基礎化粧品と一口に言っても、その種類は実に豊富。ドラッグストアや百貨店にはさまざまなアイテムが並んでいて、どれを選べばいいか悩ましい方も多いのではないでしょうか。今回は、皮膚科医の赤池智子先生に「基礎化粧品の正しい選び方」について聞きました。
本当に必要な基礎化粧品って何?
多くのコスメブランドが、化粧水や乳液はもちろん、クリームや美容液、導入美容液、アイクリームなど多彩なアイテムを揃えています。これらのアイテムはすべて使ったほうがよさそうな気がしますが、実際のところはどうなのでしょうか。
「基礎化粧品で一番大切なのは、化粧水と乳液です。それにプラスしてクリームや美容液を取り入れてもいいですが、これらはサブアイテムと言っても過言ではありません」
DRESS世代はその多くが乾燥していて、スキンケアで最も大事なのは化粧水であることは、「脱・乾燥肌! 化粧水の使い方がキモになる「正しい保湿」をおさらい」でお伝えした通りです。水分をたっぷりと与えて乳液かクリームで閉じ込めれば、それだけでOKと考えると、スキンケアそのものはシンプルでいいというわけです。
■基礎化粧品を選ぶときの注意点は?
では、必要な基礎化粧品を購入するとき、どんなことを意識して選べばよいのでしょうか。それぞれのポイントを赤池先生にお聞きしました。
・化粧水
とにかくたっぷりと惜しみなく使えるものを選ぶことが大切です。乾燥が強い方はとろみやにごりの強いものを好まれる方もいらっしゃいます。それでもなかなか改善せず悩んでいる方は、あえてサラサラとしたテクスチャーの水分タイプの化粧水をたっぷりと、手のひらが頬に吸い付くようになるくらい使ってみるのがおすすめです。
・乳液
乳液は化粧水で与えた水分を保つために使うアイテムで、皮膚を柔らかくする作用もあります。好みのテクスチャーや使用感のものを選んでください。
・クリーム
しっかりしたクリーム特有のテクスチャーが好みの方、乳液を塗っても乾燥が気になるような方は取り入れてみてください。ハリやシミに特化したもの、目の周りなど部位別のものなどがあるので、お好みで選んでください。
「高価なものよりも、無理なく買い続けられる価格帯のものがベスト。ケチらずにたっぷりと使えるものを選んでください。また、肌に直接つけるものなのでどれだけ高価であったり評価が高いものでも、ご自身に合うかどうかは別のお話。心地よく使えるものを選ぶことも大切です」と赤池先生。
毎日使うものだからこそ、ストレスなく使えるものを見つけたいですね。
■自然派、オーガニックだから良いわけじゃない
天然由来、オーガニック、ハーブ配合などと銘打った化粧品は、低刺激なイメージを持たれがち。
「もちろんよい商品もたくさんありますが、天然成分だから絶対安心、ということはありません。ハーブで接触皮膚炎を起こしてしまう人もいます。イメージに惑わされるのではなく、自分の肌につけた実際の感覚で選び抜くことが何よりも大事です」
かゆみや赤みなどが起こるアイテムは、肌に刺激を与えている可能性があります。
サブアイテムを選ぶときの注意点は?
美容液や導入美容液、アイクリームなどのサブアイテムは、どのような基準で選べばいいのでしょうか。それぞれのポイントを見てみましょう。
■美容液は可能なアプローチを把握したうえで購入を
ハリ感が減っている、シミが気になる......そういった個々のお悩みを解消したいと思い、美容液を使う方も多いでしょう。ただし、美容液がカバーできる範囲には限りがあるようです。
「美容液など化粧品で加齢による真皮、皮下組織のたるみを改善するのは難しいですが、乾燥によるハリの低下や目の周りのちりめんジワにはアプローチできるでしょう。化粧水と乳液(クリーム)で基本のお手入れをしっかりとしたうえで、お好みでプラスしてください」
加齢によるたるみやほうれい線は、真皮に存在している膠原(こうげん)線維、弾性線維が紫外線などの影響、加齢などで変性してしまうことが大きな原因だそう。
たるんでしまってから日常のケアで元に戻すのは難しいので、乾燥しないように、また紫外線を浴びすぎないよう、日頃のお手入れで予防することが大切です。
「日焼けで一時的に黒くなってもしばらくすると自然に元に戻るように、表皮の基底層でメラニンが一時的に増えただけであれば、肌のターンオーバーによって改善します。
ただ加齢とともにターンオーバーが滞ったり、強い日焼けなどで炎症が強くなったりしていると、表皮基底層だけでなく真皮にメラニンが沈着してしまいます。これは私たちが『しみ』と呼んでいるもので、医学的には老人性色素斑や炎症後色素沈着といい、化粧品だけで対処するのは難しいでしょう」
加齢による変化は自然なので病気ではありません。極端に気にしすぎず、日々楽しくいかに年を取っていくか、自分と付き合っていくか、肌をきっかけに考えるのもいい機会かもしれないですね。
それでもこういったしみがどうしても気になる方は、レーザーやハイドロキノンクリームなどを使うことになるそうです。
■導入美容液は必要性を感じたら使う
化粧水の前に使用することで、化粧水が肌に吸収されやすくなる導入美容液。その中に取り入れたい成分が入っていたり、必要性を感じたりする場合は、お好みで取り入れてください。
■目元のケアを重視するならアイクリームを
目の周りの皮膚は他の部位よりも薄くてデリケート。しかも、普段からまばたきや表情などで動きが多いことに加え、常に光や外的な刺激を浴びたりメイクしたりと、負担を受けやすい部位でもあります。
「目元の皮膚は日頃から酷使しているだけでなく、乾燥もしやすい部位です。アイクリームはマストではありませんが、目元周囲に悩みがある方は取り入れてもいいと思います」
肌タイプ別、基礎化粧品の選び方
赤池先生はDRESS世代の肌タイプを大きく下記の3つに分類しています。詳しくはチェックリストをご覧ください。
・極度乾燥肌タイプ
・乾燥脂混合肌タイプ(極度乾燥肌タイプが、脂が出て悪さを始めているタイプ)
・普通肌タイプ(問題ない肌)
基礎化粧品の基本的な選び方はいずれのタイプも同じですが、肌タイプ別に注意したいポイントがあるようです。ここでは、それぞれのポイントについて見てみましょう。
■「極度乾燥肌タイプ」は水分をしっかりと入れる
「オールインワンと言われているものや、乾燥のために保湿クリームをたくさん使っていますという方も多いです。まずは、そういったアイテムの前にサラサラとした化粧水でたっぷり水分を肌に浸透させてあげてください」と赤池先生。
前述の化粧水の選び方を参考に、水分ベースのアイテムにするとよいでしょう。
■「乾燥脂混合肌タイプ」は生活習慣の見直しも
頬は乾燥していても鼻や額の皮脂が気になる方は、乾燥の他に生活習慣に問題が潜んでいることもあるようです。
「徹夜や不規則な生活、食事のバランスなどが原因となって、皮脂が過剰に分泌されている可能性もあります。まずは生活習慣を見直してみると、肌への変化が見られるかもしれません」
鼻周りの化粧崩れが気になる方は、その部分に化粧水でたっぷりと水分を与えてみてください。そのうえで、手のひらで温めた乳液やクリームを塗るとよいでしょう。
■「普通肌タイプ」は適切な使い方をマスターして
肌に問題を感じない方は、大幅な見直しは必要ありませんが、保湿をしっかりとできるように適切なアイテムを選ぶことが大事だそう。
「適切なものを適切な量で適切な方法をもって使うことによって、しっかりとした土台をつくりましょう」と赤池先生。ためらうことなくたっぷりと使えるアイテムを用意したいですね。
皮膚科医が実際に使っている基礎化粧品とは......?
皮膚科医が実際にどんなアイテムを使っているのか気になるもの。そこで、赤池先生が実際に行っている化粧品の選び方を聞いてみました。
「私は基本的に化粧水と乳液を使っています。それに加えて、乾燥が強いときなどはオイルや米麹が配合された導入美容液も時々使用しています。米麹は日本人の肌に合うと言われる成分のひとつで、保湿効果が高いのを実感しています」
基礎化粧品選びで大切なのは、無理なく楽しく続けられるものを選ぶこと。高価な化粧品や高機能といわれるクリームは、使うと美肌になれそう......と魅力的に感じるかもしれませんが、重要なのは金額ではありません。
毎朝晩のケアに使うものだからこそ、肌にたっぷりと与えられるかどうか、肌に本当に合っているか、継続してできるかを基準に、自分の肌を輝かせてくれるものを選んでくださいね。
監修/赤池智子
医師、内科/皮膚科医。内科認定医。2006年準ミス日本。
患者の視点に立った医療を行うことを何よりも大切にし、論文執筆、学会発表と共に日常診療を第一に行っている。
2006年準ミス日本の経歴も生かし、女性ならではの視点から正しい医療知識に基づいた女性の病気、健康、美容に関する情報も発信し定評がある。
Text/古賀令奈
(2018年2月18日DRESSより転載)