近年、アウトドアレジャーとして、人気上昇中の釣り。釣りを始めたばかりのエントリー層の間では、釣りそのものだけでなく、「釣りのマナー」に対する関心も高まっている。
これまで環境に配慮しながら釣りの魅力を伝え続けてきた日本釣用品工業会は、「マナーを知って楽しく釣りをしてほしい」との想いとともに、様々な施策を打ち出してきた。
7月17日の海の日には、都内の釣り場や公園で釣り人や家族連れなどに、ゴミ袋ならぬ“ギョミ”袋を配布。そこに込められた想いとは?工業会の櫻井孝行リーダーに話を聞いた。
未来から来た釣り人、注目を集める
──釣り客や公園に来た方達に“ギョミ”袋を配布していますが、反応はどうですか?
「未来から来た釣り人」の魚の顔がリアルでインパクトがあり、家族連れに人気でした。非常に暑かったんですけど、スタッフの方たちが頑張ってくださっているのもあり、みなさんに喜んでいただいているようです。
──今回のイベントの他にも、日本釣用品工業会ではいろいろな取り組みをしていますね。これまでどんな取り組みをしてきたか、どのような成果があったかについて教えてください。
マナーを守った上で釣りを楽しんでもらえるよう、「てはじめにマナー」というキャッチコピーのもと、マナーの広報により一層力を入れています。。釣具店などでポスターを貼ってもらったり、ステッカーを配布したり。また、特設サイトで待受などもダウンロードすることもできます。
この「てはじめにマナー」、釣り人には、だいぶ浸透してきているんじゃないかなと思っています。実際に「ポスター見たよ」という声もよく聞きますね。釣具店の方たちがいい場所にポスターを貼ってくださっていて、ありがたいです。
──デザインもキャッチーですね。他にイベントなども開催しているのでしょうか??
昨年、お笑い芸人・ミキの亜生さんを釣りマナー向上大使、昴生さんを釣りマナー向上サポート大使に任命するイベントを開催しました。テレビ、新聞、Webなどのたくさんニュースに取り上げられました。
亜生さんは本当に釣りが大好きで、いろいろなところで「マナーを守ろう」と言ってくれていますし、昴生さんはこのイベントがきっかけのフューチャーフィッシャーという言葉でTwitterでバズッたりしていて、非常に良かったなと思います。
人気タレントの起用がヒット
それから、動画メディア「Tasty」では、釣り・料理対決を実施しました。
昨年はタレントの杉浦太陽さんと第13代アングラーズアイドル(※)の神野梓さんが、今年はDa-iCEの大野雄大さんと第14代アングラーズアイドル西村美穂さんが対決しました。
※日本釣用品工業会がプロデュースする釣り業界のイメージガール
──反響はどうでしたか? どちらの動画対決でもかなり釣れていましたね
第1弾、2弾とも反響はかなりありました。著名なタレントさんを起用したこともあり、「マナーを守れば、釣りがもっと楽しくなる」ことを、多くの方にお伝えできたんじゃないかなと思っています。
Da-iCEの大野さんは、真鯛対決だったのに、トラフグまで釣っていましたね。東京湾で釣れることは結構珍しいんですよ。
そのほか、インターネットメディア「BuzzFeed」で「【激ムズ】釣り好きにしかわからない用語クイズ」を実施しました。こちらは、ライトな切り口がウケて、釣り好きを中心に反響がありました。
さらに、意義のある広告だと認められて、コンテンツマーケティングの情報サイト「広告朝日」に成功事例として掲載されたんですよ。
──なるほど。本当に様々な取り組みをしていますね。これらに取り組む中、浮き彫りになった課題などはありますか?
課題というよりも、「マナー啓発」というのは非常に地道な活動なので、少しずつやっていくしかないんです。「ゴミを持ち帰って楽しく釣りをする」。これを当たり前のようにみなさんがやってくれるようになればいいなと思っています。
積極的にイベントなどをやることも必要ですし、やっぱり地道に活動をしていってそれがだんだんとじわじわっと広がっていくのを期待しています。
“ギョミ”袋誕生秘話
──今日のイベントで配っていた“ギョミ”袋について教えてください。どんな製品ですか?
普段、釣りのゴミは、コンビニとかで何かを買った時のビニールを使って持って帰る方が多いんです。でもビニールがない時に、このカプセルケース型の“ギョミ”袋に自宅にあるレジ袋などを入れて携帯しておくと、ゴミを入れて持ち帰ることができるんですよ。カラビナがついているので、リュックなどにつけることができて便利です。
──なぜ“ギョミ”袋を制作しようと考えたのでしょう?
マナー啓発の施策について、半年間くらい、みんなでいろんなアイデアを出し合ったんです。その中で一番いいなと思う“ギョミ”袋に決めました。個数もたくさん配れますし、携帯できて使いやすいんです。しかも何回も使えますし。
この“ギョミ”袋が、釣りのゴミを持ち帰るきっかけ作りになればいいなと思っています。
もちろん、釣り人ではない方に使ってもらうのも大歓迎です。日常生活のゴミを拾うときにも使ってもらえれば。
マナー啓蒙は一日にしてならず
──今後の釣用品工業会の取り組みについて教えてください。
昨年に引き続き、秋に第2回マナー向上大使任命のイベントをやる予定です。それから、来年の1月には、パシフィコ横浜で釣りフェスをリアルで開催します。
──昨年のミキのお二人に続き、どなたが任命されるのか楽しみです。最後に、読者の皆さんに向けて伝えたいことはありますか。
人と人が暮らす社会だと、あらゆる場面でマナーが大切になってくると思うんです。
人類の歴史に寄り添っているともいえる釣りという文化、最初はおそらく自然に対するマナーから始まっているんだと思います。「魚を取りすぎない」とか「食べる分だけ取る」とか。人々は、自然を敬いながら釣りをしてきました。
もちろん今でも釣りの自然に対するマナーはとても大切です。さらに現代社会だと、他者との共存や関わり合いが必ずあるので、他者へのマナーもとても大事だと考えています。
──未来のためにも、もっと知ってもらいたいですね。
今回の“ギョミ”袋の配布イベントでは「ゴミの持ち帰り」を通して、自然に対して、さらに他者に対してのマナーの普及を啓発させていただいています。今の時代に、今の人たちにどうお伝えするのか。日本釣用品工業会は真剣に自問しています。
ただ「マナー啓蒙は一日にしてならず」です。もしかしたら一業界だけじゃなく、日本全体での教育の取り組みに関わることなのかもしれません。
今日の一歩(イベント)で、多くの方々が同じように一歩踏み出していただけたらきっと未来は開けるのではないかと強く願いつつ、これからも地道に活動を続けていきたいと思っています。
(撮影・西田香織)
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