バレンタインデーの2月14日に、日本全国で13組のカップルが同時提訴した同性婚訴訟。同日午後に弁護士団体などが日本外国特派員協会で記者会見し、日本政府が同性婚を認めることが経済的メリットにつながると強調した。
きっかけは、在日米国商工会議所(ACCJ)が2018年9月にまとめた提言。
日本政府に対して「日本企業のすべてに具体的な恩恵がもたらされ、日本の経済競争力全体にも恩恵をもたらすことになる」として、LGBTカップルに婚姻の権利を認めるよう求めていた。
オーストラリアやイギリス、カナダ、デンマークなどの在日商工会議所も、この提言に賛同している。
ところが、日本ではこの提言がほとんど話題にならなかった。
企業などに所属する弁護士らで作る「日本組織内弁護士協会(JILA)」の榊原美紀理事長は、「日本の団体がまったくこの提言に反応していなかったのが不思議だった。それならば、と私たちが支持を表明しようということになった」と明かした。
会見には、榊原氏ら4人の弁護士が出席。「企業や経済界にとって、日本は同性婚が認められない国だという風評は、優秀な人材確保という点で大きな機会損失につながる」と強調した。
会見では、「保守層など、同性婚に反対する層をどう説得できるか」という質問も上がった。
榊原氏は「反対する人は、いつまでも反対すると思う。でも、理解してくれる人の輪が広がれば、実現は可能だと信じている。私たちに、日本国内の企業や経済界が続いて欲しい。ドミノ効果を願っている」と期待を込めた。
一方、「森・濱田松本法律事務所」の石黒徹氏は、「保守かリベラルか、ということは、同性婚に賛成か反対かということと関係ない。日本では伝統的、文化的に同性愛がそれほどタブー視されてこなかった経緯があり、だからこそ同性婚が必要だという大きな動きにならないのだろう」と指摘した。
「ベッカー&マッケンジー法律事務所」の近藤浩氏は、「世界中に事務所を持つ私たちにとって、同性婚は当たり前の話。日本のファーム(法律事務所)がこの席に並ぶことに意味がある」と語り、「日本だけで活動している人にはこの問題の重要性が分からないかもしれないが、グローバル競争にさらされている企業ならば理解できるはずだ」と語った。
どんな提言?
ACCJが公表した提言は、現状について「同性婚を認めていないことで、日本は人材獲得競争で不利な立場に立っている」と分析。2020年のオリンピック・パラリンピック開催国として国際社会から注目される中で、同性婚を認めることが「日本企業や経済などに大きなメリットがある」結論づけている。
日本は、優秀な人材を巡って世界規模で競争をしている。
現在、婚姻の法的平等を実現した25の国々は、LGBTの人材獲得という点において日本に対して競争上優位な立場にある。
なぜなら、これらの国々は、性別にかかわらず全てのカップルに対して同等の婚姻の権利を認め、よりインクルーシブな環境を提供しているからである。
これに対して日本では、対等な競争環境の実現に向けた取組みとして、同性のパートナーと婚姻と同様の関係にあるが日本法の下では婚姻関係にあるとはみなされない従業員のために、企業が管理上も財政的にも負担の大きい特別な福利厚生制度を設けざるを得ない状況にある。
日本の社会は既に婚姻の自由を認める方向に向けて動き始めており、必要な法改正も複雑ではない。
わずかなリスクや費用しか必要としない変化によって、LGBTのコミュニティだけでなく、日本でビジネスを行う企業や海外でビジネスを行う日本企業のすべてに具体的な恩恵がもたらされるのである。
また、そうした変化は、国際舞台における日本の名声に好 影響を及ぼし、ひいては日本の経済競争力全体にも恩恵を もたらすことになるだろう。
時期については、日本が2020年オリンピック開催国として準備を進めていく中で、日本に対する国際社会からの注目が今後一段と高まると予想される ことから、日本政府が今、こうした変化に向けて踏み出すことが大きなメリットになると考える。