「LGBTを小さい頃から知る、決して早すぎではない」小学生の息子たちが、当事者にインタビューした

松岡さんと子供たちによる、「LGBTにまつわる魂の対話」だ。
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私がセクシュアル・マイノリティの祭典「東京レインボープライド」を初めて取材したのは2014年4月。当時は今のようにLGBTという言葉が一般的ではなく、参加者たちからも「日本では同性愛を話題にすらしない」という嘆きが聞こえてきた。

今でこそLGBTの話題は一般社会に浸透しつつある。しかし、当事者のみなさんの声を聞いてみても、偏見が完全に払拭され、世の中の理解を深めるためにはまだまだ課題が山積していると感じる。

レインボープライドに参加する人に、LGBTを理解するために必要なことは何かと尋ねた時、毎年必ずといっていいほど返ってくる答えの一つに、「教育の大切さ」がある。子供のうちからセクシュアル・マイノリティに対する偏見を持たないような教育をする必要がある、という意見だ。

実際、学校教育の現場でLGBTが取り上げられる機会も増えている。しかし、家庭レベルではどうか。親子でLGBTを話題にすることがあるだろうか。

3人の子を持つ親である私は、子供たちとLGBTについて話し合ったことは、ほぼなかった。自分がLGBT関連の記事を書いていることは子どもたちに教えてはいるが、LGBTとは何かを真剣に語り合ったことは、一度もない。

正直言って、親としての躊躇もあった。まだ恋愛すらよく分かっていない小学生の子供たちに、セクシュアル・マイノリティについて教えるのはあまりに早すぎるのではないかと。

教育の大切さを頭では理解しているつもりなのに、親として実践していない。本当にそれで良いのか。子供たちの中にも、当事者はいるはずだ。決して、早すぎることはない――そう思うに至った。

上の子供2人は小学校高学年。追いかけ続けているLGBTというトピックを自分の子供に知ってもらうために、「東京レインボープライド」という現場を見てもらいたいという思いが日増しに強くなった。

その前に、LGBTとは何かを、知ってもらう必要があった。私の拙い説明よりも、当事者に語ってもらうほうが説得力がある。そう考えた私は、ハフポストブロガー松岡宗嗣さんに、子供たちの疑問に答えてもらえないかとお願いした。

松岡さんは私の無理なお願いを受け入れてくれ、「小学生がLGBT当事者にインタビューする」企画が実現した。

「お父さんはどんな仕事をしているんだろう」と、普段から興味を持ってくれている子供たちも、今回のインタビュー企画を喜んで引き受けてくれた。子供たち自身がインタビューアーになって、松岡さんに素朴な疑問をぶつけた。質問項目もすべて自分たちで考えた。松岡さんは真摯に向き合って答えてくれた。以下は、松岡さんと子供たちによる、「LGBTにまつわる魂の対話」だ。

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(取材協力/anea cafe 参宮橋

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――どうして、男の人が好きになったのか教えてもらえますか。

松岡 自分のセクシュアリティ(性のあり方)はゲイと呼ばれているもので、男性として男性が恋愛対象にあたります。

誰をいつ好きになるのかって、多くの場合自分で選べないことだと思うんだよね。だから、自分はたまたま男性が恋愛対象だったということなんです。だから、もともと女性が好きで、男性を好きになったというのではなくて、自分は気づいた時から男性が恋愛対象だったのかな、と思っています。

――男の人が好きになっていることで、悩んだりすることは何かありますか。

松岡 悩んだことは結構ありますね。「もしかしたら自分の恋愛対象は男性なのかな」と思い始めたのは小学校5年生くらい、ちょうどあなたたちくらいの時なんです。きっかけもあまり覚えていないんだけど、友達とか、先生とか先輩とかが「なんかカッコいいな」と思い始めて。それが憧れなのか恋愛感情なのかはわからないままだったんだけど、中学生くらいになったら、「この感情はひょっとして恋愛なのかも」と思うと同時に「隠さなきゃいけないものなんだ」と思い始めたんだよね。

その理由の1つが、周囲がホモネタとかでいじったり笑いをとっているから、ここで言ってしまうといじめられてしまうんじゃないかと思ったこと。あとは、親に言ったら悲しませてしまうんじかないかとか、いろんな不安が自分の中で出てきてしまって、よくわからないモヤモヤとした不安がずっとありました。誰にも言ったらダメなんだと。

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――LGBTという言葉はよく聞くようになったんですけど、でもまだ多くの人たちは、異性が好きなのが常識だと思っているんじゃないか。そういう人たちがLGBTの人たちの集まりの中に入ると、かえって場を乱すことになるんじゃないかと考えてしまう。LGBTの人たちの集まりに入っていくことは正しいのでしょうか。

松岡 LGBTって、笑いの対象になっていたり、差別されていた状態から平等にしようとみんなで連帯する、手を取り合って頑張ろうという気持ちから生まれてきた言葉なんです。でもそれって、LGBTの人たちと、それ以外の人たちを分けるために使いたかった言葉ではなく、最終的に「みんな一緒じゃん、みんなで一緒の社会を作っているよね」っていうために作った言葉だと思っています。

だから、ぜひいろんな人たちに関わってほしいから入ってきてもらいたいと思う。今は「LBGTの人たちと、そうじゃない人たち」「普通の人たちと、LGBTの人たち」という感覚の人が多いかもしれないけど、最終的にはみんな互いの違いを受け入れあって、仲良く生きていけたらいいなと思っている。

たとえば男性として女性を好きになる人もいれば、男性として男性を好きになる人もいる。それって、いろんな性のなかのひとつだから、「普通の人とLGBTの人」ではなくて、いろんなセクシュアリティのなかの1つとして捉えてほしいなと思う。たとえばゲイというセクシュアリティもあるし、ヘテロセクシュアルっていう、異性を好きになるセクシュアリティもある。

ただ、今の状況では、例えばクラスのなかで自分がゲイであることをカミングアウト(告白)すると、ひょっとしたらいじめられちゃうかもしれない。理解がある人もいれば、そうじゃない人もいるから。でも、その時にみんなには打ち明けられずに、ゲイの友達だけで集まる場所があったら、そこで自分は身を守れるし、悩みも打ち明けられるし、友達もできるかもしれない。

そこにクラスの意地悪なヤツが入ってきたら怖いよね。そいつがみんなのセクシュアリティをばらしてしまうかもしれない。学校にいられなくなってしまうかもしれない。だから理解があるかどうか分からない、攻撃的かもしれないという人たちが入ってきてしまうと怖いと思うけど、すごく理解があって友だちになりたいと思ってくれる人、一緒に生きていきたいんだと思ってくれる人は、ぜひ一緒にやっていきたいな。

――「でも、普通は異性が好きじゃない?」と思う人は、知らない間に傷つけている可能性があります。傷つけないようにするためにはどうすればいいのでしょうか。

松岡 「普通は男の人は女の人を好きになるよね」っていう、その「普通」という言葉を改めて考えてほしいですね。「当たり前ってなんだろう?」と思ってもらう、ということ。よく分からないまま「普通はこうじゃん」と思いがちだけど、「普通じゃないってどういうことなんだろう?」「何でこれが普通なんだろう?」って疑問に思うと、意外とその理由は分からないことが多い。

「みんなそうじゃん」「今までそうだったじゃん」っていうのも同じ。みんな、何かしら人に言えないこととか、マイノリティといって、社会的に見たら少ない数の人たちに入ることって、誰しも持っている。でもそれが普通なのか普通じゃないのかって言ったら、わからないよね。例えば、左利きの人って比較的少ないけど、普通じゃないなんてことはない。血液型がAB型の人も少ないけど、A型と比べて普通じゃない、ということもないよね。LGBTも、少ないから普通じゃない、と思わないでほしいなと。

そう思ってもらうために、いちばん大切なのは知識。もう一つは出会ってもらうこと。今回みたいに会ってもらって「思ったよりイメージが違ったな」「友だちになれそうな人だな」といった感覚を持ってもらったら、知らないうちに傷つけるということはなくなると思います。

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――松岡さんはLGBTを知ってもらうために、どういう活動をしていますか。

松岡 僕は、ハフポストでブログを書かせてもらったり、小中学校や高校、そして役所などに行ってお話をさせてもらったりしています。そこではLGBTの基礎知識や、「こういう人生を歩んできました」っていうライフヒストリーを話して理解を求めることをしています。

それと、今大学で「アライ」っていう人たちを増やしていくキャンペーンをやっています。「アライ」って、同盟とか仲間を意味する「アライアンス」と語源を同じくするものなんだけど、自分はLGBTじゃなくても彼らを応援し、味方でありたいという人たちのことを指して使っています。さらに、例えば私はゲイだけど、他のセクシュアリティの人にとってのアライでありたいと思っていて、LGBTもアライになれるんじゃないかと思っています。

たとえばクラスの中で、LGBTのことを笑いの対象にするような人に「いや、そういうの面白くないよ」とか言ってくれる人がいると、LGBTの人たちにとってはとても心強いんです。そういう「アライ」を増やしていきたいですね。

――LGBTを理解する人も増えると思うけど、偏見を持つ人も増えるんじゃないかと思っています。偏見を持たないためには、小さい頃からLGBTの世界を見ておくのが大切だと思うのですが、どう思いますか。早すぎることはありませんか。

松岡 逆に聞きたいんですけど、なぜ小さい頃から知っておくことが大切だと思ったんですか?

――LGBT以外でも、偏見を持ってしまうことってたくさんあると思うんです。そういう偏見って、最初に教わっておけばなくなるんじゃないかと思っています。そういう考え方はどうなのかなと思って......。

松岡 私も同じことを思っています。まだ恋愛感情もないような小さい子供が、「男の子は女の子を好きにならないとダメ」みたいに言われると信じちゃうよね。周りからそう言われると、そう思わないといけないのかな、って。そういう時に、「みんながみんな、男の子が女の子を好きになるわけじゃないんだよ」とか、女性として生まれてきても、自分は男性だと思っている人もひょっとしたらいるかもしれないとか、そういうことを小さい頃から知っておけば、悩まなくてすむのかな、と。

そして、周りのLGBTの人がいた時に、「ああ、あの時先生が言っていたな」「ああ、全然知ってる知ってる」って思ってくれると、その人に対して傷つけるようなことは言わないかもしれない。小さな頃から知っていれば、「えっ、それの何がおかしいの?」みたいなフラットな気持ちで接することができるはずです。

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――友達の中には「男同士がキスするのは気持ち悪い」ということを言う人もいるし、男子同士でふざけて遊んでいると女子から「うわあ、BL(ボーイズラブ)」とからかわれることもあります。「そうなのかなあ」と思ってしまうこともある。そういう人たちとは、どう話をすればいいのでしょうか。

松岡 笑いのネタにする人って、まだまだいっぱいいるよね。クラスメートにもいるんじゃないかと思うけど、その時に思ってほしいのは、「その一言で傷ついてしまう人がいるかもしれない」ということ。  

LGBTの問題って、見えにくいところにあるんです。街中ですれ違っても、ゲイだって分からないことが多い。それと同じように、クラスの中でも、レズビアンの子やトランスジェンダーの子がいるかもしれない。でも、本人がカミングアウトしないとわからない。そういう時に、誰かが「あいつらホモじゃない?」と言ったとしたら、その子はどう思うか。「ここではカミングアウトできないな」「もしカミングアウトしたらこの子にめちゃくちゃいじめられるな」って思って、言えなくなっちゃう。自分の意図しないところで友達を傷つけてしまっているかもしれないと想像してもらいたいですね。

こういう場面で、さっき言った「アライ」が活躍できる。かなり勇気が必要なんだけど、ホモネタで笑っている人たちに「そういうの、本当に面白いの? 面白くなくない?」というようなことが言えるといいなと思う。「そういうこと言うのやめろ!」ってきつく言うのではなく、柔らかく、「そういうの面白くないよ~」みたいなことを言ってくれるとうれしいです。カミングアウトしてない子も、「あの子は理解してくれている」と思って、信頼してくれるかもしれない。そういうアライ的な行動をとってくれるとうれしいなと思います。

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インタビュー終了後、子供たちは「クラスがホモネタで盛り上がっているところに、『そんなこと良くないよ』とすぐに言えるかどうかは分からない。でも、LGBTの人たちが知識を広げるために努力していることが少しでもわかってよかった」と感想を語った。

子供たちは、アライとなって東京レインボープライドに参加する。小学生の彼らの目から見える東京レインボープライドは、一体どのようなものなのか。彼らの父親として、そしてエディターとして、しっかりと記録したい。

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