自公が軽減税率の議論本格化、社会保障財源補てんが課題【争点:アベノミクス】

自民・公明両党は30日、与党軽減税率制度調査委員会を開き、消費税率を10%に引き上げた時点で生活必需品などの消費税率を低く抑える軽減税率導入の是非について議論を再開した。業界団体からのヒアリングをこの日で終え、来週中に7回にわたった意見聴取を踏まえ課題を整理する。両党は12月中の税制改正大綱策定までに結論を得るとしており、残された時間で軽減税率導入による社会保障財源の減収分をどう補てんするか、といった課題を整理する必要がある。
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自民・公明両党は30日、与党軽減税率制度調査委員会を開き、消費税率を10%に引き上げた時点で生活必需品などの消費税率を低く抑える軽減税率導入の是非について議論を再開した。

業界団体からのヒアリングをこの日で終え、来週中に7回にわたった意見聴取を踏まえ課題を整理する。両党は12月中の税制改正大綱策定までに結論を得るとしており、残された時間で軽減税率導入による社会保障財源の減収分をどう補てんするか、といった課題を整理する必要がある。

軽減税率の導入をめぐっては自公間でも温度差がある。7月の参院選の選挙公約に盛り込んだ公明党は、10%段階での導入に意欲的で、2015年春の統一地方選挙を控え、軽減税率の実現は至上命題となっている。他方、自民党は中小企業の事務負担増などを理由に慎重論が支配的だ。

調査会終了後の会見でも、自民党の野田毅税制調査会長は「10%段階における軽減税率の導入に公明党は何としてもやらなければならないという強い思いがある」と連立を組む公明党への配慮を示す一方、具体化に向けては「どういう形でのまとめ方になるか(公明党と)相談していく」と述べるにとどめた。

一方、公明党税制調査会の斉藤鉄夫会長は「乗り越えるべき課題は明らかになってきた。決して乗り越えることができない課題ではない」と意欲を示し、「12月までに全てを決めるのは不可能だが、大きな方向性、骨格を議論して決めたい」と指摘。対象品目や税率などを検討していく考えを示した。

<地方財政圧迫、財源確保などに課題>

もっとも、導入に向けたハードルは高く、ヒアリングでも、事務の煩雑さや地方財政への影響などが挙がった。なかでも最大の課題は、税率を軽減することによる減収で社会保障財源に穴があくことだ。

政府試算によると、飲食料品を軽減対象とすると、減収額は2兆円台半ばから3兆円台前半と消費税率1%相当分が飛んでしまう計算になる。他方で、消費税が予定通り2015年10月までに現行の5%から10%までに引き上げられた場合、増収分の13.5兆円は社会保障の安定化(10.8兆円)と充実(2.7兆円程度)に充てることが法律で決まっており、減収による財源確保が最大の関門となりそうだ。

この日意見表明した全国知事会の石井隆一富山県知事は地元商工会議所では事務負担が大変なことを理由に反対意見が広がっているとの実情を示した後「混乱が起こりかねない」と慎重な検討を求めた。さらに「仮に導入するとなると、どこで線をひくかにもよるが、大きな減収、少なくとも数兆円が失われる。社会保障に穴をあけるわけにはいかない。どう財源を手当するか課題だ」と述べた。

一方、日本新聞協会の白石興二郎会長(読売新聞グループ本社社長)は、新聞の公共性を主張し、軽減税率の導入を求めた。

自民・公明の両党は消費税率の10%引き上げ時に軽減税率制度の導入を目指すことで合意。13年度与党税制改正大綱で、対象品目や軽減税率、財源などについて「2014年度与党税制改正決定時までに結論を得る」こととしている。

12月中旬の14年度税制改正大綱の策定まで残された時間は少ない。軽減税率導入時の財源など、残された課題をどう整理し、結論を出すか、自公両党がどこまで歩み寄れるかが焦点となりそうだ。

[東京 30日 ロイター]

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