佐賀県にある醤油メーカー・宮島醤油が、8月19日、同社の工場で液化天然ガス(LNG)の利用をはじめた。朝日新聞デジタルによると、高さ12メートル、容量60キロリットルのタンクを設置し、これまでの重油に代わって運用を始めたという。従来に比べ、3割程度のCO2削減を見込んでいる。
佐賀新聞によると、設備投資額は2億6千万円で、うち6千万円は経産省の補助金を活用するとのこと。原発稼働停止によって火力発電の比重が高まったことや、円安の影響もあって天然ガスと原油との価格差が縮まってはいるが、「石油と比べ、ガスの産出地は世界中に広がり、供給が安定している。長期的にはガスが優位だと考えている」と宮島清一社長は話しているという。
■日本における脱重油の動き
国内における重油からLNG燃料への移行の動きは活発だ。国連が2020年にも船舶の環境規制を強化するのに対応するため、政府は重油の代わりにLNGを燃料とする『天然ガス燃料船(LNG燃料船)』の普及を目指している。東京製鐵は、製造工程に、重油の代わりにLNGへの燃料転換を行っている。これらのLNGを運ぶ為LNG運搬船も、今後、発注が大量に見込まれるとの見方もある。
需要増を受け、政府はLNGの安定的な獲得を行うために、関係各国との連協強化に動いている。安倍首相は今月24日から、LNG輸入量の約3割を輸入している中東を訪問。バーレーンのハマド国王は、天然ガスなどの開発に乗り出す考えを示し、「権益獲得も含めて日本が入って来る余地があるので前向きに検討してほしい」と話したとされる。
また、安倍首相は、来月23日カナダを訪問し、新型天然ガス「シェールガス」の供給問題をめぐって意見交換する予定だ。
■LNGへの転換は、家庭への電気料金を下げるのか
LNG需要の増加は、輸出国から見ると売り手市場。ガス産出国からは足元を見られ「ジャパン・プレミアム」という高値外を強いられているというが、米国からシェールガスを輸入した場合には、3割以上割安になるとも言われている。
家庭向けの電力自由化においても、石油にかわってLGNでの火力発電業者が増加すると見られており、東電の一社独占状態とくらべて、電気料金は安くなるのではないかという声もある。一番コストが安く上がる石炭での発電は環境面から考えて参入しにくいためだ。
これらのLNGによる発電が、家庭の電気料金の値下げにつながるかという点に関しては、疑問が残るとの見方もある。東京財団上席研究員・石川和男氏は、LNGタンクを保有し、LNGを輸入しているのは、主に電力会社(日本全体の6割超)と都市ガス会社(同3割超)という点に着目。家庭向け電力の自由化が行われても、その上流工程を電力会社が握っていることになる点を指摘している。
重油からLNGへの移行をどう考えますか?あなたの考えをお寄せください。
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