夜の歌舞伎町をアップデートすべく、ナイトタイムエコノミーのプレイヤー必読の1冊

《本屋さんの「推し本」 歌舞伎町ブックセンター・手塚マキの場合》
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「通り過ぎる街から、居れば居るほど面白い街にしたい」

ダンスやナイトエンタテインメントを規制する風営法改正。その立役者でもある齋藤貴弘弁護士の『ルールメイキング:ナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論』は、僕含めナイトタイムエコノミー(夜間における経済活動)のプレイヤーは必ず読むべき本です。

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齋藤貴弘『ルールメイキング:ナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論』(学芸出版社)

店内の明るさなど制限はあるものの、現在、クラブは24時間営業できるようになりました。それは、音楽好きの知識人の方々が無償で動いてくれたことによって、風営法が改正されたおかげです。

歌舞伎町には「お金に色がない」と思っている人が多いですが、自分たちの経済活動のためではなく、文化の醸成という、人間としての誇りを大事にしようと、音楽・ダンスをあらゆる角度から立体的に捉えて、法改正を実践しました。時代遅れのルールを正攻法で改正し、楽しい未来に向けてのルールメイキングに成功したのです。

本書では、そうした法改正の軌跡と、さらに、そこから始まるナイトタイムエコノミーのこれからの時代における重要性や課題について、丁寧に解説しています。

多くの人は歌舞伎町を通り過ぎていく…

先日、オランダ・アムステルダムのナイトメイヤー(夜間の行政を担当する責任者)を務めるシャミロ・ヴァン ディア ジェルドさんたちとトークさせていただきました。

いまナイトタイムエコノミーというと、音楽に加え、インバウンドのイメージが強いですが、インバウンドはその中心ではないと彼らははっきり言っています。

昼にはないフラットな関係性を築ける夜の時間の価値や、世代や人種、性別をクロスすることで生まれる文化━━。

それが夜の価値だと、僕も思います。

歌舞伎町は大衆文化の街です。誰でも受け入れるという寛容さの反面、軽薄さも美徳としてしまう部分があります。

俗世を離れて気を抜いて、「まいっか」と思わせる街が歌舞伎町です。

だから、ある時期は歌舞伎町に通うけれど、多くは通り過ぎていきます。それは歌舞伎町で働く人も、歌舞伎町に遊びに来る人も同じです。

でも、僕は居続けたい。居続けるためには変わらなければいけない意識喚起を、この本はしてくれます。

夜のコンテンツを提供する側は、その質を上げていく努力をしなければいけません。こうやって、我々の文化を昇華させようと取り組む遊び好きな人たちがいるということに気づかなければいけません。

インバウンド向けのコンテンツづくりは必要ないと思います。なぜなら、それは短絡的な大人の建前のようなものであって、本質ではないから。それよりも、ゆっくりと時間をかけて、文化を醸成できるようなコミュニティにしていくという覚悟が必要だと思います。

歌舞伎町は、内輪のポジション争いに終始していてはいけない。内弁慶ではなく、いや、多少内弁慶の面白さもあって良いが、深さを持った面白みに変えていく努力をするべきです。

そうすることで、自分たち自身で、通り過ぎる街ではなく、居続ける街に変えることができると思っています。

歌舞伎町は海外の事例を真似することができないくらい独特な街です。

多くは店側とお客側がはっきりと分かれていて、クラブを中心とした海外のナイトシーンとは違います。しかし、音楽という万国共通の文化をハブにして、そこがコミュニティになり、飲食店との連携がとれるようになるのが道筋のように思います。

日本で最初にできた商店街振興組合は歌舞伎町です。戦後の復興は、この街の商売人の方たちを中心に進められました。まさに本書におけるルールメイキングをしてくれた先輩たちがいたおかげなのです。海外のナイトメイヤーの機能を、すでに昭和30年代に実践していたのです。

そこからさらに、アップデートさせる時がきているように思います。それは課題解決ではなく、自分たちの楽しい未来をつくるためです。

そうすれば、僕たちプレイヤーは一生遊びながら、それを生業として生きていくことができるのだから。

連載コラム:本屋さんの「推し本」

本屋さんが好き。

便利なネット書店もいいけれど、本がズラリと並ぶ、あの空間が大好き。

そんな人のために、本好きによる、本好きのための、連載をはじめました。

誰よりも本を熟知している本屋さんが、こっそり胸の内に温めている「コレ!」という一冊を紹介してもらう連載です。

あなたも「#推し本」「#推し本を言いたい」でオススメの本を教えてください。

推し本を紹介するコラムもお待ちしています!宛先:book@huffingtonpost.jp

今週紹介した本

齋藤貴弘『ルールメイキング:ナイトタイムエコノミーで実践した社会を変える方法論』(学芸出版社)

今週の「本屋さん」

手塚マキ(てづか・まき)さん/歌舞伎町ブックセンター(東京都新宿区)

どんな本屋さん?

新宿・歌舞伎町のラブホテル街のど真ん中に位置する書店です。本棚に並ぶのは「愛」をテーマにした約600タイトル、書店員ならぬ“ホスト書店員”が、おすすめの本を紹介してくれます。現在は移転作業のため一時的にクローズ中で、再オープンは6月中を予定しています。

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(企画協力:ディスカヴァー・トゥエンティワン 編集:ハフポスト日本版)

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手塚マキさんが名著を独自の見方で読み解いた新刊『裏・読書』が4月20日、「ハフポストブックス」から刊行されました。全国の書店、ネット書店で販売されています。

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