そろそろ大丈夫かな」と自宅に戻った知人が、2回目の地震で死んだという。余震の回数は減っているが、まだまだ気を許せない。

「家は片付けのめども立たない。まだ余震があるから、具体的な方向に走れない。この先どうなるのか、次にどうなっていくのか。この状態がずっと続くのか。県営住宅や仮設住宅の入居もいずれ始まるんやろけど、うちは8人暮らしだから1部屋では苦しい」

西日本新聞の調査では、全壊、半壊、一部損壊した住宅や公共施設は、熊本など4県で少なくとも計9127棟にのぼる。5000棟以上が損壊した益城町の西村博則町長は24日、仮設住宅2000棟を目標にすると明らかにした。候補地選定の段階で「なるべく早く建設したい」という。

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