マレーシア航空機の捜索難航 関係国が軍事情報の共有渋る

南シナ海で消息を絶ったマレーシア航空370便。消息不明から19日で11日が経過し、捜索活動には手詰まり感が漂ってきた。外交官や専門家からは、軍事情報の共有を渋る国が多いことも、捜索の妨げになっているとの声が聞こえる。
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Reuters

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南シナ海で消息を絶ったマレーシア航空370便。消息不明から19日で11日が経過し、捜索活動には手詰まり感が漂ってきた。外交官や専門家からは、軍事情報の共有を渋る国が多いことも、捜索の妨げになっているとの声が聞こえる。

乗客乗員239人を乗せた同機の捜索には26カ国が参加。現在、その捜索範囲は、中央アジアからインド洋南部にわたっており、その面積はオーストラリアの国土に匹敵する768万平方キロメートルに及んでいる。

マレーシアや米国の当局者らは、不明機は意図的に針路が変更されたとの見方を強めている。ただ、米政府筋によると、乗客乗員の身元調査が徹底的に行われたものの、「テロ行為」などの犯罪行為を企てる動機を持つような人物は見つかっていない。

マレーシアのヒシャムディン運輸相代行は18日、捜索範囲の絞り込みが不可欠だと強調。その上で、不明機発見につながる可能性のある軍事情報の提供を、隣国にあらためて要請した。

ヒシャムディン氏は、各国の軍事データについて「とても重要だ。マレーシアの場合、国家安全保障は脇に置いて捜索に取り組んでいる」と説明した。

東南アジア地域の外交官によると、関係各国の軍や政府はマレーシアの要請を吟味しているが、これまでのところ、データの交換に関する発言は出ていない。

マレーシアの政府関係者は「決定権は向こうにあるようだ。彼らがどのような軍事データなら、われわれと共有してもいいかを決める必要がある」と述べた。

<領有権問題>

アナリストらによると、南シナ海などでは領有権をめぐる問題が進行中であり、情報提供することによって防衛能力の弱さが露呈するリスクがあるため、すべての関係各国に情報提供を説得することは難しいという。

「領有権問題が存在するこの地域では、情報交換には慎重にならざるを得ない」。東南アジア研究所(シンガポール)の上級研究員、イアン・ストーリー氏はこう指摘。「各国は軍事力を暴露してしまうため、機密情報の提供を渋っている」と話した。

それでも、機体の残がいが発見されることは考えれられる。専門家らも、今後急展開を迎える可能性を口にする。しかし、捜索が長引けば長引くほど、それも難しくなるだろう。

米上級高官の1人は「あらゆる手は尽くされた」とコメント。関係者からも、機体の発見などといった急展開がなければ、捜索活動は暗礁に乗り上げてしまうとの懸念が出ている。

英王立統合防衛安全保障研究所のエリザベス・キンタナ氏は「これは謎であり、謎のままになってしまうかもしれない」と、現状の厳しさを表現した。

(Anshuman Daga記者、Tim Hepher記者 翻訳:野村宏之、編集:佐藤久仁子)

[クアラルンプール 19日 ロイター]

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