(THE MAGNIFICENT SEVEN/2016年)
映画ファンならだれもが知っている名作:黒澤明の傑作『七人の侍』(1954年)と同作をリメイクした『荒野の七人』(1960年)を再リメイクした作品。
時は南北戦争(1861~65年)後の1879年、冷酷非道な悪人に支配された町の弱い住人から彼を倒してほしいと雇われた、賞金稼ぎやギャンブラーといったアウトローだが正義の7人の活躍を描く。
悪漢バーソロミュー・ボーグによって抑圧され、今後の絶望しか感じながら生きているアメリカ西部ローズ・クリークの町の人々。住民の一人であるエマ・カレン(ヘイリー・ベネット)は、リーダーとなる賞金稼ぎのサム(デンゼル・ワシントン)、ギャンブラーのジョシュ(クリス・プラット)、流れ者、拳銃・ナイフ・弓等の達人といった7人の男を雇って、バーソロミューの手から自分たちの町を救ってもらうように懇願する。住人でのあ全財産(残念ながら少額)を差し出す。「金」のためと割り切って戦いに身を投じる7人であったが・・・。
メガホンを取るのは、『トレーニング・ディ』『イコライザー』などの、アフリカ系のアントワーン・フークア。キャストは、過去何回もでフークア監督とタッグを組んだアカデミー男優のデンゼル・ワシントン、『ジュラシック・ワールド』などの売り出し中のクリス・プラット、『6才のボクが、大人になるまで』などでアカデミー賞候補の常連のイーサン・ホーク、韓国のイ・ビョンホンらが結集する。ヒロインのヘイリー・ベネットは青い目が魅力的である。
"現代"の西部劇らしく、この7人の構成も、白人だけではなく、黒人、アジア人、メキシコ人、ネイティブ・アメリカンと偏らない多人種の構成となってみる。最近の映画では、そのような配慮が必要なのである。ちなみに、今までの西部劇では黒人の登場は極めて少なかったと記憶している。
逆に本作品は、VFXやCGを極めて排除しており、ほとんどが俳優のスタントとなっている。これは最近の映画では極めて珍しく、監督のこだわりが感じられる。
西部への進出は、『スタートレック』ではないが、開拓するフロンティアを求めてのことである。主として農業であったが、収入をあげ生活を豊かにするためのものである。つまり、経済全体でいえば「経済成長」を志向しているということになる。
しかし、最近、経済成長すればいいのかという問題意識が出てきている。経済成長は一般的にGDP(Gross Domestic Product)でみる。基本的には、現在額の経済学はモノやおカネが増えたら、幸せであるという前提に立っている。しかし、本当にそうなのだろうか。
日本などの先進国は、一人当たりのGDPを伸ばそうとしてきた。しかし、それで幸せになりましたか、という問題も感じている。
本作品では、明らかに、おカネよりも「人の役に立ちたい」という気持ちが皆の気持ちを引っ張っている。実はよくあることであるが、おカネよりも気持ちで人は動くのである。ここういうことに若いうちから気づくことが大事だと考えている。(実は、筆者も経済学や金融の教育で社会に貢献したい(お役に立ちたい)という思いで、欄外の略歴欄にあるボランティア公開講義「宿輪ゼミ」をまもなく11年運営している)
本作を西部劇的にみると、悪役サイドのガンマンが大量に現れる。そして、7人がガンガ打つわけであるが、一発当たるとそれで動かなくなる。テレビゲームでもないので、一発で本当に仕留められるのであろうか、という疑問が残った。
【「シネマ経済学」商標登録のお知らせ】
筆者が2003年から様々な媒体で書き、テレビでも解説してきた「シネマ経済学」ですが、平成28日12月18日付で特許庁より、商標登録していただき、商標登録証も届きました。以前、共著者が共著を英訳し単著として勝手に出版した事件(現在も係争中)以降、著作権や商標権に真剣に対応するようになりました。今後「シネマ経済学」に興味がある方は、筆者までまずご連絡ください。今後「シネマ経済学」(単語)にも®(Registered Trademark)を付けます。
【宿輪ゼミのご案内】
博士(経済学)・帝京大学経済学部経済学科教授・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生達がもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かりやすいと、経済学博士の講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この4月で11周年を、開催回数は222回を、会員は1.2万人を超えて、日本一の私塾とも。言われています。次回第223回の宿輪ゼミは2月1日(水)開催。Facebook経由の活動が中心となっており、以下からご参加下さい。