2019年の流行語大賞は、日本開催となったラグビーワールドカップで話題になった「ONE TEAM」に決まった。
多様なルーツを持つラグビー日本代表の選手たちが、文字通り一体となって世界の強豪たちと熱戦を繰り広げる様子は、国民的な注目を集めたし、ほかにも「タピる」「闇営業」「令和」など、今年の世相を反映する単語たちが選ばれた。
同じ頃、お隣の中国でも2019年の流行語トップ10が発表された。共産党一党独裁の国らしく、習近平国家主席の発言からもランクインしたが、中には中国社会の「疲れ」や「生きづらさ」を反映したものも多い。
■「もうキツい」に共感
中国版2019年の流行語は現地文芸誌が選定し、12月2日に発表している。
まず、エンタメ関連。「ハードコア(硬核)」や「アイデアを取り込む(融梗)」などが選ばれた。
このうち「ハードコア」は、元は過激で荒々しい表現方法の音楽を指す(デジタル大辞林)。中国ではその意味が転じて、「(ゲームなどの)難易度が高い」「凄い、逞しい」などに変わり、汎用性の高い言葉としてネットユーザーに愛された。
目を引くのは「生きづらさ」を象徴するような単語たちだ。
まず「996」。「朝9時から夜9時まで働く生活を週6日」という意味。中国でのブラック気味な労働環境を示す単語で、3月には「996を続けていたらICU(集中治療室)行きだ」という運動が、システムエンジニアを中心にネット上で巻き起こった。
「996」だったらまだマシじゃないか、と感じる日本の企業戦士たちもいるかもしれない。ただ、中国のIT企業も未明まで窓の明かりが消えないことも多く、実態は数字以上に厳しいようだ。
996はアリババグループの創業者、ジャック・マー(馬雲)が肯定的に捉える発言をしたことで、さらに知名度を上げた。マーはネットで批判にさらされ「996ができる人は、情熱を注ぎこめる仕事を見つけた人だ」などと釈明せざるを得なくなった。
続いて「もうキツい(我太難了)」。現地で投稿されたショート動画がきっかけで流行った。原文は「もうキツい。最近ストレスがやばい」というもので、シンプルで意味の分かりやすいこのワードは、ストレスを抱える現代人の共感を得て拡散された。
また、中国では「難しい」と「南」の発音が同じことから「我太南了」といった言い換えも流行った。
「キツい」状況にある人たちが、SNSで他人のリア充ぶりを見せつけられたどう思うだろうか。そんな時に使える流行語が「檸檬精(嫉妬にかられる)」だ。
他人を羨み、嫉妬する時に胸を締め付ける「すっぱい気持ち」を表した言葉だ。
■国を挙げて推進
そのほかには、習近平国家主席が国を挙げて開発を加速させることを宣言した「ブロックチェーン」や、米中貿易摩擦が続くなか、アメリカを皮肉る「覇凌主義(いじめっ子主義)」などがランクイン。
また、バラエティ番組から人気が出た「お前がどう思うかは関係ない。俺がどう思うかだ(我不要你觉得,我要我觉得)」なども選ばれた。