母の死後、LiLiCoさんの家族は拡張の一途をたどっている。
父のパートナーとその家族だけでなく、2017年に結婚してからは、夫とその家族も加わった。「うちは小さい家族だったから、今が楽しくてしょうがない」のだそうだ。
父のパートナーを「お母さん」と呼んで大いに慕い、夫がいなくても義実家に遊びに行って子どもたちと交流し、スウェーデンに帰れば家族の家を巡るのに大忙し。
そんなLiLiCoさんにとって今、“家族”とはどんな存在なのだろうか。
――LiLiCoさんが9歳のときにご両親が別居、30歳のときに離婚されたそうですね。ご両親の離婚は、LiLiCoさんご自身がリードしたというお話でした。6年前にお母様が亡くなって以降、家族とはどんなご関係なのでしょう
家族との関係が大きく変わったのは、お母さんのお葬式の日でした。
日本でお葬式のあとにお寿司食べてお酒を飲み交わすように、スウェーデンでもお茶を飲みながら故人について語り合う習慣があるんです。その帰りに、お父さんから「別荘を買ったんだ。これは家族のものだからね」と1枚の写真を見せられたんです。
その瞬間、「これは誰か女の人がいるな?」と思って。そうしたら翌日、ランチの場にパートナーを連れてきた。
彼女が、今“お母さん”と呼んでいるブリットなんですが、彼女が、血がつながっていてほしいと願うほど素敵な人でしたね。聞けば、1995年から付き合っているんだとか。
今は私のお父さんと一緒に暮らしていることも知りました。ブリットも過去に離婚歴があり、元旦那さんとの間に娘さんがいます。それから、みんなで家族としてお付き合いするようになって。
初めて、家族というものはこんなにもすてきなんだなと実感しています。
――LiLiCoさんは、お母様とはなかなかいい関係が築けなかったそうですが、新しい家族に救われたんですね。
そうですね。一番うれしかったのは、まだ反面教師だったお母さんのことを許しきれなかった時代に、ブリットが言ってくれた言葉。
あるテレビ番組で「LiLiCoさんはどんな存在ですか?」と聞かれて、「えっ? 娘ですよ」と言ってくれたんです。
号泣しました。実のお母さんからは、そんなふうに言ってもらったことがなかったから。
自分のお母さんには小さいころから「産んだ覚えがない」と言われたり、「お母さん」「ママ」って呼ばせてもらえなかったりしましたから。
最後に会ったときなんて、私のことを忘れていて、一緒に食事をしたあと「今日はごちそうさま、誰だかわからないけど」って言われて。握手して別れましたが、つらい記憶です。
家族が増えれば、愛が増える。
――2017年に音楽グループ「純烈」の小田井涼平さんとご結婚されて、さらに新しい家族が増えました。
彼との結婚を考える前は、「結婚に夢を見ないバツイチの人と結婚したいなぁ、それも子連れの人……」なんて思っていたんです。
私も一度、離婚をしていますし、年齢的に私が妊娠するのは難しいとわかっていましたから。結果的には、初婚の人と結婚することになりました。
彼のご両親に接していると、結婚してずっと連れ添ってきた二人のこともすてきだなと感じます。私にとって、そういうご夫婦は珍しいので、こういうかたちの関係もすばらしいなと思っています。
兵庫県に挨拶に行ったとき、向こうのお母様から「一生渡せないと思ったけど、やっと渡せるわ」って、夫のへその緒と、夫の名前を決めるときに候補を書いた紙をいただいんです。紙が古くて、黄色くなっちゃってるんですけど。
私、それにすごく感動して。自分のお母さんにはあんまりそういうことをしてもらってないから。でもうちも似たような話があって、私が4歳の時に初めて書いた4コママンガを、お父さんがずっと持っていてくれたんです。
――幼かった自分を大切に思っていてくれたんだなと感じますね。小田井さんのご両親のように一生連れ添うご夫婦は、日本では理想的な夫婦像とされていますよね。
まさにそれを先日、感じたところです。この前、寝る前にベッドに入って、夫に「何か知りたいことってある?」って聞いたんです。
すると、夫が初めて「お母さんのこと知りたい」って。それを聞いて、ああやっぱり離婚していない家庭で育った人として、離婚家庭の子どもの気持ちが知りたいんだな、と思ったんです。
それで、今みたいな話をして……途中で寝落ちしちゃいましたけど(笑)。
――一時に比べると、LiLiCoさんの家族はずいぶん大きく広がりましたね。
本当に! うちは小さい家族だったから、今が楽しくてしょうがない。
夫が行かなくても、一人で夫の実家がある兵庫に行きますもん。そこには夫の妹夫婦も同居していて、かわいい甥っ子も二人いるから、さらに楽しい。下の子は、私が夫と結婚したってやっとわかったみたい。
家族が多いって幸せですよ。もう最高!
スウェーデンに帰ったときも、お父さんとブリットの家に行って、その娘と彼氏の家に行って、そして弟家族のところにも行くので忙しいの!
小さい頃から、異母きょうだいとかも超憧れだったんです。お父さんと誰かのあいだに生まれた、まだ知らないきょうだいがいないかなって、いまだにちょっと期待してる(笑)。
日本人は、離婚はよくないことって考えますよね。でも、私、理解できない。そもそも好きじゃない人と一緒にいるって不幸なことだし、離婚して家族が二つになったら愛って増える。
順番に会うことだってできるし、別のパートナーができたって、自分の親を愛してくれた人なんだから、努力すれば理解し合えるはず。すぐに両方と会えるわけじゃないかもしれないけど、時間が解決することもあると思う。
――LiLiCoさんにとって、家族とはどんな存在ですか?
長く離れていても一番理解してくれる存在。
興味を持って接してくれるし、理解しようとしてくれる存在ですね。そんなにたくさん話をしなくても、わかってくれる。
お父さんなんて、9歳から35歳まで全然しゃべっていなかったのに、今はすんごいわかってくれてるなと思いますよ。
私が離婚したときに、お父さんが「話をしたいなら聞きます。でも二度とあの人の名前を言いたくない、結婚生活の話をしたくないなら、僕は全部忘れます。これはあなたの人生だから」と言ってくれたんです。とてもうれしかった。
家族って……もしかしたら一番強い縁かもしれないね。血がつながっていても、血がつながっていなくても、縁があって結びついた人たちなんだから、大切にしたいし理解したいなとお互いに思えるのかもしれないですよね。
(取材・文:有馬ゆえ 写真:川しまゆう子 編集:笹川かおり)