こんなニュースが今日掲載されていた。
ニュースの概要としては、住民票を親元に残したまま他の自治体で寮生活をしている高校生が、
不在者投票を行おうとしたが、行えなかったというもの。
実はこれまでも住民票と一人暮らし学生の投票権に関しての様々な問題は指摘されてきている、
実態と問題点、そして解決策についてまとめてみた。
【概要】
大学への進学(冒頭の記事のように高校生も)を機に親元を離れ、下宿などを始めたが、住民票を転出先の自治体に移すという手続きを行っていない学生と選挙の話。
選挙の時には今住んでいる場所に選挙の際の入場券は送られず、住民票のある実家に届く。
それによっておこる問題点は2つ。
①選挙に行くことのコストが高くなり、結果として選挙に行かないという選択肢をとる可能性が高いこと。
なぜなら、どうしても選挙に行こうとすると実家に戻り投票に行くか、郵便で遠隔から投票できる不在者投票制度を使うかのどちらかになるからである。
②また、さらに問題なのは、不在者投票を行おうとしても、住民票のある実家の自治体から"生活実態"のなさを原因に投票を拒否されてしまうことがある。
これが概要だ。この記事では主に②の部分の問題点について書いていく。
【問題点①多くの一人暮らしの学生が住民票を移していない】
実際、親元を離れて暮らしているのに、住民票を移していない学生は相当割合いる。
明るい選挙推進協会が2015年6月に行った調査によると、63.3%の一人暮らしの大学生は住民票を移していないそうだ。
10年ほど前に自分が大学生であった頃の周囲の友人と話をしていた感覚ともそんなにずれていないので、今に始まった状況ではないのかなと思う。
住民基本台帳法によれば「住所が変わってから14日以内に住民票を変更すること」と定められており、法律で住民票を移動させるべきと規定されているのだ。
【問題点② 原則住民票のある自治体での投票を想定されている制度であることを知らない】
そして、選挙人名簿への登録も基本的には住民票をもとに決められる。
(3か月以上の居住の必要性などの要件があるので原則と表記した)
しかし、NHKの調査によれば18・19歳の半数以上が"住んでいる自治体に住民票を移していないと、その自治体で投票することができないことを知らないという。おそらく、これらの方の多くは原則的には引っ越しの際に居住地に住民票を移す必要があることを
知らないだろう。
しかし、引っ越したとしても"居住実態"が実家にあるのであれば、住民票を現在住んでいる場所へ移さなくてもよいという解釈もある。
卒業後にも、引き続き実家に帰らないと決めている学生などは当てはまらないが、長期休暇などはしっかりと実家に帰っているという学生などは居住実態は実家にあると認められるそうだ。
なにはともあれ、住民票を実家に置いたままで遠隔の地で一人暮らしをしている学生は、不在者投票制度を使って投票することが現実的だろう。片道1時間ぐらいであれば帰省がてら投票場にい足を運ぶこともできるかもしれないが。
不在者投票制度については総務省のHPに以下のように書かれている。
仕事や旅行などで、選挙期間中、名簿登録地以外の市区町村に滞在している方は、滞在先の市区町村の選挙管理委員会で不在者投票ができます。
ということで、たまたま何らかの用事で住民票のある場所以外のところに滞在している人を想定した制度で、郵便を使うことにより投票が可能になる。
この制度を使って一人暮らし学生も投票をすることが可能である。実際に多くの自治体で不在者投票促進のキャンペーンを行っている。例えば、横浜市では、住民票を移していない学生に対して不在者投票の利用を進めるリーフレットを各大学に配布したようだ。
【問題点③:しかし、市外に居住している学生の投票を禁じる自治体もある】
ところが、このような学生の不在者投票を認めない自治体もある。
高知市の選挙管理委員会はHPにこのように書いている。
高知市に住民票を置いたまま市外に出られた場合には,高知市の選挙人名簿に登録があり,選挙の際に入場券が届いたとしても,選挙人名簿に登録されるべきでなかった者として,高知市では投票(期日前投票及び不在者投票を含む。)することができません。
詳細は省くが昭和29年(はるか昔)の最高裁判決が根拠となっていての判断だ。
居住実態が住民票をおいてある場所にないと捉えている自治体に住民票を置いたまま、他所で一人暮らしをしている人は、いずれの場所でも投票できなくなる。
本件冒頭の記事がまさにこの事例である。
【問題点④:原則住民票を移すということを伝えずに不在者投票を呼び掛けることへの違和感】
若年層の投票率の低下や18歳選挙権に関わり、このような一人暮らし大学生に対して、不在者投票制度の周知を図ることにより、投票率の向上を図ろうとする動きが多くある。
先述の横浜市の事例もその一つなのだが、基本的には「住民票を移す」としたうえで、やむをえない場合は「不在者投票」の利用をと知らせている。
しかしながら、住民票を移す必要があることを知らせずに不在者投票制度の利用のみを発信しているものもある。
例えば、一橋大学の教授が先導して行っている「100% GO VOTE」という団体は、住民票を移すことが原則であるということを作成しているチラシの中で、全く伝えていない。
チラシの詳細はこちらから→
住民票を移すことは災害などの際の安否の把握なども関わり、必要なことであるだけに、伝えるべきことだと自分は思う。
【今後の検討事項】
①;住民票を移していない学生が大半であることを直視する
最高裁判例がでた昭和29年とは全く実態が違う。多くの学生が住民票を移していない。
このことを前提で制度をどのように作っていくかを考える必要がある。
厳密に住民票を移すことを求めていくのか、生活実態の判断をどうするのかなどを考えるべきだ。
おりしも今日安倍首相が不在者投票制度を使い投票を行ったそうだ。
山口県に住民票をおいてあるが、おそらく年に数泊しかしないのではないだろうか。
それでも生活実態は住民票のある山口にあるとの判断があったから不在者投票が出来たのだ。
冒頭の記事の高校生はおそらく長期休暇などを考えると数泊以上は実家に戻っていると推測されるのだが、投票を認められなかった。
生活実態をどのようにとらえるのかを考え直す必要がある。
②:自治体ごとの対応の違いを作らせない
また、各自治体によって、対応が違うことが大きな問題である。
前述の高知市のような対応をする自治体に住民票を置いてある街に実家があるがゆえに、投票ができないというのはおかしな話である。
総務省が共通見解をしっかりとだし、運用を進めていかなければならない。
【最後に】
冒頭、少し触れただけだが、住民票との関連により投票することが困難(あるいは不可能)な学生が多くいる。結果として若者の投票率を引き下げている可能性がある。
また、実は同自治体に3か月以上住んでいなければその自治体の選挙人名簿に登録されない問題もある。つまり、入学と同時に進学先の自治体に住民票を移していても、実家の自治体での投票(実家に帰っての投票あるいは不在者投票)が求められることも投票のハードルをあげる一因となっていると考える。
厳密な運用を考えつつも現在の生活実態とも合わせたうえでの投票制度を改めて構築する必要がある。
自分も引き続き頑張っていきます。
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