文部科学省は2月14日、小中学校の学習指導要領の改訂案を公表した。
改訂案では、小学校の指導要領案に、「思春期になると異性への関心が芽生える」と記載されるなど、LGBTなど性的少数者が教室にいることを想定した記述は一切なかった。
「この案では、LGBTなどの子どもの実情にそぐわない内容となる恐れがある」として、当事者らは指導要領に対するパブリックコメントを送るように呼びかけている。
その1人、室井舞花さん(29)は同性愛者であることを公表し「恋の相手は女の子」の著作もある。
しかし、中学時代はその性的指向を誰にも打ち明けられず、さらに教科書の記述に打ちのめされたという。室井さんはハフィントンポストの取材に、以下のように中学校時代の体験を語った。
私は小学校の頃から「女の子が好きかもしれない」と薄々感じていて、これは一体なんだろう?と疑問を抱いていました。
中学2年で初めてクラスメイトの女子に恋をし、これは恋愛だと認めざるを得ないなと感じました。
「誰でも異性に関心を持つ」と書かれていた教科書の記述に衝撃を受けたのはそんな頃でした。
その頃は友人も先輩も、周りに同じ気持ちの人が誰もいなくて「自分は間違っているんだ。おかしいんだ」とショックで、自分を否定する感情が芽生えてしまいました。
教科書がきっかけで私は「この感情はバレてはいけない。誰かに言ったら、社会から排除されてしまうことなんだ」と思い、19歳まで全く悩みと向き合うことができなくなってしまいました。
学習指導要領は、全国どこでも一定の水準の教育が受けられるようにする目的で、文部科学省が学校がカリキュラムを編成する際の基準を定めたもの。戦後に定められ、ほぼ10年おきに改訂されている。現在検討が進んでいるのは、2020年4月から使用される学習指導要領だ。
現在の学習指導要領(解説)では、小学校3、4年生に体育の教科で教える内容として「思春期になると異性への関心が芽生える。個人によって早い遅いがあるもののだれにでも起こる、大人の体に近づく現象である」と書かれている。
しかし、電通ダイバーシティ・ラボによる「LGBT調査2015」では、LGBTを含む性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)に該当する人は約7.6%だったことが報告されている。30人学級であれば、クラスに1〜2人は確実にいる確率だ。
文科省は学習指導要領の案の前段階で行われた審議のまとめに対するパブリックコメントについて、2016年9月〜10月に意見を募っていた。
全体で2974件寄せられたパブコメのうち、室井さんら呼びかけチームの調査ではLGBTなどの多様な性を教えるべきだとするコメントが約12%にあたる368件にのぼった。文科省が公表したパブコメの意見集約でも紹介された。
しかし、2月14日に公表された学習指導要領案には、こうした意見は反映されていなかった。
パブコメを経たにもかかわらず、小学校の改訂案で体育の内容に「思春期になると異性への関心が芽生える」と記載があり、中学校では保健体育で「身体の機能の成熟とともに異性への関心が高まったりする」との記載がある。これは従来通りの内容だ。
室井さんは、「10代でどんな情報に触れるか、学校や先生、教科書の内容はとても大きな影響力を持っている。社会の中でLGBTなどの人々がいるという認識は既に浸透しつつあるのに、あえて学校でそれを無視するのはなぜなのか。私が学生だった頃から10年以上経っても、未だに同じことが教科書に書かれているのはなぜなのか。自尊心が傷つけられ、自分を否定されたと感じる子が増えないように、大人が行動する責任があると思う」と話している。
文科省は3月15日までパブリックコメントで意見を受け付けている。
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