不動産情報サービス大手の「LIFULL」(本社・東京、井上高志社長)が、様々な社会課題を解決するため、社外の個人や企業と広く連携する方針を打ち出した。
「OPEN SWITCH」と名付けたこのプロジェクトの発表イベントが6月12日、東京・新宿であり、サッカー日本代表の長友佑都選手と一緒に登壇した井上社長は「あらゆるLIFEをFULLにしたい」と語った。
社内制度をオープン化
世界中をベルドコンベヤーで結び、食べ物に苦しんでいる人たちにおにぎりやカレー、ピザを届ける。宇宙空間であらゆる人がサッカーをプレーする──。
発表を盛り上げようと参加した10人の小学生から、様々な斬新なアイデアが絵によって提案されると、井上社長はこう述べた。
「普通の大人だと、これ難しいなって思っちゃうんですけど、僕は起業家なんで、どうしたら実現できるか考えてますよ」
「OPEN SWITCH」は、社内で新規事業を提案する制度「SWITCH」から生まれた。
社員らが新しい事業を提案し、お花の定期便「LIFULL FLOWER」などのアイデアが事業化した。
毎回、社員たちの情熱と夢がほとばしるこの仕組みを、社外にもオープンに呼びかけようとする試みが「OPEN SWITCH」だ。
7月から9月には「アイデアピッチコンテスト」も開催される。
背景には、井上社長が創業時から「社是」として貫く「利他主義」がある。
それを反映するように、LIFULLはこれまで、社会課題を解決するため新しい事業に次々と取り組んできた。
各地で問題となっている空き家を自治体と協力し、移住や田舎暮らしを望む人たちが利用できる「LIFULL HOME’S 空き家バンク」もその一例だ。
また、同社は個人の自由な意思や生き方を応援したいという思いから「しなきゃ、なんてない。」というメッセージを発信している。
「色んな経験、サッカーに活きる」
イベントには長友選手も参加した。アスリートとして活躍しながらも自ら起業し、多様性や家族を大切にする姿勢などがLIFULLのイメージと重なるとして、同社の打診で「アンバサダー兼グローバル本部長」を務めている。
長友選手はイベントでこう語った。
「そもそも僕の中で、サッカーだけ、という概念がないので。色んなものにチャレンジして、その経験をピッチの上で活かす。色んな分野で挑戦する人がサッカー選手だ、と思っています」
参加した小学生の1人は宇宙空間でサッカーをプレーする人たちの絵を描き、「お年寄りや体が不自由な人も、無重力空間で一緒にサッカーができたらいいなと思う」と発表した。
これに対し、長友氏は「僕は地球上で勝つために必死なのに、宇宙に行くという発想、すごいよ!」と感激。「無重力空間なら、僕がやっている体幹トレーニングとかまったく意味なくなっちゃうなあ」と述べ、会場の笑いを誘った。
一方、社内のSWITCHをへて事業化が決まった「Clean Smoothie」の発案者、原田奈実さんも登壇した。
農家が栽培する野菜の中で、どうしても生じてしまう「規格外」は商品として出荷できず、廃棄されることもある。
祖父母が農家の原田さんは、そんな現実を目の当たりにし、「愛情込めた野菜も規格外野菜として半分が廃棄されてしまい、悲しい思いがあった。同じような問題を抱えている農家のみなさんの力になれないかと立ち上げた」と動機を語った。
サイバーボッチャも体験
OPEN SWITCHの発表が終わった後、井上社長と長友選手は子どもたちと「サイバーボッチャ」を体験した。
サイバーボッチャは、パラリンピックの種目にもなっているボッチャをデジタルテクノロジーを使いながら、音や映像などでポップに演出した競技だ。
体のどこをつかってもよく、長友選手はボールを蹴ったり、ヘディングしたりするなどして球を目標に近づけるなど、高度な技術を披露。小学生たちは拍手をして喜んだ。