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ぺえ、山崎ナオコーラが考える、“見た目”の意味。「礼儀正しさは必要だけど、そこに性別らしさは関係ない」

女はパンプス、男はネクタイ... “性別らしい見た目”なんて、ある?二人が発信を続けるワケ
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KOHEI HARA

「女だから、メイクしなきゃだめ」「男だから、ネイルアートをしたら変」

そんな“性別らしい見た目”への固定観念は、一体どこからやってきたのだろう?

それは無意識ゆえに、「違和感」を感じる人が少ないのが現状。しかし、髪型や服装、メイク...。自分を表現するための手段は、性別や立場、年齢にとらわれず、自由であるべきだ。

ヘアケア/ボディケアブランドの「ラックス」が、この春スタートさせた“ソーシャル・ダメージケア・プロジェクト”(Social Damage Care Project)。キャンペーン第二弾のテーマは、「見た目から、自由になろう」。

原宿のカリスマショップ店員として注目を集め、個性溢れるファッションやヘアメイクが人気のタレント、ぺえさん。『ブスの自信の持ち方』の著者で、エッセイスト、小説家の山崎ナオコーラさん。「自分らしい見た目」を問い続ける二人が語った思いとは?


ランドセル、選んだ色は...

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左からぺえさん、山崎ナオコーラさん
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ぺえさん(以下、ぺえ) 今でこそ好きなヘアメイクやファッションで「自分らしい表現ができてる」と胸張って言えるけど、ここに辿り着くまでには色々な壁がありました。 

一番記憶に残っているのは、中学3年間坊主頭で過ごしたこと。強豪のバレーボール部に所属していたので、暗黙の了解でみんな坊主。でも私はすでに女性的な部分があったので、複雑な気持ちでした。当時は異論を唱える人がいなくて、周りと足並みを揃えるのが当たり前。でも大人になってから思い返すと、結構つらかったなって思います。 

山崎ナオコーラさん(以下、山崎) 私はランドセル。私が小学生の頃は赤と黒の二択で、「女の子は赤いランドセル」という“当たり前”が子供心にすごくつらかった記憶があります。

ぺえさんと同じように、私の周りにも「黒いランドセルは嫌」とか「リュックがいい」なんて言う子がいなかったので、赤いランドセルを背負う以外の選択肢が見えなかったんですね。

ぺえ 黒いランドセル、嫌だった! でも、「男の子なのに赤いランドセル」という目で見られることで両親を悲しませてしまうような気がして、赤は選べなかったです。

山崎 今は数え切れないほどの色、デザインがあってうらやましいです。

制服を選択制にする動きが起きているのもすごく良いことだと思います。私は制服のスカートも本当に嫌だったけれど、ここでも「女の子だからスカート」以外の選択肢がなかった。周りに同じような考えの子がいるかどうかも分からなかったですから。

でも今は、私の子どもが通っている幼稚園を見ても、そういう“性別らしさ”の固定観念は薄れているように感じます。男の子もピンクの靴を履くし、ひらひらのコスチュームでキャラクターごっこをする。この子たちが大人になる頃の社会はすごく変わっているんだろうなと、希望が持てます。

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履歴書もパスポートも、性別はいらない?

山崎 ぺえさんが、“性別らしい見た目”から解放されたきっかけは何でしたか?

ぺえ 体育大学に通っていたので、そこでも足並みを揃えて短髪、ジャージで過ごしていて、オシャレや個性とは無縁の生活でした。そんな中、就職活動を控えて「将来は、今までできなかったことがしたいな」と考えたときに、ファッションやメイクが一番に思い浮かんだんです。

それで、見よう見まねでメイクしたり、ショートパンツを履いてみたり、自分なりのオシャレに挑戦し始めました。その格好で実家に帰ると、両親から「本当にやめて」なんて言われましたが(笑)。自分らしさを表現できることが楽しくて仕方なくて、何を言われてもびくともしなかったですね。

山崎 悩んだり、苦しんだりした結果、自分らしい表現に辿り着いたんですね。ぺえさんの言葉には重みがある。

私は26歳で作家デビューしたとき、あまり表に出ない職業だと思っていたんです。それが、新聞や雑誌にインタビューが掲載されると、当時、インターネットが普及し始めた頃だったので瞬く間に写真が広まる。すると、容姿に関する誹謗中傷が次々に出てくるんです。「この顔だから良い作品が書けない」なんて書かれたことも。それが、私が“見た目”について考えるきっかけになりました。

ぺえ 私もネットで、名前と一緒にどんな言葉が調べられてるのか検索しちゃいます。

山崎 ネットで検索しても容姿に関することばかりで、作品のことが全然ない。人に相談しても「気にするな」「見なければいい」と言われて、それが腑に落ちなくて...。そんな環境を変えたいと思って始めたのが、『ブスの自信の持ち方』という連載エッセイです。

そうしたらすごく反響があって、多くの女性が“見た目”のことで悩んだ経験があるんだと知りました。その違和感や苦しみをぶつける場所が今までなかったけれど、今はSNSもあり、誰でも声を上げることができる。

ぺえ 個人が変わる一方で、企業や学校もアクションが必要ですよね。ラックスが“ソーシャル・ダメージケア・プロジェクト”の一環で進めている「履歴書から写真、性別欄をなくす」という取り組み、本当に素敵だと思います。「この性別だから、この職業だからこういう見た目じゃなきゃいけない」なんて、絶対にない。

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山崎 素晴らしい試みですよね。パスポートの性別欄もいらないと思うんです。

ぺえ 私、海外旅行のときいつも引っかかりますよ。パスポートはメイクをしている写真なのでスッピンで行くと「ん?」となる。まあそれは仕方ないとして、次に爪を見られて、「お前は女か?」と。「男です」と言っても、ネイルアートをしているというだけで信じてもらえない。

山崎 “性別らしい見た目”の偏見ですよ。私は作家になったはずなのに、「女性作家」という見方しかされない。容姿もそうだし、作品に対しても「女性作家だからこういう表現をした」というような批評がされる。そういうものから逃げたくて、作家活動では「性別非公表」にしてるんです。

 

無意識に染み付いた“性別らしさ”

 ぺえ 今、就職活動の時期ですけど、リクルートスーツも選択制になればいいのに。みんなが同じ格好で面接に来て、どこからその子らしさを見つけているんだろう?

山崎 女性がパンプスを強制される職場があるというのが話題になりましたが、男性だからネクタイをしなきゃならない、というケースもありますよね。男だから、女だからという考えが変。したい人がすればいい。

雑誌を見ていても、違和感を感じます。「〇〇と打ち合わせだから、デキる女風に」「××と会食の日は、可愛らしさを出して」というような提案、ありますよね。オシャレの参考にはなるけれど、パンプスを履いた方が威厳が出るとか、目上の人がいるから可愛らしくとか...。見た目に「礼儀正しさ」は必要だけど、 “性別らしさ”は関係なくないですか?

ぺえ それって、無意識に染み付いたものだと思うんですよ。私がこういう格好をし始めた時に両親が「嫌だな」と感じたように、親は子どもにこんな男の子、女の子であって欲しいという気持ちがある。だから、親を悲しませないように足並み揃えよう、って思う子が多いのかなって。

山崎 親世代も、少しずつですが変わってきてる雰囲気はあります。

私この間、髪を刈り上げたんです。お迎えで幼稚園に行ったら浮くかな、って心配だったんですけど、ママ友がみんな褒めてくれて。「あれ、こんなにすんなり受け入れてもらえる?」って拍子抜けしたほど。母親だからこういう見た目はダメとか、そういう感覚も変化してるんですよね。

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ぺえ 「〇〇らしく」っていう見た目の押し付けって、その人の内面も作っちゃうと思うんです。

デビューしたての頃、「今日はオネエらしく、毒舌キャラでお願いします」って言われることが結構あって。当時は「イメージ通りに頑張ります!」って必死だったけど、その時に話すことって自分の言葉じゃないし、もどかしい気持ちもあった。

結局、我慢の限界が来て、体調を崩してしまったんです。自分に嘘ついて生きてたということに改めて気づいて、そこからは「自分らしさって、自分で決めるものなんだ」と今の感じになりました(笑)。周りから押し付けられる見た目に合わせて、内面も作られたものになってしまっていたんですね。

 

点と点を結ぶ。SNSが変化のきっかけに

山崎 そういう経験や思いを発信しやすい環境になっていますよね。みんながSNSでちょっとした違和感をすぐに共有できるようになり、社会に点々と存在していた思いがつながって、すごい勢いで社会が変わっています。

ぺえ SNSって自分だけの世界を作れる楽しさもある。リアルでも、自分らしさを表現できるきっかけになるといいな。 

私の投稿、一生懸命メイクした盛り盛りの写真ばかりだったんですけど、すっぴん寝巻き姿を投稿するようになったら反響があって。「頑張らない日があってもいいんだよ」っていう思いが伝わればと思って、晒してます(笑)。 

山崎 ぺえさんの投稿を見て生きやすく感じてる人、多いと思いますよ。

今はメイクの道具も技術も進化して、「努力すれば誰でも可愛く/カッコよくなれる」と思う人が多い。でも、努力の度合いにも個人差があるし、今日はオシャレを頑張る、今日は何もしたくない、ということもありますよね。「いつもこうじゃなきゃいけない」というのは絶対にないし、パンプスもネクタイもメイクも、したい人が、したい時にする。それが当たり前になるといいんですけど。

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ぺえ 実際、パンプスってかっこいいですしね。自分が履きたいと思った時に履くのが、一番「自分らしい」と思います。

盛り盛りの格好するもよし、何も頑張らない日があってもよし、「その日にしたい表現をしている自分が、一番自分らしいんだ」ということを、これからも発信していけたらと思っています。

山崎 ぺえさんのような若い世代がいるのは本当に心強いです。

最初は「自分が生きづらい世界を変えたい」と思って発信し始めたけど、いろんな声を受け取るうちに、「みんなのためにも社会を変えなきゃ」と思うようになりました。今は、誰もが表現者になれる時代。どんなに小さな違和感もアイデアも、どんどん発信して欲しい。そうして、みんなで明るい未来を作っていきたいですね。 

◇◇◇

「性別」「見た目」「年齢」「職業」「家庭」...。さまざまなフィールドに存在する“見えない壁”。

ラックスはソーシャル・ダメージケア・プロジェクトを通じて、こうした壁への「気づき」を発信し、全ての女性が、今以上に輝ける社会の実現を目指していく。