よく「どうすればシルクドソレイユに入団できますか?」という質問を受けます。
幸運にもこのステージに立たせてもらっている。ゆえに力になれる部分はアドバイスをしたいです。しかし中には「どんな種目だったらシルクドソレイユに入りやすいですか?」という質問をしてくる人がいます。
物事には有利・不利があります。シルクドソレイユのアーティストの大半は体操系出身かサーカス学校卒業者なので、これらに進むのが近道のように思えます。
しかし、自分はこうした質問をする段階でシルクドソレイユには入団できないと思うんです。
有利ばかりを選ぶ落とし穴
たとえばシルクドソレイユに入るのであれば「サーカス学校」に入るのが一番だと思います。サーカスを基礎から叩きこんでくれるのでチャンスも広がることでしょう。
ただ、有利という理由だけで物事を決めるとむしろリスクが大きい。
たしかにサーカス学校に入れれば入団への道が広がるでしょう。ですが、サーカス学校に入ったからといって全員がシルクドソレイユに入団できるわけじゃない。いくばくか確率は上がっても狭き門に代わりはないのです。
ところが人は有利な道を選択できた途端、あたかも成功が手に入ったような錯覚に陥りやすい。何も始まっていません。サーカス学校に入るのはスタートラインに過ぎないのです。
有利 VS 好き
もう一つ心配なのがモチベーション。好きこそものの上手なれという言葉の通り、取り組む対象が「好き」というのは上達への一番の近道です。
有利な上に好きであれば何も言うことはありません。しかし、有利だからという理由だけで苦労を重ねることに、あなたは耐えられますか?
自分は縄跳びが大好きなので、軽く2-3時間は練習できます。同じだけの練習をあなたが出来ますか?好きでもない縄跳びを、何時間も跳ぶことに耐えられますか?
実は、好きこそ最大に有利な条件だと思うのです。
人が苦痛なことも「好きだから」という理由だけで続けられる。何なら気持ちはルンルンで作業や練習ができるんです。常にシンドイ思いを引きずって継続する人と、ルンルン気分で継続する人。どちらの上達と飲み込みが早いかは明らかです。
まとめ
シルクドソレイユに入団したいだけなら、自分は間違いなく縄跳びをオススメしません。なぜなら全ショーで4名しか縄跳びのアーティストはいません。つまりそれだけポジション争いが激しいのです。
ですが、縄跳び大好きな仲間であれば、間違いなくそのまま突き進むことを勧めます。事実、ダブルダッチで初めてシルクドソレイユに出演したカプリオールは、大好きなダブルダッチを究めたからこそ道が拓けたのでしょう。
もちろん有利な条件を計算することも必要でしょう。しかし時には胸に手を当て、湧き上がる「好き」に従うのが一番の有利であることを忘れてはいけません。
(2015年3月28日「なわとび1本で何でもできるのだ」より転載)