LGBTQ当事者をめぐる法案を協議してきた与野党は5月14日、修正を加えた法案で合意に達しました。
これまで、性的指向や性自認について「国民の理解増進」を掲げてきた自民党と、「差別解消」を掲げてきた立憲民主党などの野党。
野党側は5月10日に開かれた協議で、法案に差別禁止の明記など、差別関係を規定するように求めていました。
これを受けて、自民党は法律の「目的」だけではなく「基本理念」に「性的指向および性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識の下」という文言を加えることを提示。
この修正内容で、与野党が合意しました。
100%ではないけれど
修正法案は、自民党の稲田朋美議員と立憲民主党の西村智奈美議員によって取りまとめられ、14日に開かれた超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」総会で了承されました。
西村議員は「目的と基本理念の両方に、差別という文言が入ったことは大きな意味がある」と評価する一方で、100%満足できる内容ではないという考えも示しました。
野党側は差別関係の規定に加えて、「法律が、地方自治体がLGBTQ施策を作る妨げにならないこと」の明記や「国や地方自治体の施策策定を、努力義務から責務にする」ことを求めていました。しかしこの2点は反映されませんでした。
西村議員は、反映されなかった点を引き続き稲田議員と協議するとした上で、「与野党それぞれにとって100%ではないとしても、立法の必要性を感じている。今回を一歩として、すべての人が性的指向や性自認に関する差別やいじめがない社会で生きられるよう目指したい」と述べました。
地方自治体の独自の取り組みを阻害しないようにという文言が盛り込まれなかったことについて、 議員連盟の会長を務める馳浩議員は「野党側の皆さんの懸念は真摯に受け止めている」と述べ、今後の手続きの中で、施策を阻害しない点がどのように担保できるか注視する姿勢を示しました。
当事者はどう受け止めたのか
今回の合意内容を、LGBTQ当事者はどう受けとめたのでしょうか。
差別を禁止する法律を求めてきた一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣氏は、「差別は許されないもの」という文言が入ったことを少し前進だと評価しつつ、「差別的取り扱いの禁止と、地方自治体の施策を阻害しない点が明記されなかった点は残念だ」と指摘します。
トランスジェンダーであることを理由に内定を取り消された、同性愛がうつると言われてクラスから追い出されたなど、LGBTQ当事者に対する差別は後を絶たず、中には自死につながってしまうこともあります。
松岡氏は「差別禁止の規定がないと、差別的取り扱いの被害を受けた時に救済されません。今後も差別的取り扱いの禁止を規定した法律を求めたいですし、今回の法律によって自治体の施策が後退しないよう働きかけをしていきたい」と言います。
同じく法律による差別禁止を求めてきた「LGBT法連合会」事務局長の神谷悠一氏も、「(今回の法案は)あくまで一歩。差別禁止規定がないなど、当事者の生活実態に比して十分な法律であるとは言い難いです」として、法案の推移を見守りながら、引き続き必要な点を各党に求めていく考えを示しました。
議連で法案を了承したのは、自民党、立憲民主党、公明党、共産党、国民民主党、日本維新の会、社民党、そして無所属の議員ら。今後、各党に法案を持ち帰って調整し、再び総会で協議した上で、今国会での成立を目指します。
成立すれば、法律は性的指向・性自認について定めた日本初の理念法になります。