LGBT弁護士・支援者ネットワーク(LLAN)が10月19日、都内で開いた交流会で、自民党の牧島かれん議員、宮川典子議員がスピーチし、LGBTについての思いや党内の取り組みなどを語った。交流会には、国内外のLGBT支援に取り組むアメリカ法曹協会会長のリンダ・クレイン氏ら海外の法律家や関係者らが多数参加した。
LLANには、LGBT支援に取り組む弁護士だけでなく、ゴールドマン・サックス証券の法務部をはじめ、外資系法律事務所や日本の大手法律事務所のビジネスロイヤーらが参加。海外とのネットワークを活かして、「同性婚人権救済申立」を受けた日弁連への支援として、海外で同性婚が認められている国に関する報告書を作成した。その他、自民党のLGBTに関する提言の英訳作成なども行っている。
以下に、両議員のコメントを紹介する。牧島氏は、LGBTに関する課題を考える超党派の議員連盟の事務局次長。宮川氏は、2016年2月に発足した自民党の性的指向・性自認に関する特命委員会の事務局長を務めている。LGBTの法律をめぐっては、理解増進法を制定する動きがあるが、差別禁止法や同性婚を求める声もある。今後の動きはどうなるのか。
■牧島かれん議員「LGBTの仲間を探そうとしました。でも…」
自民党の牧島かれん議員
牧島氏:LGBTの人権について、私の個人的なストーリーから紹介させてください。私は2001年9月11日、(大学院に通う)ワシントンに住んでいました。そこで、みなさんご存知の悲劇、アメリカ同時多発テロが起こりました。
同性カップルの人たちが、パートナーを探せない病院に行けない状況で、すごく悲しんでいる、苦しんでいる様子を見ました。このときに私はLGBTのイシューに大きな関心を持ったのです。「何をしなきゃいけなかったんだろうか」と思いながら日本に帰ってきて、後に政治の現場に入りました。
私は、LGBTの問題に取り組む仲間を探そうとしました。でも、日本の自民党という保守的な党で、仲間を見つけるのは実はそんなに簡単なことではありませんでした。「自分の選挙区には住んでいない」「私はLGBTの人たちに会ったことがない」というコメントをたくさん受けたのも事実です。そこで私は言いました。「いいえ、彼らは私たちと一緒に生きてます。ただ気づいていないだけです」と。
なんとか「勉強会をしよう」とか「一緒にピザパーティーをしよう」とか言いながら、少しずつ自民党として政権与党としての責任を果たしていきたいと思ってスタートしてきました。自民党でもやっと特命委員会が立ち上がり、法律の準備に入ってます。
保守政党であってもそうでなくても、このLGBTの課題やLGBTの子供たちの問題は、とても重要です。トランスジェンダーの子供たちが、病院に行かなければならないのは間違っています。先生ら教育関係者にも、性の多様性を理解してもらうことは重要です。
もっと取り組まなければならないことがあるのは分かっていますが、トランスジェンダーについては日本に性同一性障害に関する法律があるので、分かっている人はいると思うけれど、それ以外の性の多様性についての理解は、まだ日本では足りていないと思っています。まずは性の多様性の理解を深めなければならないというところに今私たちは立っています。今が始まりです。
ソチオリンピック(・パラリンピック)は、日本にとって(LGBTをめぐる人権を学ぶ)ターニングポイントだったと思います(※)。ソチオリンピックを見ながら、本当にもっとやらなきゃいけないことあると私は思っていましたが、まだ十分ではありません。LGBTの人たちの平等がなければ、東京オリンピック・パラリンピックは成功とはいえません。2020年の東京オリパラまでに、なんとか頑張っていきたいと思います。
※編注:ソチオリンピックでは、「同性愛宣伝禁止法」などロシアの人権問題に抗議して、欧米の首脳陣が開会式をボイコットした。
■宮川典子議員「お兄ちゃんになったお姉ちゃんに、愛の告白を受けました」
自民党の宮川典子議員
宮川氏:私も牧島先生と同じように、この問題には大変深く悩み、そして興味を持ち、何か行動を移さなければならないと思ってき1人です。
英語教師をしていたときに、トランスジェンダーのきょうだいに会いました。お姉ちゃんはお兄ちゃんになり、弟は妹になりました。きょうだいで苦しい思いをしている子供たちに会いました。そして、お兄ちゃんになったお姉ちゃんに私は愛の告白を受けました。そのときに「ああ、こういう感情をみんなが持てばいいのにな」と思ったんですね。
異性愛というのが一般的であると言われますが、しかし人に愛されるということは、その人が誰であっても素晴らしく尊いことだと私は思います。そういう感覚を多くの人が持ってくれたらいいな、という思いを私自身は持ちました。
そのときに生徒が「なんで先生、嫌がらないんですか?」と聞いてきたんです。「あなたが告白してきて、なんで嫌がらないんですか? もおかしいよね」と言いましたけど(笑)、「いや愛されるということは、幸せなことだと思った」と言いました。彼女は、そういうリアクションをした私をある意味で支えにして、性的適合手術を受けて、今は立派に男性として生活しています。
私はそんな彼、またその弟、今は女性になった彼女を、非常に誇りに思っています。ですので政治課題としてLGBTが挙がったときに、何かやる運命にあると思っていました。
党の中で言い続けていることは、先ほど自民党にはいろんな人がいるというお話がありましたが、みなさん怒らずに聞いていただきたいのは、そういう方たちのなかには「第3の性だ」とか「変態だ」とかいう頭の固い人たちがいます。その人たちを一人ひとり説得するのが私の仕事だと思っています。
その人たちがなぜ理解をしないのかと怒ることは簡単ですが、理解をするだけの知識もなければ教育も受けていない。ですから、その人たちを責めるのは半分。もう半分は、そういうこと(取り組み)をしてこなかった、私がいた教育の現場に問題があると思っています。
今自民党でやらなければならないのは、理解増進法だと思っています。まずは、自分たちと同じ性的指向を持っている人だけではない。いろんな性的指向があり性自認があるんだということ、障害でもなく病気でもないということ、その知識を作っていくことが大事だと思っています。
もう1つは、当事者のみなさんが抱えている生きづらさを解消していくことが重要だと思っています。法律を改正していくこともあるかもしれませんが、今の法律のなかで運用を変えて、そして運用する側が理解をすれば、おそらくみなさんが抱えている生きづらさは、かなりの部分が私は解決されると思っています。
今生きづらさを抱えている人が多いのは、それを理解する人が少ないからだと私は思っていますので、差別を禁止しようというのは、ずっと先の話。まず、自分たちの周りにはそういう方たちが普通にいるんだということ、それが自然なんだということを、しっかりみなさんに理解していただくのが重要だと思っています。
「これをしてはダメですよ」「あれはしてはいけません」と言うと、そこには間違いなく逆差別が起きます。日本ではいじめは大きな問題ですが、「いじめをしてはいけません」と言っても、いじめがなくならないのと一緒です。それよりも「人というのは自分とは違うのだ。その違いを受け入れる人になるべきだ」と教えるのが教育の力だと思いますし、私たちが目指すところだと思っています。
ですので、私たちが今考えている理解増進法をしっかり国会の中で、1つの法律の形として伝えることができるようになるのが私たちの使命だと思います。私がトランスジェンダーのきょうだいに会った、あのときに感じたことを当たり前のように、みなさんにお伝えできる日が来ればいいなと思っています。
当事者はもちろん、アライ(LGBTの理解者、支援者)のみなさんが当事者を理解し支え、いろんなところでサポートしていらっしゃることは大変尊いことだと思います。私たちも政治側の人間として、LGBT当事者のみなさんのアライになること。それが我々特命委員会の目標であります。みなさんの心に寄り添って法律を作っていきたいと思います。
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牧島氏はハフポスト日本版に対し、今後の立法について「まず法律として生み出さないと進まない。性同一性障害は法律があるから理解しなきゃいけないことと思われている。最初は100%の法律にはならないかもしれないけれど、常に時代に即して改正しなきゃいけないと思いながら作っていく」と語った。理解増進法については、教育によって「子供たちが変わると、大人にも影響を与える」などと話した。
宮川氏は、LGBTの差別禁止法については「まずは理解増進法を作って、もしそれで変わらなければ」とコメントした。「理解をしていない人に、あなたの発言は差別だから、というのは政治としては違うと思うので、まずはちゃんと理解をしてもらうことが大事だと思います」などと語った。
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