トランプ米大統領の誕生までは、ツイッターはこれほどまでに影響力をもつツールになる日が来るとはほとんどの人は思っていなかったに違いない。
トランプのツイートは、国内外の一般の民衆はもちろん、世界的な大企業や他国の首脳クラスまでを揺り動かした。当分この勢いが留まる気配はない。
発信内容が全てではないにしてもSNS全般に関しても言えることではあるが、ツイッターには顔が見えない匿名性を利用した「ヘイトスピーチ」の温床という側面があった事実は否めない。
そんな中で、顔を出してヘイトスピーチに用いることもできると国家首脳が自らロールモデルとなり、広く世界に伝えた点、ドナルド・トランプ米国大統領の右に出る人はいるまい。
ツイッターは、「分断や憎しみ増幅のために使う道具である」という印象は世界中に着実に広まっている。そんな中、ツイッターのその正反対の使い方、つまり越境や連帯を呼びかける国家首脳も現れた。
最も注目を浴びたのは、カナダのトルドー首相のツイッターであろう。
"迫害、テロや戦争から逃げている人々、信仰を関係なく、カナダは、あなたたちを歓迎する。多様性こそが私たちの強みである。#ようこそカナダへ"
「トランプによる難民受け入れの一時停止」を受けて早速上記のようなつぶやき、続けてカナダ空港で低姿勢となり、優しい眼差しで移民の少女と目を合わせた写真をアップした。
さらに、ちょうど春節であることに触れて、中国語はもちろん、韓国語や英語など複数言語(多言語)で、「新年おめでとうございます」と国内外に向けて発信した。
ツイッターを活用し、多民族国家の首脳らしい多様性の尊重と国境を超えた連帯のメッセージを発した。
連帯を連想させる国家首脳によるツイートは日本から遠く離れたカナダ辺りの話だけではない。隣国台湾の蔡英文総督もその一人である。春節を迎えるにあたっての祝意を英語と日本語で発信した。
国家首脳が、「多様性の尊重や国境を越えた連帯」に向けてツイッターを使いはじめた。平和的な関係性の構築に向けた大きな可能性を示唆された。
その点、ドナルド・トランプ米大統領がここに至るにあたって反面教師として果たした役割が極めて大きい。
今後、どこの国であれ、国家首脳が他国の民衆にまでツイッターを通して声をかけ、平和を呼びかけることも出来る、などなどの可能性が膨らむ一方である。
そして、そのような国家首脳の越境に向けたツイートを、万民によってリツイートされることは、新しい時代における最大の安全保障なのではないだろうか。
最後になるが、日本の首脳が「国境を越えた連帯に向けて」どのような言語を用いて、どのようなメッセージをツイートするのかを楽しみにしたい。