スウェーデン人は8歳で男女一緒に「生理」を学ぶよ。 LiLiCoの「もっとホンネで話そう。私たちのこと」

性の話がタブー視されない国で育ったLiLiCoさんが見る日本の「生理」
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LiLiCoさん
Yuko Kawashima

スウェーデンと日本と、ふたつのアイデンティティーを持つタレントのLiLiCoさん。30年前に来日して以来、独自の視点で日本を見つめ続けてきました。そんなLiLiCoさんが、世間を騒がすイシューからプライベートの話題まで、ホンネで語る連載を始めます。 

第1回のテーマは、2019年にSNSで議論になったトピックのひとつである「生理」。日本では長くタブー視されてきた「生理」や女性のカラダについてLiLiCoさんはどう考えているのでしょうか。

 

スウェーデンでは8歳で男女一緒に「生理」を学ぶ

 

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Yuko Kawashima

日本ではいま、SNSを中心に「生理」に関する議論が巻き起こっていますよね。正直なところ、遅すぎる。私が育ったスウェーデンは性教育が盛んな国なので、余計にそう思いますね。

スウェーデンで性教育が始まるのは、小学校2年生(8歳)から。 

男女一緒の教室で、生理について、出産について、性行為について、ビデオを観たり、教科書を読んだりして学びます。「命が作られるための大切なものだよ」って。

生理については、ビデオを観ながら、「女性は子どもを作る可能性のある体を持っているので、月に一度生理になる」という説明を受けました。

性行為なら、教科書に載っていた裸で重なっている男女の写真を今でも覚えてる。腰のあたりにアドベントカレンダーみたいな扉があって、それをめくると性器がどういう形で挿入されるかイラストが描いてあるの。コンドームの付け方も、12歳ぐらいまでには授業で習ったはずです。 

だから、スウェーデン人にとって、生理および性はタブーではないし、子どもであっても「生理は女性にとって当たり前の現象であって、恥ずべきものではない」という認識を持っているんです。生理中の女性に対して、不快感を示すようなことはしない。

確かに、10歳ぐらいになると、女子がプールの授業を休んだりすると、「あいつ生理でしょ」とコソコソ話す男子もいました。でも、「生理は、大人になったときに子どもを産めるようにする準備だから」ってたしなめる子の方が多いんです。

日本でも、もっと学校で生理について教育をしたらいいのに。小さいときは「パパになりたい」「ママになりたい」なんて本気では思っていないかもしれないけど、男女ともに生理がどれだけ女性の体にとって当たり前のことかを知ってほしい。文字通り「生理現象」なんだから。

先生たちも、生徒のために(性について)オープンになる勇気を持ってほしい。 

もし男子が女子をからかうようなことを言ったら、「ダメだよ。あなたたちが父親になるためにも大事なことなんだよ。調べて理解しなさい」って注意するぐらいのことはしてほしいですよね。

 

少女マンガで生理を学べる時代がやってきた!

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Yuko Kawashima

一方で、最近「日本もやっと海外に追いついたんだ!」と思ったこともありました。それは、ティーン向けのマンガや雑誌。最近は、10歳ぐらいの小学生が『12歳。』という少女マンガで生理や体の変化について学んでいるという話も聞きました。

やっと、生理を堂々とマンガで描ける時代、読める時代になったんだな、と。親が生理に対して恥じらいを感じる世代であっても、マンガを通して学ぶことができれば、勉強になりますし、ポジティブに受け止めつつ大人への階段を登ることができる。

30年以上前に、スウェーデンで読んだ『Starlet』という雑誌を思い出しました。ファッションやいじめ問題、そして生理や体の変化など成長段階での悩み……。ティーンのリアルな興味、関心事が詰まったかっこいい雑誌でした。多くのトピックを学びましたが、親世代はあまり好きではなかった家庭もあったみたい。内緒で買っていた子もいました。

 

日本の生理用品のクオリティは“アカデミー賞”もの

日本は生理に対して「優しい」面もあると思う。私が18歳で来日して感動したことの一つが、日本の生理用品のクオリティの高さ!  

20年前の話ですが、スウェーデン時代に使っていたナプキンって、下着にきちんとくっついてくれなくて、気づくと「背中にある!」ってぐらいずれたのよ(笑)。

でも日本のナプキンは、背面のテープはしっかりしてるし、ウイングもついてるし、下着にも響かないし、最高だよね。

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(写真はイメージ)
Yulia Lisitsa via Getty Images

タンポンも衝撃だった。容器に入っているから、衛生的だし、手を汚さずに、しかも正しい位置に挿入できるでしょう?  生理用品のアカデミー賞ですよね。 

スウェーデンではむき出しのものしかなかったから、自分の指で入れるしかない。スウェーデンって必ずトイレの個室に小さな洗面所があるんですが、「日本は、タンポンを入れるときに手が汚れないから洗面所がいらないんだ!」って感動したんです。

ただ、日本では生理用品って「恥ずかしいもの」。ドラッグストアで生理用品を買うと、わざわざ黒いビニール袋に入れたり、茶色い紙袋に入れたりしてくれるでしょう? 

私も、日本に住んで長いから、「いいです」って言いながらも、ついつい入れてもらっちゃうこともあったんですよ。でも、一度スウェーデンに帰ったとき、スーパーで生理用品を買って、袋にも入れずに小脇に抱えて帰る自分に気づいて、「ああ、これが普通だよね」って思った。日用品であって、恥ずかしいものじゃないもんね。

 

男性に必要なのは、生理を理解して、馬鹿にしないこと 

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映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』DVD 発売中3,800円(税別)発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
(c)2018 CAPE OF GOOD FILMS LLP. All Rights Reserved.

パッドマン 5億人の女性を救った男』(インド/2018)という、実話を元にした映画がありました。

主人公は1990年代、生理がタブーだったインドで、安価で衛生的なナプキンを開発した男性。それまでは生理用品が高価すぎて、不衛生な布で代用し、感染症にかかったり、命を落としたりする女性が多かったそうです。生理用品の使用率は、10%だったとも。

妻の体を危険にさらしたくないと、主人公は高価な生理用品を妻に手渡します。でも、経済的な心配から妻は「返品してほしい」と言う。主人公のモデルとなった男性は、「妻を苦しめるタブーを変えたい」と思ったそうです。

開発中は、周囲から「男がそんなものを作るなんて」と言われ、映画自体「生理がテーマの映画なんてヒットしない」と言われたとか。

しかし、女性の生理がなければ出産もない。つまり、人口が増えないんです。 

少子化を憂う一方で、生理をこんなにタブー視している日本。この国での生理への意識は、『パッドマン』を思い起こさせます。 

女性が一番傷つくのは、男性に馬鹿にされること。

もしかしたら、生理を理解されなかったり、軽く見られたり、馬鹿にされたりすることで、自分の体、性を恥じている女性すらいるかもしれない。そんな無意識も、もしかしたら少子化につながっているのかもしれませんよね。

生理は、女性にとって当たり前に起きること。そして、(経血の)量や痛み、つらさが個々に違うこと。男性は、生理を理解すること、馬鹿にしないことが必要かなと思います。

 

運動不足な人が多い日本、体育の授業に対するギモン

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Yuko Kawashima

私はすごくラッキーで、一度も生理不順になったことがないんですよ。激しいダイエットをしても、28日周期でぴったりくるから、「生きてる」って感じ(笑)。

日本人の女性は、生理不順に悩んでいる人も多いですよね。冷えを感じている人も、便秘の人も多い。それってもしかしたら運動不足も原因のひとつなのかもしれません。

(日本の人たちは)歩くのも上手じゃないし、すぐ座るし、すぐエスカレーターに乗るし、日常的に運動する習慣がない。一駅分余計に歩いたり、ストレッチをしたり、個々の体やライフスタイルに合わせて運動を取り入れた方がいいと思いますね。

自分の人生に何が必要か、カスタマイズして考えるのが大事。

ただ、日本人が体をうまく使えないのも、実は教育のせいなんじゃないかなって思うんです。体育の授業で、自分の体をどう使うのか、考えさせてもらっていないんじゃないかな?

スウェーデンの小学校では、体育の授業で小さいころからサッカー、アイスホッケー、バスケットボールなど、たくさんのスポーツをプレーするんです。 

さらに、チーム分けをするなら、そのスポーツを一番上手な子が2人、それぞれのチームメイトを順に選んでいく。体の動かし方だけじゃなくて、同時に敗北感というか屈辱感も学べるんですね。社会に出たときにくじけなくてすむようにね。

日本でも、もっと屈辱感や失敗を教えたほうがいいと思う。

今の小学生の使うリレーのバトンが、輪っか状のところもあるんですって。棒状だとつかみにくいから変更になったらしいんですが、それでは失敗を克服しようという気持ちは育ちにくい。「できないから悪い」じゃなくて「できないなら、できるようになればいい」って教えないと。

すべてマニュアル化して、みんな同じがいいというのが、日本的な価値観ですよね。排他的で失敗を許さないし、横並びを重視するあまり、リスクにも目をつむる。

組み体操なんて、社会に出たら何の意味もないじゃない。むしろ危険で、事故が出ているのにやめる学校の方が少ない。人の命よりマニュアルが大事なんて、危険ですよ。

 

笑顔もおしゃれも上手になるコツ。

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Yuko Kawashima

性教育の話にも、体育の授業の話にも通じますが、日本って自分らしく生きること、自分の体を大事にすることは素晴らしいって教えてもらえないよね。

例えば、日本人って笑顔を作ることが苦手でしょ? 

「LiLiCoさん、写真撮ってください」って声をかけられて、何人かで写真を撮ろうとするとカメラを構えた人が「笑顔、お願いしまーす」って。見てみると、私以外の人は誰一人として笑顔じゃない。役者でも、超イケメンなのに「オレ、笑顔がわかんないんだよね」って言う人がいたりする。

超ワケわかんないと思ってたけど、学校の集合写真を笑顔で撮らないって聞いて、「それか」って気づいた。スウェーデンの学校では、みんな「イエーイ!」って笑顔で映るのが普通なんですよ。日本の学校は、明るく楽しくしている姿が許されない文化なんだね。

学校でのファッションも、マニキュアもダメ、パーマもダメ、制服はこう着ないとダメ。だったら、個性的でおしゃれな人が増えるはずないよ。

私たちは子どものころから、洋服の色はどれにするか、どうコーディネートしたらおしゃれかって考えてますもん。みんな「LiLiCoって派手」とか「強烈」とか言うけど、自分らしいってだけよ。

自分らしさを認めないから、排他的になる。異物は隠す。

よく「日本人は思ってることを言えないんだよね」とかいわれるけど、とんでもない話。だって「最近、太ったね」「髪切ったの? 前の方が良かった」なんて外見や年齢を評価するようなこと、海外の人は絶対に言わないよ。

スウェーデンでは、障害のない人もある人も同じ学校に通っていて、勉強するクラスは違ったけど、お昼休みとかは一緒に過ごすんですよ。

こんな小さな島国に1億人以上が暮らしているんだから、それぞれが自分らしさを発揮して生きられる、もっとオープンで多様性の許される社会になってほしいですよね。

 

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(聞き手:有馬ゆえ 写真:川しまゆう子 編集:笹川かおり)