7月19日、国防費の予算削減をめぐるエマニュエル・マクロン大統領との意見の食い違いから、フランス国軍トップのピエール・ド・ヴィリエ統合参謀総長が辞職を表明した。
両者の論争が勃発する以前から、反対政党は左派・右派を問わず、マクロン大統領の独裁的で身勝手な放埓ぶりを隙あらば非難していた。それだけに、大統領の強硬な態度が一因となった今回の「仏軍トップ辞任」という異例の事態は、政敵たちの恰好のネタとなっている。ドヴィリエ氏の辞任が今週水曜に公表された側から、共和党、社会党、「国民戦線」の各幹部たちが一斉に、マクロン大統領の責任を舌鋒鋭く追及し始めた。
共和党ではギヨーム・ラリヴェ議員が「ドヴィリエ統合参謀総長は、国家の心臓を武装解除してしまった大統領と対峙して、名誉ある人間として振舞った」と憤りを示したほか、ヴァレリー・ボワイエ議員がマクロン氏の言動を「独裁的ナルシシズム」とこき下ろした。
ドヴィリエ統合参謀総長は、国家の心臓を武装解除してしまった大統領と対峙して、名誉ある人間として振舞った。
ドヴィリエ氏はマクロン大統領の「独裁的ナルシシズム」をフランス人に開眼させた。
また仏大統領選ではマクロン氏と一騎打ちを演じた「国民戦線」党首のマリーヌ・ルペン氏は、「ドヴィリエ統合参謀総長の辞職は、態度・政策の両面における、マクロン氏の非常に深刻な逸脱状態と、憂慮すべき限界を描いています」と公式発表で厳しく非難した。ルペン氏はこう続ける。「部隊の面前でドヴィリエ氏のような人物を辱めるという行為は、真のフランス国軍の元首に値しないものです。国防予算を大幅に削減するという方針は、ご自身の発言と世界的な脅威を無視しており、聡明で責任感のある国家元首にふさわしからぬものです」
政党の幹部らがこぞって非難しているのは、国防予算の削減を決定し、それに反対する軍トップを辞任に追い込んだマクロン大統領の「手荒な」態度だけでなく、国会の権限を揺るがしかねないその手法だ。というのも、マクロン大統領が7月13日に自ら軍に出向き、「私がボスです」などと強硬な態度を示したのは、その前日に非公開で行われた国会聴聞の際、ドヴィリエ氏が国防費に関する政府の大幅な削減方針を激しく非難した直後だったからだ。
「私があなた方のボスです」などと強硬な態度を示すマクロン氏。
これを受けて社会党では、デルフィーヌ・バトー議員が、ドヴィリエ氏を、執行部による政治というものが抱えるリスクを国会議員に警告しようとした「内部告発者」に例えた。またジャン=ジャック・ユルボアス下院法務委員会元委員長は、ドヴィリエ氏の辞任は、これから国会聴聞を受けるすべての軍人、すべての政府高官に向けられた脅威だとした。さらにマリー=ノエル・リーヌマン上院議員は、委員会に課せられたこの沈黙は、民主主義にとって「悪い信号」だと述べた。
このドヴィリエ氏の辞任から、フランス国家元首は、情報照会をする権利を国会に認めていないということが言えるでしょう…。
国会聴聞を受けた内部告発者、ドヴィリエ氏が辞任に追い込まれた。我が国の軍と、予算案を審議する国会にとって深刻な問題だ。
従順な政府高官、国会における彼らの沈黙。民主主義にとって悪いことだ。
一連の騒動を受けて、今後試されるのはマクロン大統領の政策および予算に関する舵取りだ。大統領選の候補者でもあった社会党のブノワ・アモン氏は「もし会社、大学、地域にそれぞれの参謀総長がいたとしたら、彼らは(ドヴィリエ氏と)同じように辞職していたでしょう」とツイートした。オー=ド=フランス地域圏のトップであるグザヴィエ・ベルトラン議員はより簡潔に、次のような警句を発するだけにとどめた。「偉大な兵士が立ち去っても、彼の真実は常にそこにあるのです」
ハフポスト・フランス版より翻訳・加筆しました。