ロジカル人生相談で悩みに取り組もう!

熟断思考を例えばどんな課題に適用してどんな結論が出るのかを、まずはザックリとしたイメージを持ってもらうために、ケースをあげて簡単に紹介しましょう。
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lots of choices and decisions...
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第2回【スタンフォード流、インテリジェントエイヤ!で日本企業とビジネスマンを強くする!】

私は企業の意思決定のアドバイザーを専門としているのですが、性格上、人に安心感を与えるからか、友人・知人から個人的かつ多種多様な悩み事・相談事が持ち込まれます。

そういった相談ごとに対して、ロジカルに、そして同時に相手に対する共感と尊敬を持ちつつ、熟断思考を活用して相談に乗ってあげると、2~3日後には見違えるように「スッキリと決められた!」などと言ってきます。

これが、籠屋流「ロジカル人生相談」です。

ロジカル人生相談で納得感の高い意思決定が可能に

ディシジョンツリーについては第1回の記事で軽く紹介しましたが、熟断思考を例えばどんな課題に適用してどんな結論が出るのかを、まずはザックリとしたイメージを持ってもらうために、拙書『スタンフォード・マッキンゼーで学んできた熟断思考』(クロスメディアパブリッシング)の中で取り上げたケースについて、「最初の状況」「検討取組み」「最終結論」を簡単に紹介しましょう。

最初の状況:

中堅メーカーに勤める主人公が、新規事業を企画したが、上司が理解してくれず、いっそのこと独立起業してこの新規事業を立ち上げようかと思い立ちます。

しかし、事業がうまく行かなかった場合の経済的損失のみならず、その後の就職や生活の不安、また今の会社への愛着といった様々な要因を考えると、果たしてこれからどうしたらいいのか、という真剣な悩みを抱いています。

検討取組み:

主人公は、知人のディシジョンアドバイザーの助力のもと、熟断思考でこの問題に取り組みます。

その中で、当初は念頭になかった新たな選択肢が浮かび上がってきたり、各選択肢を選んだ後に出てくる不確実要因の明確化ができたり、何が本当に自分にとって重要な価値判断基準なのか、といったことが、明確に認識できるようになりました。

最終結論:

主人公は、はじめはほとんど考えていなかった『社内ベンチャー制度への応募』をまずは選択し、それがうまく行かなかった場合には、独立起業に踏み切る、という方針を取ることにしました。

万一この新規事業がうまく行かなかった場合でも、その経験が次の仕事や待遇に生きることで、生活不安のシナリオはそれほど 深刻にはならないだろうこと、家族も自分のやりたいことを応援すると言ってくれていること、そして自分の夢を今時点で諦めてしまいたくない気持ちが強いことから、高い納得感をもって決心することができた、というケースです。

実践練習で熟断思考を身につけよう!

熟断思考は、上のケースからもわかるように、比較的シンプルなアプローチで、ロジカルかつ感情的要素も扱えることで、納得感の高い意思決定を手助けしてくれます。

最終的な結論については、今回のケースでは、「ちょっとよく考えていれば、最初からこの結論は見えてたんじゃないの?」という感じを持たれたかもしれません。

しかし実際には、こうした思考法を知らなければ、悩みの当事者は暗中模索・五里霧中状態で、なかなか全体構造を把握することすら難しいものです。

熟断思考は、誰でも理解し身につけられるシンプルな方法論です。

しかし当然、練習は必要です。自転車の乗り方を口頭や文書で教えてもらい理解するのは簡単ですが、実際に乗りこなせるようになるには、実践練習の試行錯誤や、このケースのような先輩からのちょっとした助言が有効だというのと同じことです。

このブログを読んでご興味を持った読者は、ぜひ『スタンフォード・マッキンゼーで学んできた熟断思考』を読んでみてください。

そして、実践練習で行き詰った場合は、良かったら私のホームページ(http://decision-mind.com/)にある連絡シートを使って私にご連絡ください。

双方の事情が許せば、私がディシジョンアドバイザーとして面談しつつ、熟断思考を適用して助言させて頂きます。

私としては、そうしたケースを(もちろんご本人に迷惑のかからないように修正・編集した上で)、またこのブログで紹介できることを願っています。

それによって、少しでも多くの方々が熟断思考に対する理解を深め、イメージを湧かせて、ご自身でトライする際の助けになればと考えるからです。

まずは個人の意思決定で、熟断思考を学ぶ

ちなみにここで、私がここまで何故、企業でなく個人の意思決定に的を当てて説明してきたかについてお話しておきます。

私の仕事は、企業が熟断思考の考え方を適用して戦略課題に取り組むのをお手伝いすることなのですが、熟断思考の考え方は個人の意思決定にも応用できます。

そして、企業の戦略課題が非常に複雑で不確実要素が多く、様々な関係者がいるのに対し、個人の意思決定は非常にシンプルであり<自分でコントロールできる部分が多い>ため、最初に熟断思考を学んでいただくのにぴったりだからです。

もう少しご説明すると、企業の戦略課題においては、意思決定項目の数が多く、不確実要因も多数あり、また組織として様々な関係者がかかわってくることからトレードオフ(「あちら立てればこちら立たず」関係の判断)も含めて価値判断尺度の扱いも一筋縄ではいきません。

その点、個人の問題や悩みなら、意思決定項目も不確実要因も、企業のそれに比べてずっと数が少なく、また複数の価値判断尺度はあるものの一人の人の頭と心のなかでのトレードオフ判断による「トータル嬉しさ総額」が考えやすいので、扱いも理解も相対的にシンプルなのです。

前回紹介したディシジョンツリーを使うにしても、企業の複雑な課題にいきなりディシジョンツリーを適用しようとすると、ツリーの構造が複雑すぎてハンドリングできない、という問題も出てきます。

以上、なぜ個人の意思決定に焦点を当てたかについての解説の含めて、熟断思考の概要をご紹介しました。

次回は、熟断思考の特徴や意味合いについて、「KKDD(=勘と経験と度胸とど根性)と『インテリジェントエイヤ!』」と題して、ご説明したいと思います。

なお、これまでの記事と次回以降のテーマは以下の通りです。

第2回:ロジカル人生相談で悩みに取り組もう!(←本稿)

第3回:KKDD(=勘と経験と度胸とど根性)と『インテリジェントエイヤ!』

第4回:「スピーディ」な意思決定は間違い!?

第5回:「スローガン経営とチアリーディング」の限界と弊害

第6回:「英断」を期待するのではなく、「意思決定の質」を上げよう! 誰にでもできる6つのコツ

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