LGBTの学生は、レスリー・キーの撮影後、両親にカミングアウトした。(画像)

日本に暮らすLGBTをはじめとした、セクシュアル・マイノリティの人たちの姿を、多彩な写真家が撮影するプロジェクト「OUT IN JAPAN」が始動した。その作品が、Gapフラッグシップ原宿で4月21日〜28日まで展示されている。
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LGBTの人たちの、自分らしく、ありのままの姿を、写真に——。日本に暮らすLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)をはじめとした、セクシュアル・マイノリティの人たちの姿を、多彩な写真家が撮影するプロジェクト「OUT IN JAPAN」が始動した。

プロジェクト第一弾として、日本をはじめ世界で活躍するシンガポール出身の写真家、レスリー・キーさんが、日本に暮らす92組111人のLGBTの人たちの姿を撮り下ろした。レズビアンカップルとその子供や、新宿2丁目にある老舗ゲイバーの67歳のマスター、同性結婚式を挙げたカップルなどが参加。一般の人からも2週間で100件近くの応募が寄せられ、就職活動中の学生や、両親にカミングアウトする決意した人たちが参加したという。

その作品が、外資系アパレルのメーカーのGapフラッグシップ原宿で4月21日〜28日まで展示されている。21日に行われた発表会では、「OUT IN JAPAN」主催の認定NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表の松中権さんや、写真家のレスリー・キーさん、モデルのIVANさんらが登壇。日本におけるLGBTの理解を深め、意識を変えていくことの大切さなどを語った。

今回は、レスリーさんとIVANさんのトークと、撮影に参加した東小雪さんと増原裕子さんや、このプロジェクトをきっかけに両親にカミングアウトした氣田翔太さんの声を紹介する。

■レスリーさん「日本がリーダーシップを発揮するために、LGBTの理解が必要」

レスリーさんは、「日本はLGBTに関する理解が遅れている」として、これから、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、「日本がもっとリーダーシップを発揮するために、もっとLGBTの理解が必要」などと語った。

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写真家のレスリー・キーさん

「日本は、LGBTの理解が50年間遅れていると思います。私はニューヨークに、2002年の終わりから2006年まで、ほぼ5年間住んでいました。実は私、日本に来たとき、あまりLGBTの存在も詳しくなかったんです。その後、ニューヨークに行ってから、(LGBTの理解が)遅れていることが恥ずかしかったです。

ニューヨークの街は、クリエイターだけじゃなくて、料理人にしても、一般の会社員でも、才能がある人が溢れている。有名じゃなくても、みんなアメリカン・ドリームを持ってる。そこで、たまたま気づいたのは、(出会った人は)LGBTの人が半分以上だったんです。

LGBTがマイノリティと思ったら、大間違い。日本は、たまたま(LGBTが)1割以下かもしれないけれど、国によって全然マイノリティじゃない。日本人は、情報を知らなさすぎる。みんなが知ることは、大事だと思う。もうそろそろ、オリンピックに向けて、日本はリーダーシップを発揮する国にならなければならない。実は、あなたのまわりの人はLGBTかもしれない。みんな毎日、一生懸命生活してる。実は、みんな一緒です。

この企画は、LGBTのためにやってるわけじゃない。9割の日本人のためにやっています。LGBTの人たちは心配していない。(写真を)見て。みんな輝いているから。9割の人たちに、この情報を知ってもらうためにやっています。

私は外国人で、日本のお世話になっています。人生の半分は、日本にいます。今月ちょうど44歳で、22年間日本にいるんですよ。日本に貢献したいことが山ほどあります。その中で、一番日本の役に立ったのが、この作品になりました。本当にありがとうございました」

トランスジェンダーのIVANさんは、「日本は、まだまだLGBTの理解ができていない」として、LGBTというと「何それ美味しそう。サンドイッチ?」といわれたエピソードを披露した。撮影について「レスリーは、みんなの中の素を、本当にナチュラルに撮ってくれるんですよ。モデルだから、ポーズを決めるんだけど、いつの間にかレスリーに向かって、笑っている顔を撮ってもらっていて。みなさんも、それを感じたと思う」などと振り返った。

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モデルのIVANさん

■東小雪さん、増原裕子さん「カミングアウトは、すごく勇気がいる」

LGBTアクティビストの東小雪さんと増原裕子さんのカップルも「OUT IN JAPAN」に参加。カミングアウトの強制はしないが、「カミングアウトは、すごく勇気がいること」だとして、カミングアウトしたい人を後押しする同プロジェクトの意義を語った。

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東小雪さん(左)、増原裕子さん(右)

「初めてレスリーさんとお会いできて、光栄でした。レスリーさんは、2011年に雑誌『GQ』のLGBT特集で写真を撮られていて、すごく早かったですし、“カミングアウトして、顔を出している人たちの写真”の印象が強かったので、今回一緒に撮影を撮ってもらって、本当にうれしかったですね。

同時に、友だちや先輩の顔が並んでいて、感動的でした。顔を出さなくてもいいんですが、これまで顔を出せる人は少なかったので、「これだけ増えてきたんだな」と変化も感じて、励まされました。

もちろん、カミングアウトを強制するのは、良くないと思います。だけど、カミングアウトするには、やっぱりすごく勇気がいるんですね。

私たちもカミングアウトしていると、「そういうふうにカミングアウトできない人もいる」といわれることもあります。今回、カミングアウトされる方も、私たちもそうでしたが、カミングアウトするには、誰かに背中を押してもらったり、仲間とつながったり……何かきっかけがないと難しい。当事者にとっては、緊張を強いられる大変なことなんですね。そんななかで、カミングアウトしたい人や若者たちに、エールを送って後押しすることは、素晴らしいことだと思います。

アートになったことで、アライ(支援者)の人たちも増えていくと思います。レスリーさんの素晴らしい写真から、「そうか、(自分たちと)何も変わらないんだな」と思ったり、「ああカミングアウトした人、素敵だな」と感じたりすると思います。

まだまだカミングアウトしても、受け入れられない親もいて、勘当されたりする人もいます。職場を解雇されてしまった人もいます。まだまだそういう世の中なんですね。そのなかで、勇気を出してカミングアウトしようとする人の写真は、やっぱり力強いです。

渋谷区の同性パートナーシップ条例は、すごく画期的なことだったと思いますが、だからといって、生きづらさを抱えている人の環境が、一足飛びに良くなるわけではありません。明るいニュースがあるのはいいことですが、実際には大変な人たちが、まだまだいっぱいいるのが現状です」

■氣田翔太さん「撮影後、両親にカミングアウトしました」

音楽の専門学校に通う氣田翔太(きだ・しょうた)さんは、「OUT IN JAPAN」をきっかけに、カミングアウトを決意した。GapのTwitterでの告知で、憧れのレスリーさんが撮影したIVANさんを見て、「かっこいい写真で、話すきっかけになれば」と思ったという。

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氣田翔太さん

青森県出身で4人兄弟の氣田さんは、中学生の頃にゲイだと自認したが、ずっと隠していたという。高校生のときは、LGBTの情報も少なく、好きな芸能人なども嘘をつくのが平気になり、自殺を考えたこともあった。19歳のときに姉に告白。姉は理解してくれたが、「女装したいの?」と質問された。まだまだゲイに関する理解が進んでいないことも実感したという。

撮影後、1週間悩んでから、母親に電話した。氣田さんは「電話をかけるのにも抵抗がありました。でも、ゲイだと伝えてから『気づいてた?』と聞いたら……『わからなかったけど、4人兄弟なら、ひとりはそんな子もいるよね』と。もう、太っ腹な母に感謝です」と語った。

父親には「いつからだ?」「女になりたいのか?」などと聞かれたが、仕事でセクシュアル・マイノリティの人たちを知っていたこともあり、最終的に「普通だね」といってくれたという。

氣田さんは、SNSのアイコンを「OUT IN JAPAN」の写真に変えた。写真に気づいた友人には、このプロジェクトを紹介し、自分のことを理解してもらうきっかけにしている。

「自分に向き合っていこうと思えました。カミングアウトしたくないなら、いわなくてもいい。でも、いわないことに違和感があるなら、もしカミングアウトを考えているなら、勇気を出して、ぜひこのプロジェクトに参加してみてほしいです」。氣田さんは、笑顔で語った。

「OUT IN JAPAN」には、ミュージカル「RENT」と外資系アパレルのGap、イタリア車メーカーのAlfa Romeoが協賛。LGBTをテーマにしているミュージカル「RENT」は、主演でトランスジェンダーのIVAN氏ら出演者が撮影に協力、スタジオを提供した。Gapは参加者の衣装やスタイリングを手がけている。作品が展示されるGapフラッグシップ原宿は、スタッフにLGBT研修を行っているという。Alfa Romeoはプロジェクトを持続可能にするため、クラウドファンディングのプラットフォームを提供する形でサポートする。

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