LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーら性的少数者)のための学校を作って、いじめをなくそう――。イギリス・マンチェスターで始まったこのアイディアを巡って、イギリスで賛否が渦巻いている。
きっかけは、LGBT支援団体のLGBT Youth North Westが、マンチェスター市内にLGBTのための学校の設立を計画していると1月15日にイギリス有力紙のガーディアンなどが報じたことだ。団体は、チャリティで集めた6万3000ポンド(約1115万円)を研究調査に使い、実現へ向けて動き出すことを発表。LGBTコミュニティのための交流センターを作って、その中に40人の生徒を受け入れる学校を設ける構想だ。
この報道をめぐって、議論が白熱。Twitterなどソーシャルメディアでは賛同する意見も多いが、政治家や他のLGBT団体は「分離を加速させる」と否定的だ。
LGBT団体「Stonewall」は、「(いじめをなくそうという)狙いと目的については共感できるが、LGBTのための学校がその答えだとは思わない。我々の経験から言えるのは、わざわざ分離しなくても、すべての子供が自分自身であり、安全な環境を確保することができると思う」とコメントした。
また、保守党下院議員で、元教育大臣のティム・ロートン氏は「専用の学校は隔離と同じ。いじめと闘うことのほうが大事」と警鐘を鳴らす。さらに現・教育省補佐官も、「既存の学校において、LGBTへのいじめ撲滅を推進すべき」とし、学校設立には否定的な見方を示している。
こうした中、ガーディアンは16日、「LGBTの学校は現実的な問題に対処する、現実的な答えだ」とする社説を掲載。この問題を左右の構造に捉え直し、多文化主義の左派にとっては、似た人たちだけを集めた学校は望ましくない。だがLGBTの権利は認めたいという矛盾があり、右派にとっては、LGBTに対しては慎重だが、均一化せず自分の文化を守る闘いをしてきた経緯がある。左右両方にとって、矛盾を抱えた問題である、と指摘した。
一方、企画したLGBT Youth North Westの担当者は、「命を救うため」とその目的について語り、LGBTであることを原因に自殺した子供の事例を紹介している。ただし、現在のところ具体的な計画ではなく、あくまで検討段階であるという。
「分離」か「救い」か――。議論はまだ続きそうだ。
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