マラソンの翌日 元気に出社するために 《その1》 筋肉痛の話

秋になり、毎週のようにマラソン大会が行われるシーズンになりました、「休日にロードレースを頑張って走り、翌日に、筋肉痛を抱えて出勤」という方は多いことでしょう。
|

日常生活でも多くの人が『筋肉痛』を経験しているはずです。重い荷物を持ったり、普段あまり運動していない人がスポーツを楽しんだり、気まぐれにジョギングしたり、その翌日に訪れる筋肉痛に「あれ、どうして痛いのだろう?」「そうだ、昨日〇〇〇したからだ」なんて思い返すこと多いと思います。

秋になり、毎週のようにマラソン大会が行われるシーズンになりました、「休日にロードレースを頑張って走り、翌日に、筋肉痛を抱えて出勤」という方は多いことでしょう。筋肉痛は、筋肉量や筋力を維持し、発達させるためには避けては通れない症状ですが、それを避けて通る方法も紹介していきます。

言っておきますが、「たまに走ったり」「急にスピードを上げて走る」のは、筋肉を痛める典型的な悪いパターンです。筋肉痛は、そんなあなたへ発する危険信号なのかもしれません。その「カラダからの知らせ」に対して、どう対処するかを考えてみましょう。

Open Image Modal

■筋肉痛のメカニズム

「同じ筋肉を過剰に使い過ぎた」「普段使わない筋肉を久しぶりに使った」ことで、筋線維や結合組織が損傷します。損傷した筋線維を修復するために白血球やリンパを中心とした成分が集まると「炎症」が始まるのです。その時に、刺激物質(カリウム、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、などの痛みを出す物質)が神経を刺激して痛みを感じるという仕組みです。一致している見解は、「筋肉痛を感じている時=筋肉は損傷の修復中である」ということ。

 傷ついた細胞からはタンパク質が失われ

     ↓

 リンパ液と白血球が修復のために集まる

     ↓

 筋細胞は補修や新生がなされ

     ↓

 細胞が「筋タンパク質」で満たされる

     ↓

 (筋繊維の超回復=筋肉の発達)

■遅発性筋肉痛(時間が空いて痛む)

実際には、筋肉痛は運動の何時間か後に始まって、約1~2日後にピークを迎えます(一般的には)。この症状が『遅発性筋肉痛』と呼ばれるのは、そのためです。筋線維そのものには痛みを感じる神経はないと言われています。痛みは、刺激物質が筋膜に届いて反応が起こり、炎症が始まってから感じるため、時間差があると考えられているのです。

普段からよく使っている筋肉には、筋肉に血液や酸素、栄養を送る毛細血管が張り巡らされていますが、あまり使っていない筋肉には、毛細血管が十分にありません。そのため、急激にその筋肉を動かしても、損傷した筋線維に炎症が始まるまで時間を要し、さらに刺激物質が生産され到達するまで時間がかかるのではないか、というのが定説です。

■筋肉痛になりやすい運動とは

私たちは運動するとき、筋肉を収縮させて力を発揮しています。この筋肉の収縮運動は、短縮性・伸張性・等尺性の3種類に分けられます(ここでは詳しく述べませんが)。このうち、特に筋肉痛になりやすいのがエキセントリック運動(伸張性運動=筋肉が伸びながら力を発揮する運動)です。筋肉を伸ばすときのほうが筋線維への負荷が大きくなるため、損傷が起こりやすくなるのです。下り坂道が多いコースを走るときは、注意が必要です。

厳しいトレーニングや起伏地を速く走った翌日に、階段を下りるのも難しいほどの筋肉痛が起こるのが普通です。「頑張った証」と喜ぶべきか、それとも、カラダが危険信号を発していると注意すべきか それがどのくらいのレベルかをきちんと判断して対処する必要があります。

Open Image Modal

■痛いけど大丈夫なの?

筋肉痛の大部分は、筋肉の修復、回復、成長に伴うものです。だからある意味、これは良いことが起きていると言えなくもありません。毎日のように運動している人でも運動のレベルによっては、時々、筋肉痛になることもあるでしょう。これはまったく問題のないこと。とはいえ、あまりにも長い時間にわたって筋肉痛が続いたり、痛みがひどかったりする場合は要注意です。

筋肉痛の問題は、それが運動強度の低下を伴うことです。「運動する気になれない」というメンタル的なこともありますが、筋肉痛が起きている時には、筋肉は充分な力を発揮できないことが多いのです。パフォーマンスが低下するのはもちろんですが、この状態でさらに高負荷の運動をすると、せっかく損傷箇所を修復しているのに、さらに損傷箇所を増やすことになりかねません。

「筋肉痛なんて関係ない」「筋肉痛は練習が効いている証拠」と休まずに走る人もいるかもしれませんが、頑張って走った努力を無駄にすることにもなりかねないので、筋肉痛との付き合い方を学ぶ必要があります。場合によっては、筋肉を減らしてしまう事態も招きかねません。「筋肉痛がある時は、あまり無理せずに!」が基本的な考え方で間違いないと思います。

(2015年10月27日 「ランニングタウン」より転載)

  「マラソンの翌日 元気に出社するために」