中央アジアのカザフスタンで採取された岩石から、ダイヤモンドと共存し、カリウムを多量に含む特殊な電気石(トルマリン)を、早稲田大学教育・総合科学学術院の大学院生の清水連太郎さんと小笠原義秀教授が発見した。国際鉱物学連合(IMA)が2月に新鉱物として承認し、学名は、この研究を率いた丸山茂徳・東京工業大学地球生命研究所教授にちなみ、マルヤマアイト(maruyamaite、日本名:丸山電気石)と命名された。高圧条件下で形成されるダイヤモンドと共存する電気石は初めての発見で、6月に英科学誌Mineralogical Magazineに発表され、8月には国際鉱物学連合のホームページでも公開された。丸山電気石のタイプ標本は国立科学博物館に保管されている。
大陸衝突にともなってプレートがマントルに沈み込む際に地球表層物質も深部に運び込まれ、地下120キロより深い所でダイヤモンドを含む超高圧変成岩となり、再び地表に戻って露出する。宝石にもなる電気石が形成されるためには、地球表層に濃集している揮発性元素のホウ素が欠かせない。この丸山電気石は地球表層からマントル深部へホウ素を運搬する役割の一端を担っている。
丸山茂徳教授ら日本の調査隊は1997~99年に、カザフスタン北部の草原地帯にあるコクチェタフ超高圧変成帯で約9000個の岩石を採取した。このうち、約5億3000万年前の古生代初めに形成された岩石から、清水連太郎さんらが2005年に、これまでに知られていない化学組成の鉱物を見つけた。電気石の中に、微小なダイヤモンド(マイクロダイヤモンド)があったことが発見のきっかけとなった。分析してみると、電気石としては例がないほど多量のカリウムを含んでいた。この部分を新鉱物とみて、発見者の清水さん、小笠原義秀教授とカナダ・マニトバ大学のフランク・ホーソーン教授らが化学組成や結晶構造解析などのデータをそろえて、国際鉱物学連合に申請し、マルヤマアイトの学名を提案していた。
早稲田大学の小笠原義秀教授は「超高圧変成岩がキーワードだ。ダイヤモンドを含む新鉱物は、圧力が高い地球深部で形成されて地表に上がってきた貴重な物証である。鉱物は5000種弱あるが、新鉱物として世界的に認定された意義は大きい。プレート運動に伴う地球表層と内部の物質循環を解明する新しい手がかりになる」と話している。
また、新鉱物の名前に使われた丸山茂徳東京工業大学教授は「カザフスタンのコクチェタフ広域変成帯の研究で数多くの世界初の発見がなされ、プレート収束場の性質が明らかになった。その評価の一つとして新鉱物に私の名前が付けられたことを光栄に思う。多くの困難を克服して、この共同研究プロジェクトを進めてきた早稲田大学などの同志の皆さまに感謝したい」とコメントした。
関連リンク
・早稲田大学 プレスリリース
・東京工業大学 プレスリリース