「総理をかばう柳瀬さんは“気の毒“」 前川喜平さんに、じっくり聞いた加計問題

ハフポストの単独取材に、前川さんは…

「柳瀬(唯夫元首相秘書官)さんは気の毒。安倍さんというむちゃくちゃな政治家をかばうために人間としても公務員としてもあるまじき姿を晒している」ーー。

前文科省事務次官の前川喜平さんが、ハフポストの単独インタビューに応じた。自身の告発からさらに進展があった加計学園問題をどう見ているのか。問題の焦点は「国会で繰り返される嘘」にある。

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前川さんは加計学園の獣医学部新設をめぐり、官邸からの働きかけがあったと告発したことで「渦中の人」となり、問題が動くたびにその言動が注目されてきた。

朝日新聞がスクープした愛媛県文書には、柳瀬元秘書官が加計学園、愛媛県関係者に2015年4月2日「本件は、首相案件」と発言したとされる記述がある。

前川さんはこの日付を重視する。安倍首相は「腹心の友」と呼ぶ加計孝太郎氏が理事長を務める加計学園の獣医学部新設について、「2017年1月20日に初めて知った」と答弁しているからだ。

《柳瀬さんが国会で答弁すればするほど、加計学園が特別待遇であることがはっきりしたと思います。2015年に加計学園とだけ総理秘書官が3回も会っている。これはどう考えても厚遇です。

その理由も「外の話が聞けなくなった。だんだん自分は世の中からずれているんじゃないかと強く思い、できるだけ外の方からアポイントがあれば時間が許す限りお会いするようにしていた」というもの。

首相秘書官が誰とでも会うなんて、こんなことありえない。柳瀬さんはまったく成り立たない説明をしています。加計学園と会うのが特別ではないというために、こんな説明をしないといけないのはおかしいですよ。

これは総理のお友達だから会っているに決まっているわけです。それはなんのためかと言ったら、獣医学部を作るためですよね。それはわかりきっていること。

それ以上に問題なのは、柳瀬答弁、総理答弁を聞いていても愛媛県文書に対する反証ができていないということです

反証ができず、愛媛県文書が事実だとすると、これまでの安倍さんの答弁、柳瀬さんの答弁と矛盾することがたくさんでてくる。》

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愛媛県文書には、こうある。いずれも柳瀬氏の発言とされるものだ。

・本件は、首相案件となっており、内閣府藤原次長の公式のヒアリングを受けるという形で進めていただきたい。

・いずれにしても、自治体がやらされモードではなく、死ぬほど実現したいという意識を持つことが最低条件。

《その発言を覆す証拠は何もでてきていない。柳瀬さんは首相案件と言ったことも明確な否定をせずに、ほぼ認めています。

「・加計学園から、先日安倍総理と同学園理事長が会食した際に、下村文科大臣が加計学園は課題への回答もなくけしからんといっているとの発言があったとのことであり、その対応策について意見を求めたところ、今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよいとの助言があった」

愛媛県文書のなかにあるこの記述についても、柳瀬さんは記憶にないと言っているだけです。限りなく事実と言える文書についても、明確な反証がでてこないのだから、この文書の信憑性はさらに高まった言えます。》

つまり、と前川さんは問題を整理する。安倍首相にとって疑義が深まった答弁は少なくとも2つある。

①「加計孝太郎理事長との間で獣医学部新設の話をしたことがない」

②「加計理事長が獣医学部を新設し、国家戦略特区に申請する初めて知ったのは2017年1月20日」

愛媛県文書が事実だとするならば安倍首相が繰り返してきた、この2つの答弁は嘘ではないか?

《ポイントは2017年以前に秘書官が加計学園、愛媛県と会い獣医学部新設の話をして、さらに加計理事長と安倍総理が下村さんが出した「課題」について話をしたとなっていることです。

この課題は文書の文脈上、獣医学部の新設以外にないでしょう。これでも安倍さんは知らないと言い張るのでしょうか。》

首相秘書官は首相と常に行動をともにし、官邸内で外部の人と会うということは首相の「名代=代理人」として会うということを意味する。代理が出てきて「首相案件」といえば、それは誰の意向なのか。

《総理の意向だと考えるのが自然ではないでしょうか。「一校に限る」と決まっていた獣医学部新設は、すべて総理のお友達である加計ありきで進んでいたとしか考えられない。

私は公平やルールに則り、公正に新設する大学が決まっていけばなんの問題もないと言ってきました。今回は本当に公平なルールに基づいていたかが問われています。

これまで出揃っている事実を踏まえる限り、加計学園ありきで話が進んでいたとしか思えない。》

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時事

安倍首相は国会内で、前川さんの名前を出して答弁し、公平公正に加計学園に決まったと主張している。しかし、その中には事実に反した言葉があるという。

「あの前川前次官ですらですね、前川次官ですら、京産大はすでに出していたんですが、そのことをですね、そのことはまだ準備が十分ではないという認識の上にですね、熟度が十分でないという認識の上に、加計学園しかなかったということをおっしゃっていた」(5月14日、安倍首相の国会答弁)

《私はこんなことは言ってない。こんなひどい答弁はないですよね。

加計学園しかなかったというのは、官邸が加計ありきで選定を進めている、「だから」加計学園しかなかったという意味です。

「熟度が十分でない」などとも言ってない。だいたい、2016年10月17日に国家戦略特区ワーキンググループがやった京都府・京都産業大学からのヒアリングについて、当時の私は全く知りませんでした。

これもひどい話で、資料そのものもヒアリングがあったことも文科省は知らなかった。よって京産大と加計学園を比較することはできなかったんです。

安倍さんは「前川さんも含めて、直接、私から指示を受けたという人はいない」と盛んに言っている。しかし、私は和泉洋人総理補佐官に呼ばれて「総理は自分の口から直接言えないから」と言われ、総理補佐官から獣医学部設置の特例について文科省が早く対応するよう要請されている。

こちらは「総理は直接、私に指示できなかったんじゃないですか? お友達の案件だから指示できないんでしょ?直接指示がなかったことにして、周りから指示をしたんじゃないですか?」と問いたいのです。

安倍晋三さんには、前川喜平という名前を一切つかってほしくないですね。》

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前川さんは事務次官時代にあった官邸からの働きかけ、愛媛県文書、これまでの国会答弁を踏まえて、問題の本質をこう表現する。

《加計学園だけが、募集前から試験問題を入手して、難しいから答えが出さないところに、内閣府が助け舟をだして答案の書き方を指導している。

愛媛県文書にある安倍さんと加計さんが会食した際にでたという、下村文科大臣(当時)の課題。柳瀬さんはこれの回答が、国家戦略特区の提案書が答えになると言っているわけです。

柳瀬さんのアドバイスは極めて的確ですよね。加計学園だけが問題もわかっている、答えも内閣府の助言でわかっている。ここまでひどい事例はないと思います。

国家戦略特区は「成長戦略」なんです。加計学園の獣医学部新設が本当に成長につながるのか。あなたにだけ答えを教えますという選考で本当にいいのか。

ここまで証拠があって、どうして柳瀬さんは解せない答弁を繰り返したのか......。解せないですよね。柳瀬さんの答弁は何から何まで不自然です。

秘書官が総理に報告しなかったなんて、ありえないですよ。総理の名代が官邸の中で「腹心の友」の加計学園関係者に会ったのに、総理に一言も報告しないなんてありえない。》

「ありえない」を繰り返し、批判の矛先は安倍首相にむかう。

《愛媛県知事が「嘘は人を巻き込む」と言ってます。最初に嘘をついたのは安倍さんではないでしょうか?

加計学園ありきは非常にはっきりしてきた。私は加計ありきはどこから始まっているかはわからなかった。それが、愛媛県文書と柳瀬答弁で相当明らかになった。》

「一官僚のくせに総理を批判していいのか」――。前川さんにはそんな批判も届く。それをどう捉えていのか。

《私が従っているのは憲法です。憲法15条には「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない」と書いてある。

「全体の奉仕者である」で止めてもいいのに、「一部の奉仕者ではない」とわざわざ強調している。

獣医学部の規制緩和も、国家戦略特区も公正公平に審査されたらいい。この問題は「総理のお友達」という「一部」に公務員が奉仕していることがおかしいと私は言っているんです。

官僚は全体の奉仕者で国民に雇われている存在なんです。そこを忘れてはいけない。》

前川さんはインタビュー中に安倍首相、柳瀬氏の答弁が「おかしい」と繰り返し、その根拠も語った。

加計学園問題はまだまだ収束していない。