誰もが一度は不老長寿を夢見るものですが、ニューヨークのアルベルト・アインシュタイン医学校の研究チームが、人間は理論上、最高でも115歳までが限度だとする研究結果を発表しました。
研究者らは全世界における老化傾向との死亡率の関連を調査し、われわれの寿命にはどうしても破れない天井があるという結論に至ったとのこと。
ただ、この研究に賛同しないという声もないわけではありません。たとえば、人が寿命にリミットがありそこに近づきつつあるとする説に長らく反対してきたMax Pranc Odense CenterのJames W. Vaupel氏は、この研究に対して「同じ間違いをした研究が何度もNatureのような立派な雑誌に掲載されていることにがっかりする」と辛辣な意見を述べています。
Vaupel氏は「1900年に米国で生まれた人は、平均50歳の寿命だった。しかし現在の米国の平均寿命は79歳にまで伸びている。日本にいたっては平均が83歳だ」と指摘し、当然、今の時代に生まれる子どもたちは同等かそれ以上の平均寿命になることが期待できるとしました。
しかし、研究チームのJan Vijg博士は、生存率と死亡率に関するデータを分析したところ、平均寿命は社会が発展し、人口が大きく増加した世代で伸びていることがわかったとしています。さらに主要な40か国の傾向を見たとき、ほとんどの国で1980年代を境に人口増加にかげりが出はじめ、2005年ごろには止まったとしています。
Vijg博士はこれが寿命延長の流れの転換になるかもしれないと考え、今度は長寿記録者541人についての調査を実施しました。すると記録上、1960年代最長寿が111歳だったのに対して、1990年代までに最長寿は115歳にまで更新されました。ところが、その後は122歳まで生きたフランスのジャンヌ・カルマン氏を除いて、ほとんどが115歳前後でその生涯を閉じていることが確認できたとしました。
古い時代からの生活環境や食の改善にはじまり、健康志向の高まりによる禁煙やダイエットの流行、さらに医療技術や医薬品の発達により早くに亡くなる人が減少したことで、平均寿命が上へとシフトしてきたことは間違いなさそうです。一方、長寿記録については、出生時期が確認された人の記録を見渡す限り、一部の例外を除いて多くが115歳前後で上げ止まっていることがわかります。
ただ、この研究は現在最も発展しているとも言えるDNA解析による老化防止の研究成果を含んでいるわけではありません。DNAの情報を保ったまま複製回数を増やすことができるようになれば、まだある程度の長寿化は期待できるかもしれません。
ちなみに、かつて長らく世界最長寿とされた泉重千代 氏は、実際の出生時期が15年ほどずれていた可能性が指摘され、2012年にギネスの長寿記録から外されました。日本での最長寿記録は117歳になる2015年まで存命だった大川ミサヲ氏となっています。
[Image : Alamy]
(2016年10月7日 Engadget日本版「「人の寿命は115歳が上限」とする研究結果が発表。平均寿命は伸びるも長寿記録は足踏み」より転載)
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