「ほら起きて」。年上の彼女に、笑顔で起こされる一日の始まり。自分も彼女も女性。つまりふたりはレズビアン。
でも自分がレズビアンであることは、誰にも言っていない。会社では彼氏と同棲していることにしているが、彼氏について色々聞かれると言葉に詰まってしまう...。
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これは、レズビアン女性が日頃感じている気持ちを体験できるVR、「LGBT×VR ~レズビアンオフィス編~」の一場面だ。
5月6日まで開催中の「東京レインボープライド2018」(東京・代々木公園)に、体験ブースがある。
制作したのは、「シルバーウッド」。同社は、これまで認知症や外国籍の社員、ワーキングマザー、若者世代など、様々な立場の人たちのVRコンテンツをつくってきたという。
今回新しくつくったLGBT×VRでは、「学ぶ」ではなく「体感」してもらうことで、セクシュアルマイノリティの人たちに対する、理解促進を図る。
ゴーグルのようなVR機器を装着すると、28歳の会社員、鈴さんの視点を疑似体験できた。彼女の日常や同僚とのやりとりを10分間体験する。自由に動き回れるわけではないが、首を回すと周りを360度見渡せるため、臨場感がある。
ランチタイムにお弁当を食べていると、目の前にいる同僚たちから「彼氏と長く付き合ってるのに、どうして結婚しないの?」と顔をのぞきこまれるように言われた。もし、こんな風に問い詰められたら、思わず言葉に詰まるだろう。
制作に携わったVR事業部の黒田麻衣子さんは、自身もレズビアンだ。自分の経験だけでなく、様々なセクシュアリティの人たちに話を聞き、それをもとに作成した。
「LGBTのあるあるが詰め込まれているVRです。ただ、LGBTの全てを理解するためのものではありません。制作にあたり、ゲイやトランスジェンダーやの方たちにたくさんお話を伺ったら、みんな感じていることが違って驚きました」
「LGBTと言っても、人それぞれです。感じていることも、環境も違います。レズビアンオフィス編にしても、レズビアンの一面を取り上げたもので、レズビアンでも違う立場の人もいるでしょう」
もっと幅広い立場のセクシュアルマイノリティがいることを知ってもらうため、今後は、ゲイやバイセクシュアル、トランスジェンダーのVRも作る予定だという。