LGBTって何だろう?どれくらいいるの?石川大我さんに聞いてみた【今さら聞けない】

どんな悩みを抱え、どんなことに困っているのか、身近にいないと分からないことは多い。
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ニュースで耳にする機会が増えた「LGBT」だが、どんな悩みを抱え、どんなことに困っているのか、身近にいないと分からないことは多い。

ハフポスト日本版が9月29日に開いたトークイベント「LGBTって何だろう? 今、私たちにできること」で、同性愛を公言している東京都豊島区議の石川大我さんが、そんな質問に答えた。

(聞き手はフリー編集者の波多野公美さん、ハフポスト日本版副編集長・伊藤大地)

■「カラダ・ココロ・スキ」

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――メディアでも、LGBTがだいぶ取り上げられるようになってきましたけれども、そもそもLGBTって何でしょうか。

すごいストレートな質問ですね。Lはレズビアン。女性として女性を恋愛対象とする女性の同性愛者。Gはゲイ。男性同性愛者。男性として男性を恋愛対象とする、僕みたいな人ですね。バイセクシャルは、恋愛対象に性別が関係ない人、問題にならない人。そして、Tはトランスジェンダーですけれども、性別違和のある人。「性同一性障害」という言葉が日本ではとても有名ですが、これは病名。「トランスジェンダー」の方が広い概念と思います。

LGBTという言葉、本当に有名になってきましたね。でも、分かっていそうで分からないという人も多いと思うので、「性の3要素」と考えていただくと非常に分かりやすいと思います。

1つ目が「カラダの性」。つまり生物学的な性。

2が「ココロの性」、性自認ですね。

3が「スキになる性」、つまり「性的指向」です。この四字熟語を「体」「心」に該当する表現がないかと考えて「スキ」という表現を編み出したんです。「カラダ・ココロ・スキ」と覚えていただけるといいと思っています。

「おぎゃあ」といって赤ちゃんが生まれたときに、病院の先生が「男の子ですよ」「女の子ですよ」というのが、「カラダの性」。2つ目の「ココロの性」は、性自認といいまして、人にもよりますが幼稚園や小学校ぐらいで、自分は男でいいんだ、女でいいんだと自認すること。そして思春期ぐらいに、もやもやと、なんとなく好きになる人がいる。それが男性か女性か。恋愛の対象が3つ目の「スキになる性」なんです。

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分かりやすく矢印で説明します。「カラダの性」。皆さん、生まれたとき、男の子だったでしょうか。女の子だったでしょうか。矢印があることに、ぜひ注目していただきたいんですが、中間的な性のあり方を持って生まれるインターセックス(性分化疾患)という方もいます。

そして「ココロの性」。私の場合は、男性として生まれて、男性としての性自認を持って、「スキになる性」は、同じ男性です。異性愛の男性の場合ですと、男性・男性・女性ですね。

この矢印がポイントで、「スキになる性」の真ん中辺り、バイセクシュアルの人たちもいれば、たとえば8対2で男性、基本的にはゲイなんだけど、2割の部分で女性も恋愛対象とすることがあるという人もいる。

■LGBT=オネエ=女装???

――はっきりどちらかというわけではないんですね。ちょっと前までは、ゲイの方に対して、テレビで活躍しているオネエタレントみたいなイメージを持っていました。女装するのは「ココロの性」が女性だからと思っていましたが、そういうわけではないんですね。

かつては、いわゆる「ホモネタ」として、ばかにされたり、揶揄されたりする対象だったけど、オネエタレントたちが、美容やお花の専門家など、尊敬されるスペシャリストとして出てくるのは非常にいいことだとは思うんです。一方で、「ゲイ」=「オネエ」というイメージがすごくついてしまった。僕も2011年に豊島区議に初当選したんですが、そのとき、あるテレビ局から出演の依頼が来ました。「オネエ議員誕生」ということで取材をしたいと言われて、お断りしたんですけれども、そういうステレオタイプ、偏見はあるなと思ってるんですよね。

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はるな愛(左)とマツコ・デラックス

例えば、はるな愛さんと、マツコ・デラックスさんの違いが正確に言える人は、なかなかいないと思うんです。はるな愛さんは「カラダの性」が男性、性自認が女性、そして「スキになる性」が、おそらくテレビ番組とかを見ていると男性。マツコ・デラックスさんは、いろいろな発言から推測すると、男性として生まれて、自分を男だと思っていて、男性が恋愛対象になるゲイの方で、女性的な格好をする。夜、帰って寝るとき、本当に着るかわからないですけど(笑)女性的なネグリジェを着るのは、はるな愛さんですが、マツコ・デラックスさんは着ないだろう。分かりやすくいうと、歌舞伎の女形のような感じ。そんなイメージで捉えると分かりやすいと思います。

――LGBTという言葉に当てはまらない方、例えばIとかQとかAという言葉を聞くこともあるんですよね。私は「男性も女性も恋愛対象として好きになったことがない」という女性の友人がいて、どう受け止めればいいのか考えたりもするんです。

そうですね。まず、性のあり方は、LGBTだけではなくて、さっきの「ココロ・カラダ・スキ」の3つの要素の組み合わせで、実はいろんな人たちがいますし、その枠に当てはめずに、その人のあり方を丁寧に見ていく必要があると思うんですよね。

例えばLGBTIとかLGBTQとかLGBTQAとか、いろんなことがいわれたりします。I、先ほどお話しましたインターセックス(性分化疾患)ですね。「カラダの性」が、男性とも女性ともつかないようなあり方を持って生まれてくる人たちもいます。AはAセクシャル(エーセクシュアル、アセクシュアル)、恋愛感情が男性にも女性にもないという意味です。

「僕がゲイです」とお話しすると、「男だろうが女だろうが、人を愛することはとても素晴らしいことだ」と言われることがあります。僕は「ありがとうございます」と言いながら、Aセクシャルの人たちがいるということも分かっている。その本人の言葉を借りると「自分は、人を愛せない。すごく冷たい人間なんだと思ってしまう」と言っていました。そうじゃない。人間は多様なあり方があって、「あなたはあなたのままでいいんだよ」というメッセージを出していければいいと思いますね。

■LGBTは13人に1人

――実際に、どれぐらいの数がいるんでしょうか。

電通ダイバーシティ・ラボが、2012年に5.2%、そして2015年に7.6%という数字を出しました。7.6%に日本の人口1億2800万人をかけると973万人。日本の名字トップ10の佐藤さん、鈴木さん、高橋さん、田中さん、渡辺さん、伊藤さん、山本さんまで。13人に1人という数字なんです。

――すごい。本当に、もう一般的ということですよね。

そうです。なかなか、それを言葉に表せられない社会を何とか変えていきたいし、徐々に変わってきているという実感はあります。

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――「ココロとカラダとスキ」は、生まれたときからずっと変わらないものなんでしょうか。それとも、今まで女性が好きだったけれども、男性を好きになるなど、性自認も変わるものなんでしょうか。

よく「女の人を好きになれないんですか」「治らないんですか」という質問を受けたりしますが、逆に「男の人を好きになれないんですか」と答えることもあります。僕の場合、小学校5年生ぐらいのときに、1つ上の先輩の男の子が、ぼやっと好き、と気づいたことから始まっていて、その後も、限りなく男性のことを恋愛対象とする人生でした。逆に、バイセクシュアルで、「彼氏がいるときも、彼女がいるときもある」という人もいます。

そもそも「治る」という言葉自体、異性愛が正しくて同性愛が正しくないという偏見が入っています。また、男性が女性と付き合った後、ゲイの人に出会って恋愛が可能だと知って、男性と恋愛することもあるんですよね。レズビアンの方も、結婚して子供を産んで「何か違う」と思っていたけど、あるとき、レズビアンのコミュニティーに出会って「私はレズビアンだったんだ。ここがしっくりくる場所だったんだ」と気づく人もいます。変化するというより、自分の可能性に気づくことがあるということです。

当事者の人に話を聞くと、小さいとき「男の子なんだから、男らしくしなさい」とか、七五三のとき「女の子なんだから、着物着なさい」といった、社会から押し付けられている規範を窮屈に感じながら暮らして、自分の性自認に気づくことがあるんですね。

■なんて呼べばいいの?

――すごく気を使うのは、言葉の使い方です。ずっと前は「ホモ」という言葉を平気で使っていたと思うんですけど、「ゲイ」と何が違うのか、「レズ」と「レズビアン」はどう違うのか、どれを使っていいのか、どう考えたらいいでしょうか

もともと「ホモセクシャル」という言葉は、1869年にハンガリーのケルトベニーというお医者さんがつけた呼び名で、病名だったんです。それを短くして「ホモ」と言うと、やっぱり差別的に響くことがある。「ジャパニーズ」を「ジャップ」と短縮するのと似ています。当事者は「ホモ」という言葉でいじめられたり、つらい目に遭ったりしていますから、エチケットやポリティカル・コレクトとして言葉は使わない方がいい。「レズビアン」を短縮する「レズ」という言い方も、やはり侮蔑的に響くこともあります。

すごくフレンドリーなのに、めちゃめちゃ差別用語を使う人は、せっかくいい人でも、当事者は構えてしまう。ただ、あまり言葉を気にして、相手とのコミュニケーションを恐れてしまい「なんか言わない方がいいよね」とか「怖いから聞くのやめよう」と思うのも、もったいない。お互いの信頼関係があれば、恐れることなく話していけばいいと思いますね。

■積極的に「アライ」宣言を

――アライ(ally=LGBTの理解者、支援者)と呼ばれる立場で、どうサポートしていけばいいのでしょうか。

アライはもともとalliance、「同盟」という意味の英語ですけれども、このデータを見ていただきたいと思います。

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これは、EMA日本からお借りした「仕事の同僚や、親しい友人、親戚にLGBTの人がいますか」というデータです。赤いところが同性婚が認められている国や地域。黄色は、パートナー法が認められているところ。それに対して、下の方の日本が8%。身近なところにLGBTがいるというのは少ないんですよね。

当事者は「この人に本当に言っていいんだろうか」「言ったら何か差別的なことを言われちゃうんじゃないか」と躊躇するので、アライであるとぜひ表明してほしいと思っています。LGBTの多様性を表す6色のレインボーフラッグを着けていただくとか、イベントに行ったと話してみるのも、すごくいいと思います。

実は、アライの人はすごく多いんです。渋谷区の「同性パートナーシップ条例」に関連した毎日新聞の世論調査には同性婚に44%が「賛成」と答えている。「反対」の39%より多いんですよ。実は日本の社会は、アライがたくさんいる社会なんです。それを皆さん、どんどん表明していただいて、それに呼応する形でカミングアウトもしやすい社会になるといいと思っています。

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