リビアでのクラスター爆弾使用を示す新たな証拠が見つかった。きわめて懸念すべき事態だ。リビア当局はこれらの事件を調査し、自軍がクラスター爆弾を使用していないことを確認すべきだ。
(ベイルート)2014年12月以降にリビア国内の少なくとも2ヶ所で、禁止対象のクラスター爆弾使用を示す信頼性の高い証拠が見つかったと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った目撃者への電話インタビューと証拠写真の検討作業からは、RBK-250 PTAB 2.5Mクラスター爆弾の残骸が2015年2月にビンジャワドと3月にシルトで発見されたことが示唆される。爆弾の塗装の状態が良く、甚だしい風化が生じていないことは、残骸が長期間風雨にさらされてはおらず、最近の攻撃で使用されたことを示している。リビア空軍はこの2地点に最近爆撃を行ったが、クラスター爆弾の使用は否定している。入手できた証拠に基づいて責任の所在を確定することはできない。
「リビアでのクラスター爆弾使用を示す新たな証拠が見つかった。きわめて懸念すべき事態だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ武器局局長でクラスター爆弾連合(CMC)議長のスティーブ・グースは述べた。「リビア当局はこれらの事件を調査し、自軍がクラスター爆弾を使用していないことを確認すべきだ。」
2014年5月以降の戦闘により、リビアには複数の政府が存在する。国際社会が認知する東部政府と、リビア西部の大部分を支配下に置く民兵組織の連合体「ファジル・リビア(リビアの夜明け)」に支援されるトリポリ政府だ。両者は共に唯一の政治権力としての正当性を主張する。しかし全土を完全に掌握できてはいない。
3月11日、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国際社会が認知する東部政府のリビア空軍司令官Saqr al-Jeroushi准将に電話インタビューを行った。同准将は2月と3月にビンジャワドとシルトのほかにもワティヤなどを空爆したことを認めた。しかし指揮下の部隊はこれらの空爆実施地域でクラスター爆弾を一切投下していないと述べた。准将はリビア空軍はクラスター爆弾を使用できないと述べた。「民兵側への空爆は毎日続けています。しかしリビア軍が使用できるのは、第二次大戦で使われたような従来型の重火器用弾薬だけです」と准将は言う。「クラスター爆弾は保有していません。」
2014年5月以降、国際社会が認知する東部政府と連携するハリファ・ヒフタル将軍指揮下の部隊は、対「リビアの夜明け」軍事作戦を展開している。この「リビアの尊厳」作戦には、旧軍の構成員、部族勢力、山岳地帯の町ジンタンの民兵も参加している。リビアの夜明けには、ミスラタの勢力のほか、トリポリ、ザーウィヤ、サブラタなどの民兵が参加している。
シルトなど人口密集地でのクラスター弾頭の使用は、この兵器の無差別的性格により武力紛争法に違反する。クラスター爆弾は数十から数百発の小さな爆弾(子弾、小型爆弾)を1発の容器(ロケット砲、爆弾など)に内蔵したものだ。発射・投下後に容器が空中で開き、地上着弾時に爆発するように設計された子爆弾を散布する。子爆弾は広く無差別にばらまかれ、サッカー場程度の範囲に拡散することも多い。落下時にその場に居合わせた人全員を、戦闘員か民間人かの区別なく、死傷の危険にさらす。多くの子爆弾が着弾時の衝撃では爆発しないが、起爆装置は無効にならないため、事実上の地雷となる。不発弾化した子弾がある場所は、訓練を積んだ爆弾処理要員が除去作業を行うまで危険なままだ。
リビアは、いかなる状況でもクラスター爆弾の使用を禁じるとした2008年のクラスター弾に関する条約に加盟すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。116ヶ国が締約国となる同条約は、クラスター爆弾の不発弾除去と被害者支援も義務づけている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは国際組織「クラスター爆弾連合」の共同創設者で現在議長を務めている。
「大半の国がこうした兵器を禁じている。本質的に無差別的な性質があり、民間人に許容できない危害を加えるからだ」と、前出のグース局長は述べた。「国際社会が認知するリビア東部政府と本紛争当事国はクラスター爆弾の備蓄を速やかに保管し、すべて破壊すべきである。」
(2015年3月15日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)