サイボウズ式:「流されて、変えていく。」という生き方──会社員を卒業して学んだ柔軟力

「何もかもを叶えることはできないから、『直感』に頼っていいと思う」
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サイボウズ式

今の会社、辞めたいかも。人間関係や業務内容に大きな不満があるわけじゃない。でも、このままここで働き続けても、将来の希望は見出せない気がする......。10年後、私は同じ仕事をしているのかなぁ。

もしなんとなく悶々としているなら、ちょっと人と違う道でも「自分で決めた人生」と、のびのびと生きる女性の話にふれてみませんか。パリ在住のライター/コーディネーターの木戸美由紀さんに話を伺いました。

何もかもを叶えることはできないから、「直感」に頼っていいと思う

永井:木戸さんは31歳のときに、会社を辞めたんですよね?

木戸:はい。上司に相談したのは30歳のときでしたが、「後輩を育ててからね」と言われて。半年くらい新卒の子の面倒を見て、引き継いでから辞めました。

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木戸美由紀(きど・みゆき)さん。大学卒業後、編集職を経て渡仏。31歳でフリーランスとなり、パリでライター/コーディネーターとして雑誌の寄稿、ファッションやテレビ撮影、企業視察のコーディネイトなどを行う。2016年、自身の会社、株式会社みゆき堂を立ち上げた。
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永井:実は、私も29歳のときに、新卒で入社したサイボウズを辞めたんです。

木戸:30歳前後って、これからの将来を一度立ち止まって考える時期ですよね。

永井:そう思います。私は辞めると決めるまで1年近く悩んでいたのですが......会社を辞めるとき、悩みませんでしたか?

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永井友里奈(ながい・ゆりな)。2009年にサイボウズに新卒で入社し、パートナー営業部に配属される。7年間の営業職を経て、「パリで暮らしたい」という理由で退職。パリ生活2年目より、リモートワークでサイボウズ式編集部に所属している。
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木戸:もちろん、悩みました。同僚にも恵まれて、責任あるポジションを与えてもらって部下もいましたし、仕事も楽しかったので。

永井:かなり良い環境だとおもうんですが、なぜそれを手放そうと?

木戸:会社では、私が本当にやりたかった仕事はできなかったんです。当時は先端のファッションやカルチャー誌がとても好きだったのですが、会社ではコンサバな誌面作りが求められていたので。

永井:恵まれた環境を手放してでも、本当にやりたいことがあったんですね。

木戸:それに私の場合は、「正社員じゃなくてもいいんじゃない?」と思う気持ちも強くて。

永井:え?なぜでしょうか?

木戸:仕事柄、フリーランスのライター、フォトグラファーとやりとりすることも多かったので。彼らとかかわっていて、縛られてないことをうらやましく思う気持ちもありました。

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永井:正社員という枠にとらわれない生き方に、日ごろから触れていたんですね。最終的にはどうやって思い切ったのでしょうか?

木戸:大きな決断なら、1〜2年は迷ってもいいと思いますが、最終的には直感ですね。

永井:なるほど。でも、わかる気がします。悩んでも正解がわかるわけじゃないですもんね。

木戸:そうですね。何もかも叶えるのは無理なので、私は優先順位で考えるんじゃなく、自分にとって一番大事なものは何かはっきりさせて、決断するようにしています。

会社を辞めたことで、自分で決断する癖がついた

永井:会社員時代は、給与や待遇面の不満などはなかったのでしょうか? 私は実際、もやもやしている部分があったのですが......。

木戸:ありませんでしたね。残業は多かったですが、その分給与には満足していました。

永井:うらやましいです。でも、やっぱりそれだけでは満足できないものなんですね。

木戸:ただ、キャリアプランなどは持っていなかったので、会社の中での目標を失っていたのかもしれません。

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永井:正社員の立場を手放すとなったとき、周囲に心配されませんでしたか?

木戸:友人たちの多くは、「あなたならやっていけるよ」と言ってくれました。心配する声よりも「大丈夫!」というポジティブな声が多かったと思います。

永井:新しい挑戦をするとき、ポジティブな意見を取り入れる力って大事ですよね!

ご両親はまた世代や考え方が違うと思うのですが、どんな反応でしたか?

木戸:「一度きりの人生だし、好きなようにすればいい」って。ただ、最初は1年だけのつもりが、2年、5年......と伸びて、結果的にパリに10年以上も住むことになるとは、私本人もそうですが、親はまったく想像してなかったでしょうね(笑)。

永井:海外に10年以上住み続けるのって、本当にすごいなと思います。住んでみてわかったのですが......面倒なことも多いし、日本にいたときより、日々いろいろな決断を迫られるなと感じます。

木戸:そうですね。その分、「自分で選んだ」という充実感はありますよね。

永井:はい。私の場合、大学進学も就職も「して当たり前」という感覚だったので、会社を辞めるという決断が、自分の中で「人生を自分で決めていくんだ」という覚悟に変わった瞬間だったように思います。

木戸:一度そうして決断をすると、自分で決断する癖がついていきますよね。何事も思い通りにいかないフランスのせいもあるかもしれませんが(笑)。

会社はずっといる場所じゃないと思ってた。だけど、その経験で今がある

永井:ずっとやりたかった書く仕事を、パリでどうやって見つけていったんですか?

木戸:1年だけのつもりでパリにきたので、パリ生活が2年に入ったとき、焦ったんですよね。遊んでばかりじゃダメだ、そろそろ働かないとマズいって。

永井:わかります。私も渡仏したばかりのころ、銀行の口座残高が減っていくのを見ると、不安でたまりませんでした(笑)。

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木戸:当時はフランス語が堪能なわけでもなかったし、仕事どうしよう......と友人に相談したんです。そしたら、コーディネーターの仕事を紹介してもらえて。

永井:とりあえず、動いてみた。

木戸:はい。そこでアシスタントとして雇われることになって。その出会いがなかったら、今の私はいないと思います。

永井:運命を変えた出会いだったんですね!

木戸:そのコーディネーターの方と初めて会ったときに、会社員時代に手がけた仕事をポートフォリオ化して渡したんです。

永井:頼まれたわけではないのに?

木戸:そうなんですけど(笑)。それを見てくださって、「記事を書く仕事がきたら、木戸さんにお願いするね」と任せてもらえることになって。パリに来て最初に書いた記事が『GINZA』のパリ特集でした。

永井:日本でやりたかった仕事を、すぐパリで実現できたとは......! 会社員時代の成果が実を結んだんですね。

木戸:そうですね。会社員時代は、大手出版社の発行する女性誌で通販ページを担当していて、ファッションやビューティー、インテリアなど、いろいろなジャンルの文章を書きました。 文章を書くだけじゃなく、コーディネートに使うモノの借り出しやスタイリング、撮影の手配も、何もかもやらないといけない環境だったんです。

永井:なるほど。その経験が強みになったんですね。

木戸:あのころの経験が、やってみようという自信に繋がったと思います。

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永井:会社員時代に、1から10まですべてを担当できたことが、確実に木戸さんの財産になっていたと。

木戸:文章を書くという広い意味では、やりたい仕事ができていましたからね。ただ、「ここじゃない」とは感じていました。長い人生をかけてやる仕事ではない、と。

永井:安定や目先の仕事にとらわれず、少しずつ本当にやりたい環境に近づいていったんですね。

「仕事が減っていく不安」逆境の中で、本当に好きなものに気がついた

永井:その仕事を皮切りに、書く仕事はどんどん舞い込むようになったんですか?

木戸:はい。ありがたいことに。旅、カルチャーなど基本的には何でも書いていました。とくにファッションが好きでした。でも、2015年11月のパリ同時多発テロ以来、ファッション誌での仕事が、目に見えて減っていったんですよね。

永井:日本からパリに来る人が減った時期ですね......。不安はありませんでしたか?

木戸:もちろんありました。私の実力不足なのかなと思いましたね。でも、周りも同じ状況になっていたみたいで。そのとき、よく考えてみたら、ファッションは自分よりうまく書ける人もたくさんいることに気づいたんです。それからは食や旅に関する記事を多く書くようになりました。

永井:やってみて、自分の得意分野を知った?

木戸:そうですね。「書く」という軸はかわりませんが、今はファッション以上に楽しくて、むしろ、本当に好きだったのはこのジャンルだったのかも、と気づきもありました。

永井:逆境の中でも、常に新しい発見があるんですね。

木戸:はい。流されながら、変えていくのもいいなって、思うようにしています。

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永井:木戸さんは会社員を辞めてフリーランスになった後、日本で起業もされていますよね。働き方の枠にとらわれないイメージがあるのですが。

木戸:私と同じく会社員を経て起業され、事業を成功させた方々から「法人にしたほうが大きな取引ができるよ」と勧められたんですよね。

永井:法人化したことでメリットはありましたか?

木戸:そうですね。特にコーディネートの仕事では、大きな会社からの依頼が増えてきました。法人化すると出ていくものも多いんです。社会保険料や会計士への支払いなど、フリーランスのときは払わなくてよかったものを払わないといけない。だからこそ、もっと働かないと、とやる気になります(笑)。

「決めたことは叶う」と信じ、挑戦を選ぶ

永井:木戸さんは、どんなことを大切にされているんですか?

木戸:同じ仕事ばかりではなく、新しい仕事にも挑戦する姿勢は大事にしています。『サイボウズ式』での執筆も、なじみのないWebメディアという意味で、私にとってチャレンジでした。

永井:雇用の形も、場所も、仕事の内容も、つねに枠にとらわれずに挑戦し、変化し続けることを恐れない。

木戸:でも、やっぱりひとりで戦うプレッシャーはあります。正直、会社員だったらもう少しラクだったなと思うこともあります。

永井:わかります。私も長い間、固定給がもらえたり、保険周りのことをやってもらえたり、組織に守ってもらえるという会社員ならではの待遇は当たり前の権利だと思っていました。でも、離れてみると、会社員ってありがたかったな、恵まれていたなと感じます。

木戸:パリや東京で70代でも第一線で活躍しているデザイナーや女優の方を取材したり、カメラマンやライターさんと仕事をご一緒する機会があると、刺激をうけますね。だから、今の働き方は定年がなくていいなと思っています。

永井:そこまで好きだと思えるものがあるって、とても素敵です。

木戸:自分が選んだ生き方をしているという充実感が、どんな時でも自分の人生を前向きに後押ししてくれている気がします。

すべては人との出会いだなと思いますが、「決めたことが叶う」と思っているので、選択と挑戦を繰り返していきたいと思います。

執筆・池田園子/撮影・井田純代/企画編集・永井友里奈

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」は、サイボウズ株式会社が運営する「新しい価値を生み出すチーム」のための、コラボレーションとITの情報サイトです。本記事は、2018年6月22日のサイボウズ式掲載記事
より転載しました。